ひぐち君

世界が余市町に熱視線!? 芸能界屈指の日本ワイン好き「ひぐち君」がその秘密を探る

「最近、北海道のワインがすごいらしい」と聞いたことのある人も多いはず。

そう、北海道の西部、積丹半島の付け根に位置する余市町はいま、日本ワインラバーから熱い視線が注がれる「日本ワインの聖地」として知られています。でも、実際のところ何がそんなにすごいの?――という疑問に答えるべく、お笑い芸人随一の日本ワイン好きとして知られる髭男爵・ひぐち君が冬の余市町にやってきました。

今回、ひぐち君はまず、余市町内にあるワイナリーやワイン用ブドウを栽培する農家をなんと11カ所も訪問。その感動を胸に、「ワインで地域おこし」を進める余市町の“ビッグボス”こと齊藤啓輔町長と、ソムリエ界最高峰の資格「マスター・ソムリエ」を世界最年少でとり、現在は余市町に住む高松亨さんと3人で、余市のワインの魅力を語り合いました。

ひぐち君を日本ワインの虜にしたワイナリー

右から)余市町長の齊藤啓輔さん、髭男爵・ひぐち君、余市町地域おこし協力隊の高松亨さん

右から)余市町長の齊藤啓輔さん、髭男爵・ひぐち君、余市町地域おこし協力隊の高松亨さん

髭男爵・ひぐち君(以下ひぐち君):僕は、2020年に「日本ソムリエ協会」という日本のレストランやホテルで活躍するワインのソムリエさんなどへの知識の普及や技術の向上を目的とした団体から「ソムリエ・ドヌール(名誉ソムリエ)」の称号をもらったのですけれど、高松さんは世界で通用する資格をお持ちなのですよね。しかも日本人で初めてと聞きました。

高松亨さん(以下高松さん):はい。2019年にイギリス発祥の「ザ・コート・オブ・マスター・ソムリエ」という団体が認定する資格「マスター・ソムリエ」に合格しました。現在はソムリエの仕事から離れて、余市町地域おこし協力隊として町内のワイナリー「ドメーヌ タカヒコ」でブドウ栽培とワイン醸造の勉強をさせてもらいながら、余市のワインの海外戦略やブランディングなどを手掛けています。将来は、余市町で自分のワインを造りたいと思っています。

髭男爵・ひぐち君 1999年お笑いコンビ「髭男爵」結成。日本ソムリエ協会ワインエキスパートの資格を持ち、オンラインサロン「ひぐち君の日本ワイン会」を主宰

髭男爵・ひぐち君
1999年お笑いコンビ「髭男爵」結成。日本ソムリエ協会ワインエキスパートの資格を持ち、オンラインサロン「ひぐち君の日本ワイン会」を主宰。ワイン普及に貢献した国内外の著名人に贈られる「ソムリエ・ドヌール(名誉ソムリエ)」の称号を持つ

ひぐち君:世界中のソムリエが憧れる資格を持ちながらワインの造り手になるって珍しいですよね。実は「ドメーヌ タカヒコ」は、僕が日本ワインにハマるきっかけになったワイナリーなのです。2017年にワインのイベントの仕事で代表の曽我貴彦さんに初めてお会いしたのですが、会場のお客さんが行列して曽我さんの写真を撮っていて。その時の僕は失礼ながら「このおじさん、誰?」という状態でした(笑)

でも、この時に曽我さんのワインを飲ませてもらい「日本は雨が多いのでワインの味が薄いなどと言われることもあります。でも、出汁のような旨味や繊細な味わいが日本料理とよく合うのです」と教えてもらいまして。そこから日本ワインが面白くなったのです。

リンゴの町からブドウの町にチェンジ

「ドメーヌ・タカヒコ」を訪問し、赤ワイン「ナナツモリ・ピノ・ノワール2019」試飲する髭男爵・ひぐち君

「ドメーヌ タカヒコ」を訪問し、赤ワイン『ナナツモリ・ピノ・ノワール2019』試飲する髭男爵・ひぐち君(写真提供:余市町役場)

ひぐち君:今回は、そんな曽我さんが余市町で初めて醸造したワインのブドウを育てた「木村農園」という農家さんにも行ってきました。「木村農園」は、昔はリンゴ農家だったそうですね。

齊藤啓輔町長(以下齊藤町長):そうです。余市町は、明治時代に日本でリンゴの商業生産がスタートした土地なのですが、他産地のリンゴが売れ始めた結果、リンゴの価格が下落していきました。そこでより高付加価値の農作物を作ろうということで、1970年代に農家さんたちがリンゴの木を伐採しブドウに転作したのです。

ひぐち君:リンゴの木を切ってまでワイン用ブドウに転作するなんて、すごい挑戦ですね!

