北海道スペースポート

6億円超の資金調達に成功!勢いに乗る北海道スペースポート、札幌でトークイベント開催

2022.02.18

「今、北海道で宇宙がアツい」

近年、北海道十勝に位置する大樹町を中心に、急速に宇宙事業が拡大しています。アジア初の民間にひらかれた商業宇宙港『北海道スペースポート(HOSPO)』を実現すべく、官民一体となった取り組みが続けられています。今回はその中心人物の一人、SPACE COTAN株式会社代表取締役社長の小田切義憲さんにお話を伺いました。

“夢物語”ととらえられがちな宇宙産業のリアルを見つめ、将来への可能性を探っていきます。

■ 北海道スペースポート(HOSPO)
北海道大樹町にある世界中の民間企業・大学研究機関等が自由に使える、シェアする宇宙港。アジア初のスペースポートとして2021年春に本格始動した。

HOKKAIDO SPACEPORTより引用

のべ68社、合計6億2,350万円。企業版ふるさと納税の成功を振り返る

今回の取材はオンラインで行いました

今回の取材はオンラインで行いました 出典: 北海道Likers

北海道LikersライターTatsuya.K:先日、北海道Likersの記事でご紹介したとおり、北海道大樹町とSPACE COTAN株式会社は、『HOSPO』2021年の企業版ふるさと納税の目標金額である5億円を上回る、合計6億2,350万円の寄附を集めたと発表されました。現在の心境を教えてください。

小田切義憲さん(以下、小田切さん):私のみならず、いろんなメンバーの頑張りで目標を達成することができました。活動にご共感、ご支援していただいた企業の皆様に深く感謝申し上げます。

昨年4月に会社を立ち上げた当初から、各社にふるさと納税をお願いしていたのですが、そもそも「どんな会社なのかな?」と思われることが多く、認知度の低さという課題に直面しました。

しかし、2021年夏のインターステラテクノロジズ株式会社の観測ロケット『MOMO(モモ)』の打ち上げ成功や同年11月の北海道宇宙サミットの開催、北海道庁の理解促進などによって、少しずつ宇宙への機運が高まりました。その動きに並行して多くの企業から理解を得ることができ、年末に目標を達成するにいたりました。

打ち上げの瞬間

インターステラテクノロジズ株式会社の観測ロケット『MOMO(モモ)』 出典: インターステラテクノロジズ株式会社

北海道LikersライターTatsuya.K:立ち上げから約8か月で5億円を超える資金を調達できたのは、かなりスピーディな成長であるように思います。このスピード感には、どんな要因が考えられますか?

小田切さん:スピード感があると言うよりも、むしろ、37年間にわたる宇宙産業への地道な“大樹町の種まきそして水やり”などがあってこそだと思います。ゼロからのスタートでは現在のようにはならなかったでしょう。

【関連記事】大樹町町長・酒森正人。先代らの想いを胸に、生粋の大樹人が挑む「宇宙のまちづくり」

宇宙産業への参入のための機が熟してきたことと、その機会をうまくとらえることができたことが第一の要因ではないでしょうか。大樹町の長年の取り組みと弊社の立ち上げという両輪がうまくかみ合ったのだと思います。

今後もふるさと納税を使った資金調達、および射場整備を継続していきます。これまで通りご支援のお願いを続けていきたいですし、さらに多くの企業へのアプローチも広げていきたいです。

企業版ふるさと納税だけではない!多様な資金調達とその意義

Campfireで実施したクラウドファンディングのトップ画像

CAMPFIREにて実施したふるさと納税型クラウドファンディング 出典: SPACE COTAN株式会社

北海道LikersライターTatsuya.K:冒頭でお話を伺った企業版ふるさと納税のほかにも、さまざまな方法を使って資金調達をされています。

小田切さん:そうですね。勘違いされがちなのですが、弊社は一般的なベンチャーやスタートアップ企業とは少し性格が異なります。筆頭株主である大樹町の事業を運営する役割を担い、町がやる業務を委託されるといった関係になります。

