ゾウも温泉に!? 70年以上愛される北海道の「老舗温泉旅館」

みなさんは“ケアツーリズム”という言葉を知っていますか? 旅先での食や交流、地域資源を楽しむことによって、心身が癒されたり、新しい発見や自己成長ができる旅のことをいい、最近注目されています。

今回は、北海道後志地方の南端・島牧村(しままきむら)の山間にある一軒宿「宮内(ぐうない)温泉旅館」をご紹介。

地元の素材をふんだんに使った料理と、病にかかったゾウも元気になったといわれる名湯で、心身ともに癒された旅の記録をお届けします。

江戸時代にクマが傷を癒していた秘湯「宮内温泉」

島牧村は、人口約1,300人の小さな村です。

宮内温泉は江戸後期に発見されたそう。ケガを負った熊が滝つぼに入って傷を癒しているのが発見したのが始まりといわれており、古くは「熊の湯」と呼ばれていたとか。

昭和初期に温泉の権利を中田正雄氏が取得。1945年(昭和20年)ごろに、息子の正春氏に経営を任せ、「宮内温泉旅館」が開業しました。

宮作りの正面玄関屋根は1958年(昭和33年)当時のまま。

中田寛子さん

取材を受けてくださった中田寛子さん 出典: 北海道Likers

現在は二代目の奥様である恵子さんと、三代目の祐哉さん・寛子さんご夫妻で宿を切り盛りしています。四代目候補も誕生しましたが、そうなるかどうかは「本人の希望によるところ」だそうです。

ゾウの花子も湯治に訪れた名湯に浸かる

1971年(昭和46年)11月には、ゾウの花子が湯治にやってきました。

当時、花子は骨折し立てなくなっていたそうです。村人は花子を歓迎し、「宮内温泉旅館」に浴槽付きの『花子のおやど』という小屋を建てて長期に渡って面倒を見ました。その甲斐あってか、病状は次第に回復したのだとか。

1976年(昭和51年)、花子は「宮内温泉旅館」を離れ、本州を旅して回ったのちに、1980年(昭和55年)にパラグアイに移住して一生を終えたそうです。

内湯

内風呂 出典: 北海道Likers

泉質は、ナトリウム・炭酸水素塩・硫酸塩泉で、源泉かけ流し。茶色くて湯の花ができやすいお湯です。

内風呂の右側は高温、左側は低温となっています。まずは左側の浴槽で身体をお湯に慣らして、次に高温で十分に温まってから露天風呂に向かうのがおすすめです。

露天風呂は1997年(平成9年)に増設されました。取材をした日は小雪がちらつき、凍てつく寒さ。一度湯に浸かってしまうと離れることができません。

降り注ぐ雪の合間から月や星が現れ、遠くからシカの鳴き声も聞こえてきました。

入浴後は、廊下の寒さもほとんど感じないほどポカポカ! さすがゾウが湯治に訪れただけあって、筆者の身体もかなりリラックスした感覚になりました。

「宮内温泉旅館」は、大平山の伏流水の地下水をくみ上げています。廊下には自由に飲める給水設備を用意。

ひんやり冷たく風呂上がりの喉を潤してくれ、シャキッと身体の中からリフレッシュできました。

海の幸がいっぱい!もりもり元気が出てくるような夕食

夕食はお部屋でいただきます。調理は恵子さんが担当。地元の素材が使われており、品数は5品、7品、8品から選ぶことができます。

「このあたりは、山菜がたくさん採れます。今晩の一品も近くで採れたものです」と恵子さん。

「札幌から嫁いでくれた妻も、今では山菜採りが上手になった」と二代目のお墨付きです。

まずはご飯からいただきます。島牧産の『ゆめぴりか』を使用しています。うまい!

ノルウェーなどからトラウトサーモンが輸入されサーモンの刺身が一般的になりましたが、サケやマスなどの魚を冷凍させてから、解凍させないまま刺身にして食べる『ルイベ』は北海道の郷土料理です。

サーモンとは異なり、とてもあっさり。タコやエビの刺身もおいしく、ご飯が進みます。

『たこしゃぶ』は、刺身でも食べることができる新鮮なタコを軽くお湯にくぐらせて、タレでいただきます。柔らかく、絶妙な歯ごたえと甘みが口いっぱいに広がります。

『サバの味噌煮』は、少し甘く味付けされています。サバは夏の間に脂肪を蓄えるため、秋から冬に旬を迎えます。身が厚く脂のりも最高。

ご飯が進みすぎて、おひつが空になったところに、最後のホッケが登場しました。これまで見たことがない大きさに度肝を抜かれます。

今度はお茶碗をグラスに変えて、お酒を楽しみながらホッケをいただきます。これを幸せと言わずして何と言えばいいのでしょう。

どの料理も美味しすぎてもりもり食べることができ、活力が湧いてくるようでした。

朝風呂から1日が始まる

翌朝は、朝風呂から1日が始まります。あたりは一面の銀世界。

温泉と美味しい食べ物、家族経営ならではのぬくもりで、1泊だけでしたが心身ともにとても安らぎました。

 

「宮内温泉旅館」では、宿泊のほかに、日帰り入浴や完全予約制でランチも行っています。

みなさんもぜひ気軽に「宮内温泉旅館」を訪れて、この地域ならではの自然の恵みに触れ、身体の内側から活力が湧いてくるような“ケアツーリズム”を楽しんでください。

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<施設情報>
■宮内温泉旅館
■住所:北海道島牧郡島牧村泊431
■電話番号:0136-75-6320
■ホームページ:https://guunaionsen.jimdofree.com/

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