まかなう

実は標準語と違う意味も!? 方言だと気づきにくい北海道弁「まかなう」

2022.11.06

標準語と同じ言葉ですが、意味が違う北海道の方言がいくつかあります。今回はそのひとつ、「まかなう」という北海道弁を解説します。

食べることじゃない!? 「まかなう」ってどういう意味?

標準語の「まかなう」は、「限られたものでやりくりをして間に合わせる」という意味があります。たとえば「食費は〇円でまかなう」とか、「旅行の持ち物は家にあるものでまかなう」、「会場の準備はサークルのメンバーでまかなう」というように。お金や持ち物、人手などについて使われる言葉です。

また、ありもので作る食べ物のことを「まかない」といいます。これも、食べ物をやりくりして間に合わせるという意味の「まかなう」から作られた名詞です。

北海道でも標準語と同じ意味で「まかなう」という言葉を使いますが、ほかにも北海道弁だけの意味があります。使い方は「仕事前だからまかなわなきゃ」など。さて、どんな意味だと思いますか?

北海道弁では「身支度をする」「物事の準備をする」

北海道弁の「まかなう」には、「身支度をする」や「物事の準備をする」という意味があります。とくに「身支度をする」という意味で使われることが多いです。

寒い時期に言う「まかなう」は、「寒いときに着込む」という意味も含みます。つまり、先ほどの例文は「仕事前だから身支度しなきゃ」という意味です。

東北地方でも使われている

青森県や秋田県、岩手県、宮城県などの東北地方でも、北海道弁と同じように「まかなう」を「身支度をする」という意味で使っているようです。どの地域が発祥なのかはハッキリとしていませんが、「寒いので着込む」という意味もあるように、北海道をはじめ寒い北側の地域で使われている方言なのかもしれません。

そもそも「まかなう」の意味が違う?

そもそも「まかなう」という言葉が、「辞書などで提示されている、“限られたものでやりくりをして間に合わせる”という意味ではない」、と異論を唱えている論文があります。論文では、辞書に載っている「まかなう」の例文をもとに、実際の意味を検討。結果、導き出された意味は「必要なものを使える状態に用意した上で使用に供する」というもの。

北海道弁の「身支度をする」や「物事の準備をする」も、論文が出した結論の意味に近いものといえます。

例文で北海道弁をマスター

それでは「まかなう」の使い方を例文でご紹介します。

<例文>

「今日は寒いから、ちゃんと暖かくまかないなさい」

意味)今日は寒いから、ちゃんと暖かく着込みしなさい

「大丈夫、がっつりまかなってるよ」

意味)大丈夫、がっつり着込んでるよ

 

北海道民の口から「まかなう」という言葉が出てきたとき、「もしかしたら標準語と違った意味で使っているのかも」と耳を傾けてみてください。「身支度をする」や「物事の準備をする」という意味があると知っておけば、意味が通じるはずです。

【参考】
三省堂 現代新国語辞典 第六版
北海道語について(Ⅱ) -十勝の方言を中心にして- / 池添博彦 帯広大谷短期大学紀要 開学50周年記念号(第48号) 2011年3月
「賄う」の意味 / 上條厚 信州大学留学生センター紀要第6号 2005年3月

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