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6年半ぶり&初の冬季開催!「札幌国際芸術祭2024」の見どころ3選【Likersレポ】

『札幌国際芸術祭(Sapporo International Art Festival、略称:SIAF『サイアフ』)』は、札幌市で3年おきに開催されるトリエンナーレ形式の国際芸術祭です。第1回は2014年、第2回は2017年に実施され、第3回は2020年に開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により中止。『札幌国際芸術祭2024(SIAF2024)』は6年半ぶりの開催となりました。

SIAF2024・エリアマップ

出典: SIAF2024

メイン会場は上記の6か所で、サテライト会場として「札幌市資料館(旧札幌控訴院)」があります。

今回は、札幌市在住の道民ライターが3か所のメイン会場と見どころを案内します。

1:アートを巡る旅の楽しみ方はここでチェック!「札幌文化芸術交流センター SCARTS」

小川秀明ディレクター

SIAF2024ディレクター 小川秀明さん 出典: 北海道Likers

これまで『札幌国際芸術祭(SIAF)』は夏に開催されていましたが、今回は初の冬季開催となります。

オーストラリア・リンツ市にあるアートとテクノロジーの世界的文化機関「アルスエレクトロニカ」で活躍する小川秀明さんがディレクターを務めるSIAF2024では、国内外約80組のアーティストの作品が展示されています。

今回は「LAST SNOW」というテーマが掲げられ、アートを通じて100年前から現在、そして100年先を巡る「アートの200年の旅」と、この先の風景を見つめる「未来の冬の実験区」といった2つの企画展示が行われています。

“アート”と言われてもピンと来なかったり、難しそうと敬遠したりする人は少なくないでしょう。アートを身近に感じるために、まずはビジターセンターとなっている「札幌文化芸術交流センター SCARTS(以下、SCARTS)」を訪れましょう。

“オモチャ”のようなテクノロジー!直感にゆだねることが楽しむコツ

INTO SIGHT

『INTO SIGHT at SIAF2024 ーリアルとバーチャルが解け合う世界へー Sony Design in collaboration with HIRAKAWA Norimichi』 出典: 北海道Likers

この会場では、ゲームやエンターテインメントでおなじみの「ソニーグループ株式会社」が手がけた『INTO SIGHT』が体験できます。『INTO SIGHT』は、「ロンドンデザインフェスティバル2022」に出展し話題を呼んだ体験型展示で、国内では今回が初公開となります。

会場であるSCARTS1階の展示室「SCARTSコート」に入ると、“リアルとバーチャルの融合”をテーマに、光の反射と屈折によって作られたカラフルでダイナミックな模様が大きなディスプレイに映し出され、作品の中に吸い込まれるような音楽が流れています。足を踏み入れると赤外線センサーが人の動きを感知し、動きに呼応するように光・色・音が変化します。

INTO SIGHT2

『INTO SIGHT at SIAF2024 ーリアルとバーチャルが解け合う世界へー Sony Design in collaboration with HIRAKAWA Norimichi』  出典: 北海道Likers

まさに“デジタル版万華鏡”といった趣。万華鏡は、1816年にスコットランドの科学者・ディヴィッド・ブリュースターによって偏光実験装置として発明され、その後、玩具として人気を博しました。まずは難しいことを考えず、「おもしろい」「きれい」「不思議」など、直感にゆだねることがアートを楽しむコツといえるでしょう。

スタッフが迷えるビジターをアシスト

1階の「SCARTSモールA・B」に設置された総合インフォメーションでは、スタッフによる『おすすめイベント』が掲示されており、迷えるビジターをアシストしてくれます。展示・イベントに関連して行われるトークやワークショップもあるので、ぜひ参加してみてくださいね。

そのほかSCARTSには、SIAF2024に関連したデザインやアーティストの作品集が見られる図書室や、雪の都市と自然についての調査研究を紹介する研究室の機能を持たせた展示などもあります。何度訪れても発見が得られるビジターセンターです。

アートを巡る旅のウォーミングアップができたところで、次のエリア「未来劇場」に向かいましょう。

<施設情報>
■札幌文化芸術交流センター SCARTS
■北海道札幌市中央区北1条西1丁目
■会期:2024年1月20日(土)~2月25日(日)
■開催時間:10〜19時
■休催日:2024年2月14日(水)
■入場料:無料

2:かつてのミュージカル会場がアートに染まる「未来劇場」

未来劇場

チェ・ウラムさんの作品『Red』が展示されている客席スペース 出典: 北海道Likers

SIAF2024では、旧「北海道四季劇場」を「未来劇場」と呼んでいます。長らく『劇団四季』の作品が上演されていたので、訪れたことがある人も多いでしょう。「未来劇場」ではステージや客席だけでなく、奈落*1や楽屋なども展示スペースとして使用しているので、バックステージを覗き見るワクワク感も楽しめます。

会場内では全6章*2のテーマを追ってストーリーが展開されているのですが、今回はそのなかから3章をピックアップしてご紹介します。

*1 奈落・・・劇場の舞台や花道の下の地下室。まわり舞台やせり出しの装置のある所。
*2 全6章・・・「タイムトラベル」「未来の風景」「時空の錬金術」「100年後の物語」「今ある危機」「未来ラボ」

「未来の風景」

素敵に枯れていきたい、君と。

チェ・ウラムさんの作品『素敵に枯れていきたい、君と。』 出典: 北海道Likers

「未来の風景」ではテクノロジーが織り込まれた自然を目にすることができます。

韓国出身のアーティスト、チェ・ウラムさんはこの章に3つの作品を展示しています。『素敵に枯れていきたい、君と。』と名付けられた作品は、天井につるされた花が約30分をかけて枯れてゆっくりと落ちていく仕掛けが施されており、命の循環を表現しています。最初はこの作品を展示する予定ではなかったそうですが、会場を見てイメージが膨らんだそう。

