「地域力で子どもを育てる」北海道代表チームの少年団監督が伝えたい大切なこと
共働きの家庭が増え、送迎や当番活動などがネックになることで、少年団に参加する子どもの数は減少しています。しかし、子どもだけではなく親子で一緒に頑張ることができる少年団だからこそ地域で担える役割があります。
薄れゆく地域交流のなかで子どもの成長に大切なことを、札幌市本郷小学校を拠点に活動しているソフトテニスの少年団『本郷ソフトテニス少年団』の監督・小西氏にうかがいましました。
『本郷ソフトテニス少年団』監督。教師経験34年、少年団の指導歴30年のベテラン指導者。北海道ソフトテニス連盟の理事としても20年活躍する、小学生のソフトテニス界を担う存在。
小学生時代だからこそ、「楽しい」の先に「成長」がある
2022年、3年ぶりに開催された『第39回全日本小学生ソフトテニス選手権大会』で、北海道代表女子チームの監督も務めた小西氏。
自身が監督を務める『本郷ソフトテニス少年団』は、各大会で入賞者を多く輩出し、全国出場を果たす選手も。その特徴は、紐やバスケットボールを利用し、遊びながら技術を身につける楽しい練習。
『本郷ソフトテニス少年団』のスローガンは「楽しく上手に!」。これに、小学生時代に大切なことが詰まっているといいます。
「練習での経験を通して、自分で考えられる人間になってほしいと願っています。学年を問わず、試合の中では自分と戦い、自分の判断で勝つために動けるような精神力を育ててほしい。最近では、親や祖父母に甘やかされて育った子どもも多いですが、試合では周りの大人が手を貸すことはできません。
心身ともに成長してもらうため、人との関わりが未熟な時期に技術の向上や勝利主義のみにこだわらず、楽しみながら練習することを大切にしています」
薄れていく地域コミュニティーの中で「少年団の役割」
子どもたちが集まり、ペアを組み、チームを作る。接点が増えると揉めごとも増えますが、コミュニケーション能力の向上や自分の弱さの克服など、子どものステップアップに繋がります。
「近年、学校では学ぶことができない、好きなことの練習を積み重ねていくなかで得られる満足感・自己肯定感・苦しさを乗り越える力、異学年との人間関係・礼儀などを身につけていくチャンスが少なくなっていると感じます。だからこそ、少年団で人間としての成長を促されるような経験をしてほしい」と小西氏。
「ここ15年くらいの間、なくなる少年団もあれば新しくできる少年団もあり、少年団の数自体はあまり変わっていません。しかし所属人数は確実に減少しています。少子化の影響だけではなく、共働き世帯が増え、練習や試合の送迎・付き添いができないことが大きな要因だと思います」
実際、子育て世代の親御さんが少年団を敬遠する理由の多くは、当番制にあるという話を筆者もよく耳にします。しかし、地域交流が希薄な親世代が地域と共に育つことができることが、少年団の大きな役割のひとつだといいます。
「当番制に協力いただく親御さんの負担は大きいかもしれません。しかし、少年団は親御さんにとって、子どもにかまい過ぎないことを学び、自立を促す関わり方を学ぶ場になるはずだと思っています」
大人と子どもが同じ時間を共有する中で、我が子以外の子どもにも気を配り、必要であれば注意したり、ときには怒ることも必要。我が子に関しても、自分でしっかり考えて練習や試合に取り組む姿勢を目の当たりにすることで、家庭での生活では気づかなかった子どもの成長に気づきます。
昔でいえば「近所のおばさんに怒られた」というような、「親以外の大人に怒られる」「親以外の大人が自分を応援してくれる」という経験が、今の時代できなくなってきていることを踏まえると、子どもたちは、親以外の他人が自分のために一生懸命になってくれることを実体験し、大人に対する礼儀や感謝を学ぶ機会になるでしょう。
技術の向上だけではなく、子どもが人間として成長できるよう親子で頑張る道のりを、しっかりと指導者が支えてくれる少年団という存在は、少子化や地域交流が希薄な現代において重要だと感じます。
全国選手を育てた小西氏から。小学生を持つ保護者へメッセージ
「北海道のスポーツが盛り上がり、スポーツを通して親子が共に育っていける環境を維持していきたい」と語る小西氏。
そんな小西氏が、子どもの成長という同じ願いを持つ親御さんに伝えたいこと。それは「バカ親になるな」ということだそう。
「子どもは、自分の都合のいいように親をうまく使います。つらい時にはいつもよりわがままにもなります。それらをちゃんと見抜いて導ける親であってほしいと思います。特にスポーツは自分との戦いです。練習や試合の中で得るものは、子どもたちにとってかけがえのない経験です。そんな子どもたちを大きな心で見守っていけるような親でいてほしいです。勝ち負けにこだわったり、今できないことに一喜一憂して子どもを叱るような“バカ親”にならないでください」
そして、「親バカになれ」と小西氏はいいます。
「お子さんの心の葛藤や成長を感じとり、自分勝手な嘘を見抜けるようになったら、ぜひ応援団長として“親バカ”になってほしいです。子どもの考えを認め、成長を促す助言をし、信頼していることを伝えて、子どもの成長を見守れる“親バカ”になるのがいいと思います。そんな好環境が生まれたら、子どもはどんどん成長していきます」
今回小西氏のお話をうかがい、子どもの成長過程には親の力、そして地域の力が必要なのだと改めて感じました。小学生も高学年になると随分と成長します。一丁前なことを言ったり、実際にすばらしい行動をしたり……。しかし、まだ小学生。多感な時期を親子で乗り越えた先に人間としての成長があります。
『本郷ソフトテニス少年団』では、親御さんの協力を得ながら、チラシやポスターを作成したり、普及講習会を行ったりと広報活動を行っています。忙しくなることは目に見えていても、一度お近くの少年団のドアを開いてみてはいかがでしょうか。
【取材協力】本郷ソフトテニス少年団
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