北海道が生産量日本一の「不老長寿の薬」知ってる?ヒントは…海辺の夏の風物詩
突然ですが、「不老長寿の薬」と呼ばれている、北海道での生産量が日本一の食べ物を知っていますか?
ヒントは北海道の海辺で見かける夏の風物詩。夏が旬の食材ですが、季節を問わず料理に使われています。料亭で食べる高級和食から食卓での家庭料理まで、日本の料理には欠かせない食材です。あるとないとでは味に大きな違いが出ます。さて、どの食材かわかりましたか?
不老長寿の薬といえば…
北海道の夏に、海でたくさん採れる「不老長寿の薬」とは……“昆布”です。
和食においては、出汁を取るために大切な食材ですよね。昆布には、グルタミン酸という“うま味成分”が含まれており、料理のうま味を引き出してくれるといわれています。
「養老昆布=よろこぶ」という語呂合わせもあることから、昔から縁起が良い食べ物とされてきました。お正月に昆布巻きを食べるのも、縁起を担ぐ習慣のひとつ。古くは、紀元前200年代に活躍した秦の始皇帝も、昆布を妙薬として求めたという逸話があります。なぜ、昆布は「不老長寿の薬」といわれているのでしょうか。
理由はおそらく、“昆布は栄養がとても豊富だ”と考えられているため。
たとえば、昆布のぬめりは食物繊維の一種である“アルギン酸”や“フコイダン”によるもの。腸内環境を整えたり、血中の脂肪を抑えたり、血圧の改善に働きかけたりするとされる成分です。
ほかにも血圧を下げるといわれるラミニンや、摂りすぎた塩分の排出に役立つとされるカリウム、新陳代謝に関わる甲状腺ホルモンの材料となるといわれるヨウ素……などなど体にとって大切な栄養が含まれています。“薬”と呼ばれるのもうなずけますね。
日本の昆布の約95%が北海道産
日本の昆布の約95%は北海道で採れます。北海道での昆布漁は夏から秋にかけて、7~9月が最盛期です。
夏に行われるのは、船で沖に昆布を採りに行く“採り昆布”。また収穫時期ではなくても、時化(しけ)などで浜辺に打ち上げられる昆布を拾って集める“拾い昆布”があります。
夏の風物詩でもある「日高昆布」
北海道産の昆布のなかでも、夏の風物詩として知られているのが、日高地方で採れる『日高昆布』です。日高地方のほか、三石町(現在は静内町と合併し、新ひだか町)で採れることから、『三石昆布』という呼び名も。十勝や渡島など北海道の南側の海岸でも採れます。
7月に入ると、日高地方の浜辺に見えるのは一面の昆布! 砂利の上に昆布がまっすぐに伸ばされ、ずらりと天日干しにされている光景は圧巻で、北海道の夏の風物詩ともいわれています。
「日高昆布」はどうして乾燥させるの?
昆布は乾燥させることで栄養が凝縮され、日持ちもよくなると考えられています。つまり昆布漁は採るだけでなく、乾燥させることも大切なのです。
昆布を採ったら、「干場(乾場ともいう)」と呼ばれる海辺の砂利の上に敷きます。
1本1本重ならないようにまっすぐ伸ばし、砂利が付かないようにずらりと並べるのです。乾燥させる時間も天気や気温、湿度、風の変化に合わせて調整します。
乾燥させてもすぐに出荷できるわけではありません。ビニールシートで包んで小屋に保管し、昆布の香りを引き出します。一度露にあてて少しだけやわらかくし、切りそろえたら再び小屋で寝かせて、また天日干し。さらに質を見極めて選別する、“選葉(せんば)”という作業が行われて、ようやく出荷されます。
日高昆布の漁は7~10月までと期間が長いですが、天日干しにできるのはわずか20日ほど。水揚げされたその日のうちに天日干しをする必要があり、自然の条件がそろう日は限られています。日高昆布は採る日を慎重に見極め、水揚げされてからもとても丁寧に加工されて、我々の家庭に届いているのです。本当に貴重な食材だとわかりますね。
「日高昆布」のおいしい食べ方
昆布にはいろんな種類がありますが、スーパーなどにも並び、家庭でよく使われているものが『日高昆布』です。意識はしていなくても、誰もが一度は食べたり、日高昆布でとった出汁を飲んだりしているはず。
色は黒がかった緑。煮るとやわらかくなり、出汁をとったあとに昆布を食べてもおいしいです。煮物や昆布巻き、佃煮、おでんなど昆布をやわらかくして食べる料理に向いています。
北海道で採れる昆布はまだまだある!