大樹町は人口約5,400人の町で、年間の町の予算は約70億円ほどです。宇宙事業は50億円ほどの想定ですから、町の財源を宇宙事業にすべて注ぐわけにはいきません。そこでその目的達成に向けて資金を集める必要が出てくるわけで、そこは民間である弊社にお任せいただいています。

北海道大樹町の特産品詰め合わせ

一般向けに実施したクラウドファンディングのリターンのひとつ 出典: SPACE COTAN株式会社

北海道LikersライターTatsuya.K:昨年は、一般向けのクラウドファンディングも実施されていました。

小田切さん:使えるツールはすべて使っていこうというわけです。現時点では、『HOSPO』の取り組みに対する“認知”を向上させることが大切です。そういった意味では、まずは最初のクラウドファンディングを実施することができたのはよかったです。

北海道LikersライターTstsuya.K:クラウドファンディングの実施については、資金調達だけが目的ではない、ということですね。

小田切さん:はい。宇宙の話をすると“夢があっていいですよね”“あこがれの世界ですよね”と言われることがあります。もちろん褒め言葉である一方で、なんだか距離があるような、自分ごとになっていないように感じます。

これは宇宙に関わる多くの人が抱えるジレンマだと思うのですが、宇宙にはもっとビジネス機会がある、自分たちの生活に役立つ、ということに気づいてほしいとう想いも込めています。

未来の話をしよう。北海道スペースポートが描くこれからの宇宙産業

北海道スペースポートイメージ図

2022年度に着工する新たな射場、LC-1のイメージ 出典: SPACE COTAN株式会社

北海道Likersライターtatsuya.K:来年度にはLC-1(※1)射場整備着工を予定しておられます。次のミッションに向けて私たちが注目すべきポイントはどこでしょうか。

小田切さん:インターステラテクノロジズ株式会社が開発を進めている超小型人工衛星打ち上げロケット『ZERO(ゼロ)』の打上げが大きなトリガーになるでしょう。2023年度の打上げを目指している『ZERO(ゼロ)』の打上げに照準を合わせてLC-1を整備していきます。

もちろん、インターステラテクノロジズ株式会社以外の顧客を開拓していくことも求められています。公共民間射場として国内外のお客様に広くアプローチしていきます。

滑走路

既存の滑走路(1,000m) 出典: SPACE COTAN株式会社

北海道LikersライターTatsuya.K:今後は滑走路の延長をはじめとして、さらなる事業の拡大が予定されています。事業全体はどのくらいの規模まで成長させたいと考えておられますか?

小田切さん:“需要”をしっかりと見定めることが重要です。やみくもに供給体制を整備するだけではなく、顧客ニーズを把握しながら進めていきたいと思います。

まずは、垂直打上げのための設備の第1弾(LC-1)、第2弾( LC-2)を整え、需要次第では第3弾、第4弾と進んでいく可能性もあります。そのためのアイデアはありますよ。

滑走路の話をすると、2年以内に現在の1,000mから300m延長させることを目指しています。ゆくゆくは3,000mの滑走路新設まで考えています。この規模になるとP2P/point-to-point(ポイント・トゥ・ポイント)(※2)の事業化が視野に入ってきます。滑走路をつくるには10年程度かかりますから、早めに整備を進めていきたいです。

■※1: LC-1(Launch Complex-1)
垂直打ち上げロケット用の施設の総称。Launch pad、組立棟、推進剤等タンクヤードなど、複数の施設から構成される。(HOKKAIDO SPACEPORTより引用)

