アイキャッチ 氏家さんとダチョウ

絶景!羊蹄山と牧場のコントラストが美しい「ダチョウ牧場」祖父から孫に引き継がれた情熱

「第二有島だちょう牧場」は、ダチョウが元気に走り回る姿がシュールな牧場です。羊蹄山を一望できる雄大な光景は絶景の一言。ニセコ町の『ふるさと眺望点』の一つにも選ばれています。

なぜダチョウを飼育しているのか。そこには祖父と孫が築き上げたストーリーがありました。

作家・有島武郎の夢の跡「第二有島だちょう牧場」

「第二有島だちょう牧場」がある土地には、約100年前、ニセコゆかりの作家・有島武郎が築いた「有島第二農場」がありました。彼は、自身の理想と農場の小作人たちが置かれている現状との乖離を解消するために、農場を整備し相互に助け合う組合を結成して、小作人たちに無償で分け与えたといわれています。

人々は喜び、事業が順調に進むと期待していましたが、農場の大部分は勾配の急な岩だらけの土地。農業を続けるには厳しく、農地を手放す人が後を絶たず、次第に荒地に変わり果ててしまいました。

一人の男が荒地に新たな息吹を与える

今から約30年前に、見向きもされなかった土地を購入する男性が現れました。その男性こそ、現在「第二有島だちょう牧場」の代表である氏家健太さんの祖父であり、のちの創業者です。

「祖父は若いころに一人で来道し、開拓団に加入後、酪農家として原野を切り開いた人です。最初は日高地方で農業をしていたそうですが、諸事情により一度離農しています。この土地は友人の付き添いとして視察に来たそうですが、目の前に広がる雄大な光景に惹かれて購入したそうです」と教えてくれました。

当時、ダチョウは“これからの食肉”として世界的に注目されていました。新たなビジネスチャンスを求めて、あちこちでダチョウ牧場が開業しましたが、飼育が難しいうえに販路が限定されており、廃業する人も多かったそうです。

「祖父は他人が価値がないと思ったものに対して価値を見出すような性格だったようです。当時の日本ではあまり流通していなかったダチョウの可能性に賭けて、ほかの牧場からダチョウを引き取っていました」

困難を極めた牧場経営を孫が手助け

ダチョウはアフリカに生息する大型の飛べない鳥で、自然下では10羽くらいの群れを作って暮らしています。旺盛な食欲で雑草を食いつくし、みるみるうちに牧場が整備されていきました。

高い生命力や粗食に耐える消化能力を持っていますが、飼育方法が確立していないことや、1羽が走り出すと大勢がついていってしまい、ときには柵にぶつかって死亡することもあったそうです。

今でこそダチョウの肉は“低カロリー・高たんぱく”として評価されていますが、当時は珍しさばかりがクローズアップされ、事業を軌道にのせることが困難な日々が続きました。採算が取れない牧場に見切りをつけようとしたそのとき、健太さんは祖父の仕事を手伝う決意を固めました。

「福祉関係の仕事をしていましたが、小さなころから牧場を遊び場として育ったので、多くの人に愛されているダチョウの飼育を続けていきたいと考えました」と健太さんは言います。

「牧場の経営が順調でないことは分かっていたので、たくさんの人たちに協力してもらいながら、ダチョウの魅力を発信し続けたり、環境保護としてダチョウ製品の販売にも力を入れました」

ニセコの景勝地で命の大切さを伝える

健太さんは、自らを「ダチョウに食べさせてもらっている人」と言います。ときには雛から大切に育てたダチョウを、自らの手で殺めなければならないこともあるなど、避けては通れない別れもあります。

「昔は人間に従わせる飼育をしていましたが、今は動物福祉に基づいて接しています。生き物を生業としている以上、最後まで愛情を注ぎたいです」と微笑みます。

現在は食肉の販売を縮小し、ダチョウのタマゴを使った菓子の販売や、農業体験を広く受け入れています。

「愛情を持って接する姿を見せることで、命をいただくことについて考えてもらう機会を増やしていきたい」と語ってくれました。

ダチョウの迫力や旺盛な食欲を知るためには、ダチョウを身近に感じることが一番です。牧場内で餌を販売しているので与えてみましょう。近づき過ぎると勢いよくクチバシで攻撃されたり、物を持っていかれます。静かに餌場に撒いてください。

大地が育んだおいしい食べ物

2018年、牧場内にダチョウのタマゴを使ったお菓子を販売するお店をオープンしました。

岩内町に本社を構える「倉島乳業株式会社」の牛乳を使ったソフトクリームにダチョウのタマゴを使ったクッキーをのせた『だちょうソフト』や、ダチョウの推肥で育てた無農薬の赤じそを使った『自家製しそジュース』を味わいながら絶景を眺めることができます。

ダチョウのタマゴは、とても大きくてビックリ。

そのタマゴを使った『どら焼さんど』も、負けず劣らずビッグです。ダチョウのタマゴは保水率が高く、ニワトリに比べてしっとりとした生地になります。牧場内のショップか、道の駅「ニセコビュープラザ」で購入してください。

 

「第二有島だちょう牧場」では、雪が解けて牧場の土が乾き、草が生えそろう4月下旬からダチョウを放牧しています。放牧する時間は決まっておらず、期間中であればいつでも見ることができます。

雨の日もダチョウたちはへっちゃら。ただし人間はずぶ濡れになるので、悪天候の日に訪れる際は、防寒や雨対策をしっかりと行ってください。

<スポット情報>
第二有島だちょう牧場
■住所:北海道虻田郡ニセコ町字豊里239-2
⇒SNSなどの情報はこちら

【画像】第二有島だちょう牧場

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