日本の9割以上も昆布が採れる北海道では、『日高昆布』以外にもさまざまな種類の昆布があります。
たとえば『真昆布』。昆布の最高級品ともいわれていて、肉厚で幅も太いです。出汁は上品な甘みがあり、濃くまろやかな味わい。しかも澄んでいる……まさに高級出汁です。北海道では函館市や室蘭市で採れます。漁獲時期は6~10月ごろです。
続いて『利尻昆布』。『真昆布』に次ぐ高級品とされていて、黒褐色。ほんのりと薄い塩味が上品で、高級出汁に使われています。京都では千枚漬けや湯豆腐にも活用。北海道では稚内市や利尻島、礼文島で採れます。漁獲時期は6~11月ごろです。
そして『長昆布』。世界の昆布属のなかで最も長くなることが名前の由来です。甘みは薄いですが、肉厚だと味もよし。出汁を取るのには向いていませんが、煮物にして食べるとおいしいです。釧路・根室地方の太平洋沿岸のほか、貝殻島や歯舞諸島、国後島、択捉島の周辺に分布しています。
ほかにも、とろろ昆布にもなる日本海沿岸の『細布(ほそめ)昆布』や、葉に厚みがある釧路・根室地方沿岸の『厚葉(あつば)昆布』、味の評価も高い羅臼沿岸の『羅臼昆布』、松前漬けにも使われる函館沿岸の『がごめ昆布』などがあります。
日本の食になくてはならない昆布は、北海道でたくさん採れることがおわかりいただけたでしょう。
ぜひ、夏に北海道の海へやってきたときには、沿岸で昆布がずらっと並んでいないか、夏の風物詩を探してみてくださいね。
【参考】農林水産省、九州大学、日本味と匂学会、一般社団法人 日本昆布協会、北海道漁業協同組合連合会、日本水産工学会、新ひだか町、北海道、環境省
うま味 / 農林水産省
昆布巻き 北海道 / 農林水産省 うちの郷土料理
秦の始皇帝について / 九州大学大学院人文科学研究院 町田 三郎
7.昆布の健康機能成分 : アルギン酸とフコイダン(<総説特集>伝統食品の科学-ルーツ、おいしさ、機能-7) / 日本味と匂学会誌2007年14巻2号 p.145-152 青木央
コンブ博士の – 昆布をしっかり学んでおいしく食べよう! / 一般社団法人 日本昆布協会
こんぶの栄養 / 北海道漁業協同組合連合会 北海道昆布漁業振興協会
コンブの生産安定に向けた北海道の取り組み / 日本水産工学会 水産工学 51巻1号 幡宮輝雄
新ひだか町について / 北海道新ひだか町
日高のさかなたち 日高昆布 / 北海道 日高振興局産業振興部水産課
昆布の天日干し作業 / 農林水産省 北海道農政事務所
えりも”夏の風物詩” / 環境省 北海道地方環境事務所 アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
真昆布 / 北海道 水産林務部水産局水産経営課
利尻昆布 / 北海道 水産林務部水産局水産経営課
長昆布 / 北海道 水産林務部水産局水産経営課
【画像】K321、jun、Gold、KUSHIYA、masa、たけちゃん、GS Planning、花火 / PIXTA(ピクスタ)
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