「時空の錬金術」

In motion

後藤映則さんの作品『In motion』 出典: 北海道Likers

「時空の錬金術」ではさまざまな想像力を感じることができます。

上記の画像は、岐阜県出身のアーティスト、後藤映則さんの作品『In motion』です。“一歩を踏み出すことから新たな道を切り開く”というイメージが込められ、奈落の中をメタリックな人影が歩いています。よく見ると人影はメッシュ状の立方体で、光の当て方によって人が歩いているように見えます。計算されつくした繊細な作品に驚かされました。

「100年後の物語」

シン・リウさん2

シン・リウさんとご本人の作品『Gleaming Bodies』 出典: 北海道Likers

「100年後の物語」では、6人のアーティストたちが創造した100年後の未来をテーマとする作品を見ることができます。

上記の画像は、中国出身のアーティスト兼エンジニア、シン・リウさんの作品『Gleaming Bodies(かすかにきらめく身体)』です。女性の子宮を宇宙の創造源としてとらえ、生命の持続性や、人体の冷凍保存や卵子凍結など、遺伝子を未来に残すためのテクノロジーがもたらす、人智を超えた可能性を考察しています。彼女はマサチューセッツ工科大学のメディアラボでメディアサイエンスの修士号を取得しており、現在も同ラボの宇宙研究プロジェクトのアートキュレーターを務めています。

<施設情報>
■未来劇場(東1丁目劇場施設)
■北海道札幌市中央区大通東1丁目
■会期:2024年1月20日(土)〜2月25日(日)
■開場時間:10〜19時 ※2024年2月4日(日)~11日(日)は10〜21時 ※入場は閉場の30分前まで

3:これまでの100年間のアートに焦点を当てる「北海道立近代美術館」

少し足を延ばして「北海道立近代美術館」を訪問。「ひろがる」「ゆだねる」「シンプルに」「つながる」など、テーマに沿って1924年から現在までの100年間のアートに焦点を当てています。

アートの可能性は無限大

宮田彩加さん

宮田彩加さんとご本人の作品『MRI SM20110908』 出典: 北海道Likers

京都出身の現代刺繍作家・宮田彩加さんは、大学で染織を専攻したことがきっかけで、染めた布に奥行きやボリュームを出すための手刺繍・ミシン刺繍によるオリジナルテクニックを使った制作を始めたそうです。

宮田彩加さんの作品 出典: 北海道Likers

家庭用コンピューターミシンの刺繍データをプログラミングし、意図的にバグを起こすことで独創的なデザインを作り出しています。また、刺繍は布地に糸を縫い付けるのが一般的ですが、宮田さんの作品は糸だけで構成。自身のMRI画像をモチーフにするなど、大胆な発想も取り入れています。発想によってアートの可能性は無限に広がります。

ホッと一息つける動物たちの世界

あべ弘士さんのインスタレーション

あべ弘士さんの作品 出典: 北海道Likers

最後に紹介するのは、旭山動物園の飼育員から絵本作家に転向した、あべ弘士さんの作品です。大人気絵本シリーズ『あらしのよるに』で、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。シンプルかつ、ぬくもりを感じる絵は、見る者をホッとさせてくれます。あべさんの絵は、旭川空港国内線出発ロビーのキッズコーナーにも描かれています。100年間の考察のラストを彩る最高の展示だと思いました。

<施設情報>
■北海道立近代美術館
■北海道札幌市中央区北1条西17丁目
■会期:2024年1月20日(土)〜2月25日(日)
■開場時間:9時30分〜17時 ※入場は閉場の30分前まで
■休館日:月曜(月曜日が祝日・振替休日の場合は翌平日)

 

『札幌国際芸術祭2024(SIAF2024)』は、メイン6会場のほか、地域の施設・団体との20以上の公募・連携プロジェクトを展開しており、札幌市内のさまざまな場所が会場になっています。人の手で作り出されたものだけでなく、窓ガラスの雪の結晶やキラキラと光る雪の粒子なども、“自然が作り出したアート”と呼べるでしょう。

2024年2月4日からは、札幌の冬の一大イベントである『さっぽろ雪まつり』の大通り2丁目会場がオープン。会場内では、これからの移動や暮らしなどに焦点を当てた社会実験が行われるようです。未来を想像する刺激的な体験ができること、間違いなしですよ。

会期は2024年1月20日(土)~2月25日(日)まで。日常に隠れているアートを楽しんでください。

<イベント情報>
■札幌国際芸術祭2024
■会期:2024年1月20日(土)~2月25日(日)
※札幌芸術の森美術館は2023年12月16日(土)〜2024年3月3日(日)
※さっぽろ雪まつり大通2丁目会場は2024年2月4日(日)〜11日(日)
■会場: 未来劇場(東1丁目劇場施設)、北海道立近代美術館、札幌芸術の森美術館、札幌文化芸術交流センターSCARTS、モエレ沼公園、さっぽろ雪まつり大通2丁目会場、札幌市資料館(旧札幌控訴院)他
■チケット料:
【パスポート】一般2,700円、市民・道民2,000円、学生(高校生以上)1,200円、中学生以下は無料
【個別鑑賞券】一般1,500円、市民・道民1,500円、学生(高校生)800円、中学生以下は無料
※市民・道民券は札幌市民または北海道民の方のみ利用できます。
■ホームページ:https://2024.siaf.jp/