齊藤町長:そうですよね。「木村農園」もこの時代にブドウ農家に変わったと聞いています。また、「ドメーヌ タカヒコ」のトップワインのブドウ品種は「ピノ・ノワール」というのですが、余市町でのピノ・ノワール栽培は、1982年に苗を配布したのが始まりだといわれています。先ほどひぐち君がお話されていたように、2008年に「木村農園」のピノ・ノワールを使って「ドメーヌ タカヒコ」が初めてワインを造りました。このワインが余市のブドウやワインの価値を変えたと思います。完全にエポックメイキングな年になりました。

余市町長、齊藤啓輔さん。北海道紋別町生まれ。函館ラ・サール高校から早稲田大学に進学。外務省入省。在ロシア日本国大使館など在外公館のほか、内閣総理大臣官邸に勤務。2018年8月の町長選で初当選、40歳、日本ソムリエ協会ワインエキスパートの資格を持つ。

余市町長、齊藤啓輔さん
北海道紋別市生まれ。函館ラ・サール高校から早稲田大学に進学。外務省入省。在ロシア日本国大使館など在外公館のほか、内閣総理大臣官邸に勤務。2018年8月の町長選で初当選、40歳、日本ソムリエ協会ワインエキスパートの資格を持つ

ひぐち君:いま日本の各地でピノ・ノワールの栽培に取り組んでいますが、余市町では40年も前から作っていたのですね。最近、北海道のワインがすごい!と言われるのは、道内の気候がワイン用ブドウの栽培に合ってきたということもあるのですか?

齊藤町長:温暖化が進んでいるというのは確かだと思います。とくに去年、2021年はとても暑い年でした。北海道では冬の気温が低すぎるとブドウの木が越冬できずに枯れてしまうため、寒さに強いブドウ品種でワインを造るなど、ワイン生産者はそれぞれ工夫をこらしています。しかし、世界的に有名なワイン『ロマネ・コンティ』で知られるフランス・ブルゴーニュ地方のピノ・ノワールの栽培に適した産地は、それほど多くないといわれています。その意味でも余市のブドウ栽培のポテンシャルは大きいと思います。

高松さん:ピノ・ノワールの栽培の本場、ブルゴーニュでも温暖化は問題になっています。ピノ・ノワールや同じくブルゴーニュを代表する白ブドウ品種「シャルドネ」でワインを造りたいという人は、いま産地としての日本やイギリスに注目しています。イギリスはすでにスパークリングワインの産地として有名ですが、日本は世界的に見るとまだこれからの産地ですので、“色がついていない”という意味でチャンスだといえます。

ひぐち君:ブルゴーニュの生産者が北海道に進出したとの話題もありましたね。

高松さん:はい。日本の中でも北海道はとくに注目の産地です。ただ、まだ世界のソムリエの常識では、日本ワインの品種といえば「甲州」です。これは、北から南まで画一的に「日本」と見られているからで、より細かな地域の単位で産地が知られるようになれば「山梨の甲州」「北海道のピノ・ノワール」のように、産地と品種がセットでブランディングできるようになるかもしれません。

ワインが町の活性化の起爆剤に

 高松亨さん。オーストラリア・シドニー出身。シドニーで和食の料理人として働く父の影響もあり、15歳の時からバリスタとして飲食業界で働く。2019年に「マスター・ソムリエ」に合格。2021年5月より「余市町地域おこし協力隊 ワイン産業支援員」に着任する。

高松亨さん
オーストラリア・シドニー出身。シドニーで和食の料理人として働く父の影響もあり、15歳の時からバリスタとして飲食業界で働く。2019年に「マスター・ソムリエ」に合格。2021年5月より「余市町地域おこし協力隊 ワイン産業支援員」に着任する

ひぐち君:そういうお話を聞くと、高松さんは余市のワインのブランディングにぴったりの人材ですね。余市町の地域おこし協力隊は高松さんのほかにもいるのですか?

