森田敦氏

株式会社FORH BODY PERFORMANCE代表・森田敦。「関わる人をウェルネスに、豊かに。」北海道の健康を目指す数々の挑戦

2022.01.20

“コーチをコーチする”、“部活と地域のスポーツ指導者をつなぐ”

ん?どういうこと?と興味をひかれるフレーズの数々。

実はこれ、とあるコンディショニングジムが提案する事業のキャッチフレーズなんです。

えっ?コンディショニングジムってなに?ジムが部活? やっぱり気になるフレーズがたくさん。

今回は、札幌円山でコンディショニングジムを運営しながらさまざまな事業を手がける、株式会社FORH BODY PERFORMANCE代表取締役社長 森田敦さんにお話を伺いました。

森田敦(もりた・あつし)。1984年、旭川市生まれ。高校を卒業後、大手フィットネスジムに入社。25歳でマネジメントに参画し、新規事業の立ち上げや開発に尽力。そののち独立し、2016年、株式会社FORH BODY PERFORMANCEを設立。プロアスリートから94歳まで幅広い年齢のトレーナーを務める。2021年10月には北海道の部活動と地域の指導者をつなげる「BUKARU」をリリース。

問題意識から生まれた動機。コンディショニングジム設立の背景

森田さん 取材の様子

今回の取材はオンラインで行いました。自身が経営する札幌・円山のコンディショニングジムから取材に応じてくれた森田さん

北海道LikersライターTatsuya.K:まずコンディショニングジムとは聞きなれない言葉なのですが、どういったジムなのか教えてください!

森田敦(以下、森田)さん:コンディショニングジムは、ひとりひとり違う身体と心の状態を整え、豊かな生活を送るためにコンディションを常により良い状態にするために通うジムです。パーソナルトレーニングにてお客さんの身体の特徴(動きのクセや歪みなど)を捉えて、運動や栄養管理だけでなく、正しい知識や情報を提供することでさらに良いコンディションになるようサポートしています。

札幌の円山でコンディショニングジムを設立してから、今年で6年目を迎えます。ユーザーは約8割が女性で、日本代表のアスリートから94歳のおばあちゃんまで、健康に関心の高い幅広い年齢層の方にご利用いただいています。過去にはサッカー日本代表を務めた稲本潤一選手、レバンガ北海道の橋本竜馬選手、元コンサドーレ札幌の石川直樹選手、世界3位のプロスノーボーダーやプロバレーボールチームを担当しました。ほかにも水泳、車椅子バスケ、テニス、バドミントンなど幅広い競技種目のサポートもしています。

北海道LikersライターTatsuya.K:筋トレやダイエットのためだけではないジムなんですね。コンディショニングジム設立のきっかけを教えてください。

森田さん:もともとは北海道の大手フィットネスクラブに勤務しており、今ではわりとメジャーになっている“24時間ジム”の新規開発などを手がけました。

転機となったのは28歳のとき、よく通ってくれているにも関わらず、ジムの会員さんの身体の痛みなどの悩みがまったく解決されていないことに気づいたんです。たとえば肩の痛みがあるときに原因は肩ではないことも多いんですが、それがわからないと延々痛みは続きます。会員さんの悩みを解決できていないフィットネスクラブの課題を痛感し、マッサージだけの整骨院でもなく、お客さんに合った課題解決型のトレーニングを提供するジムを設立しようと思いました。

オープン当初の1年目は全くゼロからだったので会員さんが集まらず大変苦しみましたが、現在では事業が軌道に乗ってきました。ジムの経営に加え、会員さん向けのアプリをつくりたくて自らプログラミングスクールに通ったり、新しい事業にも挑戦しています。

北海道の部活動をサポートするプラットフォーム「BUKARU」

北海道LikersライターTatsuya.K:その新しい事業のひとつが、北海道の部活動と地域の指導者をつなげる「BUKARU」というマッチングプラットフォームですよね。事業を始めた想いを教えてください。

森田さん:「BUKARU」は、経験や知識のある指導者を探している学校の部活動と、指導者になりたい、経験を還元したいスポーツ経験者をつなぐサービスです。2021年10月にリリースしました。

ジムの経営をする傍らで、部活動のサポートもしていたんですが、顧問の先生たちが抱えている課題を感じました。

部活動の顧問をしている先生は必ずしも望んで引き受けているわけではない場合があります。誤解がないように申し添えますが、生徒に対する愛情がないわけではありません。スポーツの経験や知識がないにもかかわらず、顧問をしなければならず、困っている先生方もいるんです。統計では2人に1人が競技指導経験がないと答えています。

