北海道から宇宙って本当なの?「まだよくわからない」北海道民の疑問にお答えします
2021年は北海道の宇宙年と言えそうです!
4月に北海道大樹町に「北海道スペースポート」が開港すると、夏には、北海道大樹町から民間のロケットが2基、宇宙空間に到達。そして、11月初週には北海道初の宇宙ビジネスカンファレンス「北海道宇宙サミット2021」が開催されました。また、北海道知事・鈴木直道氏は宇宙開発のさらなる強化に向け首相に要望書を提出しています。
宇宙関連の動きについては各メディアでも取り上げられ、ちょっと気になり始めている方もいるのではないでしょうか。とはいえ、そもそもなんで北海道から宇宙?“宇宙”って映画の世界じゃないの?宇宙旅行って本当にできるようになるの?ロケットが飛んでどうなるの?といったさまざまな疑問もあるはず。
今回は、北海道Likers編集部が「北海道宇宙サミット2021」に参加し、みなさんに代わって、会場に集まった宇宙ビジネスのキーパーソンたちに、正直な疑問をぶつけてきました。
北海道から宇宙ってどういうこと?
そもそも北海道から宇宙って何事?という方のために、まず今北海道で何が起こっているのかご説明します。
十勝にある大樹町は、35年以上前から“宇宙のまちづくり”を続けてきました。その理由は、大樹町は国内外で比較しても地理的な優位性が高いまさに“天然の良港”だから。たとえば、“十勝晴れ”と言われる高い晴天率、南と東が太平洋に面している立地、帯広空港から車で約40分というアクセスの良好さ。ロケットの射場(しゃじょう)として適していると確信した大樹町は町を挙げて宇宙のまちづくりに取り組み、30年以上も前から、JAXAを始め、企業や大学機関が航空宇宙実験を行ってきました。
2010年代には、北海道として産官学が連携し、十勝にロケット射場の実現を目指しさまざまな取り組みが行われてきました。そしてついに2021年4月、「北海道スペースポート(HOKKAIDO SPACEPORT)」(略してHOSPO、ホスポ)が大樹町に誕生したのです。スペースポートとは、宇宙港という意味。宇宙に行くための空港と思っていただければいいでしょう。
現状は、まだ小さな観測用のロケットが発射できる射場と300mの滑走路しかありません。しかし、数年後には人工衛星用の大きなロケットが発射できる射場を増築、スペースプレーン(つまり宇宙船!)が飛び立てるよう滑走路を伸長する計画となっています。ロケットの発射を近くで見ることができるエリアも開設されていくでしょう!
つまり、ここ北海道には宇宙への玄関口ができたのです。ここから大きなロケットが飛んでいくのを見学できる日も近いかもしれません。
SFじゃないの?本当に宇宙に行けるようになる?
とはいえ正直まだまだ遠い存在と思ってしまう“宇宙”。しかし、「北海道スペースポート」は、旅先としての宇宙をすでに提案しています。無重力体験から、国際宇宙ステーションへの数日滞在、月の周回軌道ツアーなど、具体的なイメージもついているよう。それだけではありません。地球上の移動が宇宙を経由して短時間でできるようになったり、宇宙に住むなんて構想まであるのです。
そんなこと言っても……本当にそんな時代が来るの?と思う方もいるでしょう。宇宙といえばJAXAやNASAといった公的な機関がやっているイメージが強いですが、世界にロケットのベンチャー企業がいくつあるかご存じですか? 正解は、100社以上だそう。思ったよりも多くの人が関わり、民間企業だからこそなしえるスピードで着々と開発は進んでいるんですよ。
そのうちのひとつが「北海道スペースポート」のすぐそばにあるロケットベンチャー、インターステラテクノロジズ株式会社。実は、同社のロケットはアジアの民間企業で初めて宇宙空間に到達しているんです。
すでに宇宙に行ったロケットは観測用(宇宙に到達して地球に落ちてくるロケット)でしたが、現在は大手企業や大学と連携しながら、地球の周りを回る人工衛星を飛ばすロケットを開発中。数年後には「北海道スペースポート」から打ち上げる予定と、北海道の民間企業も世界に負けじと頑張っています。
北海道からロケットが飛んだら、私たちの生活は変わるの?
ロケットに乗れる日も近いのかなあ~なんて思い始めたところでしょうか。逆に、宇宙に行くのなんて怖いよ!別に行かなくてもよくない?という声もあるかもしれません。正直想像がつかないものは誰もが怖いと思うもの。いつか宇宙旅行に行けるよ!というだけでは気乗りしないのも納得です。ロケットを飛ばすということは、なにか我々に影響するものはあるのでしょうか?
