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観光地にありながら写真撮影禁止。謎に包まれた小樽の老舗駄玩具屋がすごかった

小樽駅近くにある「駄玩具キタムラ」は摩訶不思議なお店です。宇宙飛行士のような少年少女が花火を持っている看板は強烈なインパクトを放っています。

情報化社会にありながら、インターネットで検索しても詳しい情報は一切ナシ。店内は撮影禁止で、どんな店なのか謎のベールに包まれています。粘り強い交渉の末、ようやく取材の承諾を得ることができました!

「駄玩具キタムラ」の歴史

「駄玩具キタムラ」こと「北村商店」は、玩具の小売・卸売を行う店です。その歴史は古く、100年以上の歴史を誇ります。

店主の北村公一さんは約30年前に父親である先代から店を承継しました。縁日などの露店で扱う玩具や駄菓子、祭りなどで使う玩具なども取り扱っています。

日本の玩具の遍歴

玩具は時代によって材質や形を変えてきました。昭和初期は紙や木製が中心で、戦後はブリキに変わり、昭和30年代に塩化ビニールやプラスチックが登場します。昭和50年代にはデジタル化が進みます。

「昭和の終わりごろにファミコンが発売されたことで、一気に流れが変わりました。ウチでも少しだけ取り扱いましたが、利益は駄菓子より少なく、売れても儲けはありませんでした。売れ筋のファミコンソフトは仕入れが困難なうえに利益率が低く、バブル後もあり、街のおもちゃ屋、駄菓子屋、卸業者が減少したと思います」と北村さん。

「小樽市内で営業している玩具店はごくわずか。卸を続けていても先はないと考え、これまでの取引先との関係は維持しつつ、小売に販路を見出すことにしました」

既存のおもちゃ屋とは違い、高額な商品も置いていない。しかし、駄菓子やお祭り用玩具は充実している。店名を決めていく際、ポケット玩具、レトロ玩具など候補はありましたが、お客さんとの会話の中で、検索するときに意外と「駄玩具」という言葉を使うとヒントをもらい、業界でもあまり使われない「駄玩具」にしました。

謎めいたお店にお客さんが引き寄せられる

「駄玩具キタムラ」は、三角市場や小樽中央市場に近く、店の前をたくさんの観光客が歩いています。その中で「キタムラ」はとても異質。謎めいた雰囲気は、お客さんの関心を引くためには十分です。

店内ではさまざまなレトロ玩具を販売しています。いずれも卸売を主軸としていた時代のもので、中には『忍者キャプター』や『アクマイザー3』など、戦隊ヒーローモノの中でもパッとしなかったキャラクターのソフビ人形も見受けます。

「人気がなかったから売れ残っているんですよ」と、北村さんはいいます。今では希少と呼ばれるおもちゃが、子どもに人気がなかったとは皮肉な話です。

当時は版権を得ていない、いわゆるパチモンも多く出回っていました。そうした商品を好む“パチモンコレクター”もいるそうです。

「店に足を運んでくれた人にすごいと言わせたい」、「お客さんとの会話が弾みそうな玩具は手元に残しておきたい」との理由から、店内は撮影禁止、一部の商品は非売品です。

かなり昔に全国放送のテレビに紹介されたことがあり、仕事が手につかないほど問い合わせがあったそうで、それ以来あまり取材には応じていません。今回は特別に店内を撮影させていただきました。

往年のアイドルが優しく微笑む

店内は懐かしい玩具がいっぱい。さりげなくピンク・レディーの『おしゃれデザートセット』が置いてありました。1977年頃に「アサヒ玩具」から発売された商品だそうです。

同社は1969年に『ママレンジ』でヒットを産み、様々な家電品や家事用品を模した玩具を得意としていました。1980年モスクワオリンピックのオフィシャルキャラクター『こぐまのミーシャ』の日本での商品化権の契約を結びましたが、日本選手団がオリンピック参加をボイコットした影響を受けて販売不振に陥り、巨額な負債を抱えて倒産しました。

『コメットさん』は「1億人の妹」のキャッチフレーズでデビューした大場久美子さん主演のドラマです。この番組で人気となり、ブロマイドが爆発的に売れ、一躍トップアイドルになりました。当時はたくさんアイドルグッズが展開されており、今では考えられませんが、自転車まで販売されていました。

小物玩具大集合という感じで、露店のような雰囲気もあります。

 

駄菓子の種類も豊富で、すべて大人買い可能。「数十円の駄菓子を買うのにビニール袋を有料にするのは忍びない」と、北村さんは新聞紙で袋を作っています。お客さんに対する優しさが伝わりました。

「来店いただいたお客さんに『すごい!』『やばい!』と言わせたいです」と北村さん。

<店舗情報>
■駄玩具キタムラ
■住所:北海道小樽市稲穂3丁目20-1
■電話番号:0134-22-2888
⇒営業時間など詳細はこちら

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