そういう先生たちの声を聞いているうちに、この課題はいつ解決するんだろう、何とかしないといけないと考えるようになりました。国は先生方の働き方改革を進めていますが、この問題にはまだ具体的な策がありません。

BUKATSU事業で行ったコンディショニング講座

名寄高校で行ったコンディショニング講習会 出典: 株式会社FORH BODY PERFORMANCE

一方で、スポーツ経験があるのに活かせない人もいます。指導者として活動したくても、生計を立てられるほどの収入が見込めないからです。

こうした2つの事象を解決しようと思い、はじめたのが「BUKARU」です。

「コーチをコーチする」今までの部活動にはなかった新たな視点

北海道LikersライターTatsuya.K:これまで認知されつつも、解消されてこなかった問題に取り組む事業ですね。“コーチをコーチする”という一風変わった取り組みもされています。

森田さん:選手たちが“ケガをしない身体づくり”をシステム化して顧問の先生たちをサポートする事業です。チームが強くなるには指導者がきちんと理論を知ることが重要です。「BUKARU」もこの事業の延長線上にあると考えるとわかりやすいかもしれません。

コーチのコーチ指導

コーチへのコーチ指導の様子 出典: 株式会社FORH BODY PERFORMANCE

部活動に打ち込む学生達はよく怪我をしたり何かしらの痛みや疲労、身体に関する悩みを抱えています。以前、部活動をサポートしていたときに指導する先生のレベルを上げる必要があると感じました。スキルや戦術を教えることはできたとしても、身体の使い方は専門外です。身体の構造や筋肉の動きなど、知ってもらいたい知識・理論があります。今では体罰や精神論の指導がなくなったので、「量より質を高めたい」という顧問の先生たちのニーズも高いように感じます。

世界も視野に。ウェルネスな人を増やしたい

北海道LikersライターTatsuya.K:コンディショニングジムの経営と「BUKARU」や“コーチのコーチ”などスポーツ現場の課題解決型の事業はどのように結びついているのでしょうか。

森田さん:僕のミッションは、ウェルネス(心身ともに豊か)な人を増やしていくことです。お金に余裕がある人でも心や身体に不調があったりする。資本となる身体のコンディションがいちばん大事だと思っています。SDGs(Sustainable Development Goalsの略称。持続可能な開発目標)が話題ですが、“Sustainable Body=サスティナブルな身体”であることが大前提ではないでしょうか。

それは北海道という地域にも必要なことではないかと。これからさらに人口減少が進んでいくことが見込まれますよね。外資が入ってきて賑わうということはあるかもしれませんが、日本人の数は減少していくので結局は自治体同士がパイを取り合う状態になっていくと思います。そんななかで自治体が求めるのは、心身ともに健康で動ける身体で長生きをする人なのではないかと。

BUKATSU参加学生との集合写真

BUKARU参加学生との集合写真 出典: 株式会社FORH BODY PERFORMANCE

コンディショニングジムはもちろん、地元のスポーツ経験者が活発な状態をつくる「BUKARU」は課題を解決しつつ僕のミッションに直結する事業だと考えています。

北海道LikersライターTatsuya.K:森田さんがお仕事するうえで大切にしていることを教えてください。

森田さん:「初志貫徹」や「軸をしっかりしろ」などと言われることがありますが、ブレてもいいじゃんと思っています。時代がこんなにも早く変わっていくのに、まったくブレないなんて難しいですよね。

強い風がきたとき、太い木はどっしり構えて受けますが、細い木は風をいなしてよけることができるじゃないですか。太い筋肉、大きな身体より、しなやかな身体。そういうイメージを持って変化を楽しむようにしています。

北海道LikersライターTatsuya.K:今後もコンディショニングジムという枠を超えてしなやかにさまざまな挑戦をしていくのですね!

開発中のプロテイン

開発中のプロテイン。抗酸化作用の高い無農薬赤ビーツを使っているそう 出典: 株式会社FORH BODY PERFORMANCE

森田さん:挑戦好きです(笑) 性格に合っているんだと思います。ちょうど今は北海道産の食材を使ったプロテインを開発しています。健康に良くサステナブルなウェルネスフードをつくっていくことで、北海道の価値を高めていきたいです。世界、狙ってます!

 

ーーー取材中、森田さんは常にハキハキとお話してくださり、自然と会話が弾んでいきました。手がける事業に共通しているのは“心身ともに健康に生きる”ということ。森田さんの挑戦はまだまだはじまったばかり。今後の更なる活躍に要注目です。

森田さんは『北海道好きが自由に投稿!北海道Likers POST』で連載中! 森田さんの挑戦の数々をチェックしてくださいね。

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※2022.05.02…サービス名変更に伴い、記事内容を一部修正いたしました。

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