一度目をつぶって考えてみてください。北海道十勝に、ロケットを作る会社があって、ロケットを飛ばす宇宙港があって、関係する人たちが移り住んでくる。ロケットをどんどん飛ばす。部品や工場がより必要になる。北海道外からもロケットを飛ばすためにさまざまな企業が十勝にやってくる。そして実際に十勝でロケットがどんどん打ち上がる……。
宇宙素人の筆者でも、移住者が増えて、ロケット関係のものを作る会社が増えて(もしくは新しい事業が生まれて)、ロケットを見るために観光客が集まるといったことが想像できました。北海道のロケット産業の中心地である大樹町は人口約5,400人。小さな町にそんな変化が起こるって結構すごいことかも……。
すでに変化があった事例をご紹介しましょう。大樹町にはあの“サツドラ”があるんです。通常サツドラは、8,000人から1万人ぐらいに一店舗出店するそうなのですが、なぜか人口6,000人未満の大樹町に出店しています。サツドラホールディングスCEO富山浩樹氏によると、その理由は大樹町を起点にした宇宙産業が発展して関係人口が増えていくと確信したからだそう。このサツドラの出店は、宇宙産業を起点としたまちづくりの一歩といえるのではないでしょうか。
ちなみにサツドラでは、月に50万本売れるというヒット商品『超炭酸水』の売り上げの一部をインターステラテクノロジズ株式会社に寄付する取り組みをしています。富山氏は「ニュースで見るけど、“ちょっとよくわからない”かもしれない北海道の宇宙産業の動きを『超炭酸水』から少しでもリアルに感じてもらいたい」と語りました。
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一方、仕事や十勝以外のエリアについて考えてみましょう。GPSデータを使って、農作業のコスト削減に取り組む農業情報設計社のCEO濱田安之氏は「どこにいても働ける時代ですが、土地から離れられない農業従事者も、宇宙データの活用が進めば、農業機械や場所から解放される未来がくる。単に楽ができるということではなく、より土に触れたり消費者に会いに行ったりと、農業の本質に近い働き方ができるようになると思います」と、宇宙データ活用が、北海道を含めた農業へ変化をもたらす未来を示しました。農業に限らずともせっかく働くのであれば、より豊かになったほうがいい。私たちの仕事ひとつとっても宇宙データの活用が進めば、仕事の悩みがひとつずつ解決していくかもしれません。
ちょっときになる!どうすればいい?
これから北海道で起こる、宇宙を起点としたワクワクを筆者も感じてきました。技術的なことは正直わからないけれど、近い未来には、自分や自分の家族がロケットの部品をつくっているかもしれませんし、今住んでいる街が宇宙産業によって活性化しているかもしれません。
少し興味をもったらぜひ実際に見に行ってみるのがおすすめです。元宇宙飛行士の山崎直子氏は、「これからどんどんロケットが飛んでいきます。お子さんはすごく興味を持つと思いますので、工場見学や発射見学に、ぜひ足を運んでみてください」とのこと。そして観光という観点だけではなく、「宇宙産業はすそ野がとても広いので、関わる人たちはより多様になってほしい。宇宙産業のジェンダーバランス改善という観点でも、ロケット、星、なんでもいいですが、子どものころから宇宙に触れて興味を持ってほしいです」と語りました。
大樹町は帯広から車で1時間ほど。気になる方は大樹町に行って、宇宙に触れられる施設を巡ってみてください。筆者も体感しましたが、そこから宇宙旅行に行く日を想像するとワクワクしますよ。
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人工衛星などを手掛ける株式会社Synspectiveの淺田正一氏は、「“夢があっていいですよね”ってよく言われますが必ず反論します。実はもう未来じゃないんですよ。現実としていろんな国で期待される産業として動いているので、もっと本気になって考えてほしい」と力強く語りました。今回は“こうなるかもしれない”という未来の話をたくさんしてきましたが、かもしれないではなく、数年後、数十年後にはそんな時代が来る。実際に実現に向けてたくさんの人が考え行動し挑戦している。そう確信できた「北海道宇宙サミット2021」でした。
少しは北海道から宇宙へ行く日が来るリアリティを感じていただけたでしょうか。これから広がっていく宇宙産業を一緒に見守り、そして参加していきましょう!
【画像】SPACE COTAN株式会社
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