後藤健市さん

「真面目すぎるとつまらない」地方創生コーディネーター・後藤健市が語る地域活性に必要なこと

「この町にはなにもない」……地方に住んでいるとよく聞く言葉。確かに都会に比べると、人口やお店の数は少ないです。でも、数の力ばかりが“魅力”とは限りません。

今回ご紹介するのは、名刺6枚分もの肩書きを持つ、地方創生コーディネーターの後藤健市さん。お話を通して、地域の価値と活かし方を見つけてみませんか?

名刺6枚の肩書きは「誰かの笑顔」のため

後藤健市さんは、帯広市出身、1959年生まれの62歳。

『株式会社デスティネーション十勝』代表取締役社長、『株式会社スノーピーク』地方創生担当顧問、『一般社団法人ノアソビSDGs協議会』副理事長。ほかにも『内閣府地域活性化伝道師』など、まだまだ多くの肩書きをお持ちです。

『株式会社デスティネーション十勝』は、帯広競馬場に隣接する『とかちむら』でキャンプ用品のレンタルや販売を行う店舗を運営するなど、アウトドア観光を軸に観光地域づくりを行っている会社です。『一般社団法人ノアソビSDGs協議会』は、“野遊び”をキーワードに、豊かな地域社会を目指して地方創生を進める組織。芽室町では、“ハイクラスの野遊びリゾート”と銘打って自然環境を生かしたリゾート化プロジェクトを行っているといいます。

一方、 “アウトドア”や“地方創生”というキーワードが多い中で気になったのは、『社会福祉法人 ほくてん 北海点字図書館』の名刺。

実は、後藤さんの祖父である後藤寅市さんは、幼いときの怪我が原因で全盲でした。寅市さん自身が「読書によって社会の扉が開かれたという経験を、同じ障がいを持つ方にも……」という想いから、1949年日本で3番目となる点字図書館を帯広市に発足。

「目が見えないという障がいのおかげで、いろんな方と出会い、多くの経験をすることができた」と自身の置かれた状況を“プラス”に捉えていたという寅市さん。祖父の生き方を通して、後藤さんは“個性の活かし方”を学び、活動の原点である“誰かを笑顔にしたい”という想いを抱くようになったといいます。

帯広市の名所のひとつでもある『北の屋台』。後藤さんは、2001年に立ち上げた主要メンバーの一人です。

「発想自体は単純。お祭りのようなハレの日は誰もがワクワクします。お祭りといえば屋台。屋台がいつもあれば、街が楽しい。そういう考えです」

しかし、懸念されたのは帯広の“冬の寒さ”。ただ、屋台で有名な福岡ですら、“梅雨・猛暑・台風”の土地柄が屋台には不向きだと思われていたのだそう。梅雨がなく、猛暑はわずか、台風も少ない十勝。『北の屋台』では、懸念だった冬の寒さは「暖をとりながら楽しめばいい」と“個性”として活かすことに。その結果、現在も、地元住民や観光客でにぎわう人気のスポットとなりました。

遊び心でワクワクする地方創生を

現在後藤さんは、さまざまな会社や組織で活動しながら、地方創生に向けた講演・視察・面談・イベントを国内外で行っています。そんな後藤さんが伝えたい地域の魅力とは?

いわゆる田舎と呼ばれる場所では、観光地として「なにもない」といわれがちですが、「実は“豊かな自然と食材”の宝庫だ」と後藤さん。「身近すぎて当たり前になり、“価値”としていて気づいていない住民も多い」と続けます。

過去には、郊外の畑から美しい景色を見ながら軽食が楽しめる『フィールドカフェ』や、雪中のビニールハウスでフランス料理を味わえる『スノーフィールドカフェ』を企画。“価値”に気づかれない“もったいない”場所を活かす取り組みを行なっていました。

近年では、自然景観とおいしい食材を活かした“アウトドア+地方創生”に力を入れているそう。アウトドアときくと、なんだかハードルが高い気もしますが、後藤さんは「“遊び=ゲーム”と思う人が多いけれど、アウトドアも要は“遊び”なんだよ。“野遊び”だね」と笑います。他にも、“田舎=いい仲”や、“ど田舎=Do いい仲”など、言葉のセンスが光っていました。

「“地方創生”は真面目にやりすぎると、つまらなくなってしまう。ワクワクして楽しい仕掛けをつくることで、今とは違う状況の地域活性化になるはず」確かにつまらないことは長続きしません。遊び心はいつまでも忘れてはいけませんね。

今後について伺うと、「人々を笑顔(ハッピー)にするため、地域や社会の“もったいない”資源を活かす“きっかけ”を言葉・景観・関係にこだわって作りたい」と教えてくれました。「講演・視察・面談・イベントでは、国内外の信頼できる方と“仲間”として繋がりたいですね。そして、真に豊かな地域・社会・未来へのアクションを仕掛けていきます」

後藤さんのお話をきいていると、前向きで明るい気持ちになれます。“人生”と“地域づくり”は似ていて、うまくいくこともあれば、いかないことも。ただ、あきらめずに前を向いて進めば、道は開けるはず。そんなふうに感じられた取材となりました。

 

コロナ禍の影響によって、いままでの価値観が急激に変わり始めている現在。時代の流れが複雑で、ついていくのがやっとの現状ですが、「“遊び心”を持ち続けながら、楽しい人生にしたい!」と思っているのは、筆者だけではないはず。

こんな世の中だからこそ、自分のことや住んでいる地域を考える機会にしてみてはいかがでしょうか。

【画像】後藤さん提供

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