地元民ですら想像できない…日本最低気温「マイナス41度の朝」を表現した旭川銘菓
開村から132年、市政が始まって100年と歴史の浅い北海道旭川市。そのなかでも古い歴史があり全国的に知られたお菓子があります。
それは『ビタミンカステーラ』。製造・販売をしているのは、旭川市にある「髙橋製菓株式会社(以下、高橋製菓)」です。
大正6(1917)年、長崎でのカステラづくり修行を経て旭川で創業。代表的な商品のひとつ『ビタミンカステーラ』は、大正10(1921)年に初めてつくられました。
そしてもうひとつ、「髙橋製菓」で人気のお菓子といえば『氷点下41°』。今回は「髙橋製菓」とお菓子の歴史について、取締役常務の中野大将(なかのひろまさ)さんにお話を聞きました。
髙橋製菓株式会社と「ビタミンカステーラ」の歴史
『ビタミンカステーラ』は、旭川市民の間では昔から見慣れたおやつ。コンビニエンスストアにも並んでいます。小さなころ食べた子どもたちが大人になり、親になった今、わが子のおやつにしたり、自分自身も懐かしみながら食べたりすることも。
旭川市外や道外からくる観光客にも人気で、手軽な価格と個包装、日持ちすることからお土産としても重宝されています。甘味をおさえた素朴なおいしさは、誰もが懐かしく感じることでしょう。
「『ビタミンカステーラ』の原形が販売されたのが大正10年。現在の形になったのが昭和30年代前半です。“ビタミン”と名が付いているのは、当時子どもたちの給食に使われていたビタミンB1・B2を加えたことがきっかけ。それを機に昭和35年ごろから『ビタミンカステーラ』としました」と中野さん。
「販売当時のカステラは、卵や砂糖をたっぷり使用した重量感のある高価な食べ物。当社では、リーズナブルながらも栄養価が高いカステラづくりを目標に製造を始めました。通常のカステラの質感と違い、水分が少ないため、作業の片手間に食べられる形と日持ちが実現しました」
『ビタミンカステーラ』は、農家の出面さん(農作業のお手伝いをしてくれる方)たちのおやつにもよく食べられていたといいます。当時は田植えや稲刈りの農繁期の時期となると、『ビタミンカステーラ』を買い求める人で店はとても賑わっていたと聞いていると中野さん。
今も昔と変わらぬ形と味わいで、多くの人に愛されているお菓子です。
明治35年1月25日早朝、旭川は日本最低気温のマイナス41度に
旭川は北海道の真ん中に位置する盆地。周辺を山々に囲まれているため、夏は30度を超える日が多く大変な暑さ、冬はマイナス20度を下回ることもある大変な寒さです。
しばれた(気温が下がりとても寒い)朝は、空気中の水分が凍り、それがお日さまに照らされて目にも見える“ダイヤモンドダスト”(細氷)が発生します。気温がぐっと下がる旭川ならではの自然現象は、寒いながらも大変美しく、旭川市民であっても見とれるほど。
そんなキラキラと美しく輝くダイヤモンドダストをウエハースで、真っ白い雪と氷をホワイトチョコレートで、また、凍てつく大地をアーモンドで表現したお菓子『氷点下41°』も、旭川の銘菓として「髙橋製菓」が製造しています。
『ビタミンカステーラ』の製造で培った焼き菓子の高い技術が、『氷点下41°』に活かされているのです。
凍てつく大地・真っ白な雪・極寒の地に輝くダイヤモンドダストを表現「氷点下41°」
『氷点下41°』は、真冬を連想させるイラストとブルーのパッケージが旭川らしいお菓子です。中野さんに誕生秘話を教えていただきました。
「『氷点下41°』は、明治35(1902)年1月25日の早朝に上川測候所で記録された日本最低気温のマイナス41度にちなみ、お土産品として平成元(1989)年2月に販売された焼き菓子です。ネーミングはシンプルですが、包装紙の深い色合いの青と相まって、北の大地の凛とした空気を感じられるお菓子となりました。
お菓子自体には、スライスアーモンド・ホワイトチョコレート・ウエハースを使用し、凍てつく大地・真っ白な雪・極寒の地に輝くダイヤモンドダストを表現しました。3種類の違う素材を1枚の焼菓子として完成させる技術は、当時はとても難しかったといいます。お菓子としては珍しく、公益社団法人発明協会から北海道発明表彰として『弁理士会会長賞』を受賞しております」
実際にいただいてみると、真っ白でふわっとしたウエハースは本物の雪のよう。ホワイトチョコレートがスライスアーモンドのほろ苦さを優しい味わいにし、アーモンドは香ばしく歯ごたえがあり、この上ないおいしさです。
パッケージはブルーと白で冬のイメージ。お土産ショップに並んでいると、とても目を引きます。
ブルーの包装紙を開くと、真っ白な箱が。そこには『氷点下41°』の由来が書かれています。
箱を開くと、個包装された『氷点下41°』がお目見え。個包装のパッケージには、旭川の人気スポット「旭山動物園」をイメージしたシロクマやペンギンの姿と、きらりと光るダイヤモンドダストの光が何粒か描かれていて、とても素敵。まさに旭川の冬のイメージそのものです。
マイナス20度を超えると、外を10分程度歩いているだけで足先や手先が冷えすぎて痛くなり、震えが止まらなくなるほどの寒さ。マイナス41度の世界は、今はもう旭川市民でさえイメージができませんが、「髙橋製菓」の『氷点下41°』なら当時の雰囲気を感じられそう。冷蔵庫で冷やしてから食べると、より一層おいしく食べられるのだとか!
「私自身、『ビタミンカステーラ』『氷点下41°』ともに生まれたときからずっとそばにあって当たり前の存在でした。身の回りの環境が目まぐるしく変わる現在、常に変わらない存在の力はとても大きいですね。私にとってそうであるように、別の誰かにとっても同じ存在になれるよう、品質本位の理念を忘れずにいたいです。消費者様に寄り添った製品づくりにこの先も長く携わっていきたいですね」と中野さん。
大正6(1917)年の創業から消費者を大切にしてきた「髙橋製菓」。『氷点下41°』は、スーパーや土産店、道の駅などで購入できます。当時の旭川の真冬を味わってみませんか。
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■店舗名:髙橋製菓株式会社
■住所:北海道旭川市4条通13丁目左1号
■電話番号:0166-23-4950
■営業時間:9〜17時
■定休日:土曜・日曜・水曜
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