近藤染工場

「伝統を大切に挑戦していく」創業125年。今は少ない手仕事にこだわる老舗染工場の心

2023.09.18

今、わたしたちの生活のなかで“染物”はどんなところで目にするでしょうか。浴衣や手ぬぐい、お店の暖簾、お祭りや神社ののぼりなど、意外とよく目にしているものです。

旭川には、明治時代創業の歴史ある染工場が2軒存在します。今回伺ったのは、旭川に鉄道が開通した1898(明治31)年に創業した市内で一番古い染工場。旭川市1条通りのシンボルでもある「近藤染工場」の長澤奈々(ながさわなな)さんにお話を聞きました。

創業125年の「近藤染工場」

その昔の旭川は、開発のために屯田兵が入植し、上川地方の開拓が進められたのが1891(明治24)年のこと。「近藤染工場」は、旭川の染物工場として1898(明治31)年に開業した125年の歴史を重ねる老舗です。令和となった今、生地や染料など質の高い素材を吟味する鋭い目を持つ職人が7名。そのうちのお一人は女性です。

主力の商品は、漁船を新しく購入したときに揚げる“大漁旗”。船主にご縁のある人が送るものです。

できあがった大漁旗は、道内各地・東北方面などへ送られます。長い歴史のなかで昔からの繋がりも多く、漁業組合から複数枚まとめて依頼されることもあるのだとか。

職人がひと刷毛ひと刷毛手染めしていく。「染の心」とは

染物は手作業で作られます。生地に下絵をする段階以降は全て手描き。パソコンでは出せない魅力あるダイナミックな文字と絵が、手描きによって生まれるのだそう。

プリント染が多くなってきている昨今、「近藤染工場」はひと刷毛(はけ)ひと刷毛手染めしていく“刷毛引き本染め”を貫いています。

「職人の仕事は、細やかで緻密な作業や工程が多く、立ち仕事・力仕事でもあります。基本的な制作方法や技術を習得するには、約5~10年の歳月が必要です。どれだけ年数が経っても、職人は日々勉強し、技術を身につけています。毎月職員全員で勉強会を行い、そこでは毎月全員で目標を考えています。今月は『自分らしさ 大切に』に決まりました」

どの職人さんでも、どの職種の人でも、自分のこととしてとらえられる言葉でありながら、奥の深い目標。「近藤染工場」の歴史と技術、信頼が125年もの長い間続いている理由を肌で感じました。

家訓は「家業永遠」。1898(明治31)年、徳島県から旭川へ入植した初代・近藤仙蔵が、現在の場所で創業してから変わらぬ息吹を全員で大切に引き継いでいます。

時代には染まらない!新しい染物のかたち

「近藤染工場」の主力商品は大漁旗ですが、そのほかにも祭り半てんやのぼり、手ぬぐいや風呂敷の制作もしています。

小物や雑貨は、大漁旗を使用したバッグやエプロン、エコバッグ、旭川の名所・特産品を地元のイラストレーターが描いた手ぬぐいなど、使いやすく誰もが思わず手に取りたくなるようなものばかり。

エコバッグや風呂敷トートバッグはもちろん手縫い。しっかり染め上げた丈夫でしなやかな布地を、丁寧な手作業で縫い合わせているため、とても丈夫。ファンが多い商品です。

「近藤染工場」では、さまざまなイベントに参加し、雑貨の販売を通して地元旭川市民や全国の人に、染物のさまざまな世界観を伝えています。

ほかにも、アウトドアやキャンプの趣味を持つ職人のアイデアから生まれた“ツールバッグ”や“焚き火陣幕”の制作も手掛け、大変好評なのだとか。

これまでの歴史と技術を維持・向上させながら、新しい分野を開拓し、さらに多くの人が染物の魅力と縫製の素晴らしさ、使いやすさを感じています。

布製品は使うごとに愛着が沸き、また、布地が馴染んでいくごとに使いやすさが増していきます。手ぬぐいや手ぬぐいでできているエコバッグ、コースターなど、わたしたちの身近に取り入れられる小物に“染物”があることは、生活を豊かにしてくれることでしょう。

丁寧な手仕事が施された商品を通して、商品ができる過程へ想いを馳せ、職人の心を感じることができます。

 

商品は「近藤染工場」内の直売店とオンラインショップのほか、旭川市内の「高砂酒造」、JR旭川駅内の「旭川観光物産情報センター」でも購入できます。

旭川の染物の歴史を今に繋ぐ素晴らしい技術と作品を、気軽に手に取りやすい小物で取り入れてみませんか。

<店舗情報>
■近藤染工場
■住所:北海道旭川市1条通3丁目右1号
■電話番号:0166-22-2255
⇒営業時間など詳細はこちら

⇒こんな記事も読まれています
【PR】寄付額ランキング全国12位まで急上昇!ふるさと納税のプロも脱帽する「こだわりのいくら」

【連載】意外とハマるかも…?北海道マンホール特集
一生に一度は見てみたい!神秘的な北海道の絶景

LINE友だち追加