■※2:P2P/point-to-point(⼆地点間輸送)
ロケットを使って乗客を運ぶ事業。現在では航空機を使った航空輸送事業が主流である。

宇宙産業をもっとリアルに。「宇宙」と「地方創生」の関係性とは

トークイベント「オール北海道で、宇宙版シリコンバレーをつくる」

2/22開催のトークイベント「オール北海道で、宇宙版シリコンバレーをつくる」 出典: SPACE COTAN株式会社

北海道LikersライターTatsuya.K:ここまで企業版ふるさと納税をはじめとする資金調達のお話から、将来の展望をお聞きしました。宇宙産業が以前よりもリアルに、鮮明に見えてきたような気がします。ここまで読んで宇宙産業に興味をもちはじめた読者の方もいらっしゃると思います。そんな方におすすめしたいオンライントークイベントが2月22日に札幌市で開催されるそうですね。

小田切さん:はい。「オール北海道で、宇宙版シリコンバレーをつくる」をテーマに、関係省庁や地方自治体、経済団体、民間企業等の代表者が集い、『HOSPO』を中心とした宇宙版シリコンバレー構想の実現や地域創生についてディスカッションするイベントです。

北海道LikersライターTatsuya.K:今回、十勝ではなく札幌で実施するのには何か理由があるのでしょうか?

小田切さん:企業版ふるさと納税等寄附の活動を約1年弱行ってきて、北海道内外多くの方からご協力をいただけた一方で、さらにこの取り組みを札幌のみなさんに知ってほしいという想いがあります。

北海道における札幌市の人口比を考えると、アプローチは必須なのですが、まだ不十分だと感じています。今回のイベントでは札幌市にベースを置く官公庁や企業のみなさんとお話するので、とりわけ札幌の方々に注目していただきたいです。

北海道LikersライターTatsuya.K:最後にこのイベントの見どころを教えていただけますか。

小田切さん:第一部では、関係省庁や地方自治体のみなさまと北海道の地方創生についてお話します。北海道の代表的な産業である“農業と観光”に加えて第3の軸としての宇宙産業の未来をディスカッションしたいと思います。宇宙産業が起点となることで、急速に進む人口減少などの北海道が抱える苦しい状況を緩和できるのではないか、といったお話ができるといいですね。

第二部では、経済団体や民間企業のみなさまと企業として宇宙産業を起点としてどのようなことができるかディスカッションします。宇宙との協業、具体的なビジネスの可能性について深堀りしていく。それを人口の大票田である札幌でやるのが今回の趣旨であり見どころです。

北海道LikersライターTatsuya.K:トークイベント、楽しみにしています。ありがとうございました!

 

大樹町とSPACE COTAN株式会社を中心に、官民一体となって推進する宇宙産業。“夢物語”を現実にしていくための挑戦は続きます。

宇宙産業の拡がりや可能性を感じたい方は、ぜひ2月22日に開催されるトークイベントにご参加ください!

【YouTube配信】オンラインイベントの詳細をチェック

<イベント概要>
■ 日時:2022年2月22日(火)15:00~17:30
■ プログラム:
15:00~16:00 第一部「宇宙×地方創生 北海道が世界の宇宙ビジネスの聖地になる未来を語る」
16:10~17:10 第二部「オール北海道で、宇宙版シリコンバレーをつくる」
■ 開催方法:YouTubeライブ配信
■ 申込方法:申し込みフォームからお申し込みください
■ 登壇者(順不同):
大樹町町長 酒森正人氏
国土交通省北海道開発局長 橋本幸氏
経済産業省北海道経済産業局長 池山成俊氏
札幌市経済観光局産業振興部 坂井智則氏
SPACE COTAN株式会社代表取締役社長兼CEO 小田切義憲氏
北海道経済連合会会長 真弓明彦氏
北海道商工会議所連合会会頭 岩田圭剛氏
サツドラホールディングス株式会社代表取締役社長兼CEO 富山浩樹氏
SPACE COTAN株式会社取締役兼CMO 中神美佳氏
INCLUSIVE株式会社代表取締役社長 藤田誠

【参考・画像】SPACE COTAN株式会社

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