齊藤町長:現在、余市町全体では5人いまして、「ソムリエ」の資格やソムリエと同等の知識を持つワイン愛好家のための資格「ワインエキスパート」など、国内外のワインに関する資格を持っている隊員が3人います。

ひぐち君:町長ご自身もワインエキスパートですし、これだけワインのプロフェッショナルが余市町の地域おこしを手掛けているのはすごいですね。

齊藤町長:実は、そこは戦略的に進めているところなのです。余市町には、魅力的な水産物も農産物もたくさんあるのですが、総花的に広く薄く予算を配分するのでは何もかもが中途半場になってしまいます。将来的に日本の人口減少が確実となっているいま、地方自治体が生き残るためには、一点突破というか、フラグをたてて集中する戦略が必要です。

その意味で、余市町の強みはワイン。ブドウの産地としても有望ですし、約200万人の人口を抱える札幌という大都市に近接していることもアドバンテージです。さらに、ワイン産業は単にワインをボトリングして造って終わりではなく、そこから飲食業や観光業など広いすそ野を持つ産業ですから。

ひぐち君:確かに、ワイナリーを訪れたりその土地でしか飲めないワインを求めて各地を旅したりというワイン愛好家がたくさんいますよね。ワインが町の活性化の起爆剤になるということですね。

ひぐち君も参加して行われた2月に行われた食材セミナー「冬の余市でおもてなし」。ニシンやリンゴなど余市町産の食材を使った料理と余市のワインをペアリングして提供した

ひぐち君も参加して行われた2月に行われた食材セミナー「冬の余市でおもてなし」。ニシンやリンゴなど余市町産の食材を使った料理と余市のワインをペアリングして提供した(写真提供:余市観光協会)

余市を盛り上げてくれる人を歓迎します!

ひぐち君:余市町の「ふるさと納税」の返礼品には、余市町内にあるワイナリーのワインがエントリーされていました。町内にあるほぼ全てのワイナリーが返礼品を出していると聞きましたが、これはすごいことですね。

齊藤町長:本当にありがたいことです。今年度の寄附額は過去最高額の約8億円となる見込みです。ワイナリーやブドウ農家のみなさんのご協力あってこその「ワインの町・余市」だと感謝しています。

ひぐち君:消費者としても数量限定とはいえ、トップドメーヌのワインが手に入る可能性があるというのは嬉しいです。僕は、日本ワインを飲んだことがない人にこそ、余市のワインを飲んでほしいと思います。絶対に僕のように日本ワインにはまるきっかけとなりますよ!

なんてことをPRしますので、ぜひ僕を余市のワインのPR大使に任命してください!(笑)

齊藤町長:それは嬉しいです! ぜひ実現させましょう!

ひぐち君:はい、本当にお願いします。余市は「日本ワインの聖地」。今回、余市町をめぐってみなさんのお話を聞き、それを実感しました。多くの人に余市のワインの魅力を伝えていきたいです。

齊藤町長:ひぐち君のように余市町を外から応援してくれる方々のご協力は喜んでお受けします。余市町は、ワインに限らず果樹や海産物など魅力のあるアイテムの多い町です。地域おこし協力隊の制度を活用して、本気で余市町を盛り上げていこうという人が集まってくれたら嬉しいですね。

 余市のワイナリー数は年々増加を続けている

余市のワイナリー数は年々増加を続けている

【詳しく知りたい】
余市町の地域おこし協力隊HP

■取材・ライティング
余市町地域おこし協力隊 広報業務支援員 本間朋子
10年間の新聞社勤務を経て、2009年にフリーランスのライター、編集者として独立。おもに「食」「ワイン」「旅」の分野で取材活動を行う。2021年4月、余市町地域おこし協力隊に着任。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル。

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