発射場

小さな突起からロケットが飛ぶ!? 今話題の「宇宙港」潜入レポ【北海道宇宙サミット】

2021年11月4日・5日に北海道大樹町・帯広市で開催された「北海道宇宙サミット2021」。今年2021年4月に開港した「北海道スペースポート(HOSPO)」のオンラインツアーや北海道初の宇宙ビジネスカンファレンスが2日間にわたって行われました。北海道Likers編集部は、「北海道宇宙サミット2021」に密着! 記念すべき初開催を盛り上げていきますよ。

1日目は、「北海道スペースポート」のオンラインツアーが開催されました。北海道Likers編集部は、特別に現地で取材させていただきました!

アジア初!民間ロケット打ち上げができる宇宙港「HOSPO」

「北海道スペースポート(HOSPO)」とは、北海道大樹町に開港したロケットの射場(しゃじょう)のこと。飛行機でいうところの空港に当たる場所です。

宇宙といえばJAXAの種子島宇宙センターのイメージが強いかもしれませんが、種子島宇宙センターは、JAXAが保有する施設。一方、ここ「北海道スペースポート」は、民間に開かれた射場なのです。“民間に開かれた”というのが意外とポイントで、アジアには民間が人工衛星ロケットの打上げができる射場がなく、「北海道スペースポート」が初!

そんな「北海道スペースポート」からはすでに打ち上げが行われており、宇宙空間に到達しています。宇宙への到達を果たしたのは、大樹町のベンチャー企業・インターステラテクノロジズ株式会社(以下、IST)の『MOMO』という観測用ロケット。

今後、「北海道スペースポート」はさらに大きなロケットや宇宙船の打上げも視野に入れ、射場を拡大していくとのこと。北海道から宇宙旅行ができる日も近いかもしれません。

北海道スペースポート「LC-0」に潜入!

まず訪れたのは、この夏『MOMO』の打上げを行った『Launch Complex-0(LC-0)』という射場。大樹町の市街地から車で20分ほどの海沿いの場所にあります。

もともとは防衛省が自衛隊のジェットエンジンの試験場として使っていた場所で、人里からは離れています。ロケット発射の際は100m先でも振動を感じるほどの爆音がするので、市街から離れている立地が射場として適切だといいます。

地面はしっかりとしたコンクリートになっていてロケットの発射のエネルギーにも耐えられる作り。

入って左手にあるのは、安全確保のために建てられたタワー。上にはカメラがついており、ロケット発射時に海に危険がないか確認するための装置です。

『LC-0』では、発射だけでなく、エンジンの燃焼試験もできます。ロケットの向きが横・縦のどちらも対応できる試験台がありました。

ロケットの燃焼は、小型といわれるロケット『MOMO』でも、小さい火力発電所レベルの火力なんだとか。建物の周囲には防音材がおかれ、近隣の牧場の牛が驚かないように、と周囲への配慮もしっかり。

発射前の最終調整を行う建物は、牧場で使われているハウスと同じもの。低価格なロケットが売りのISTは、ロケット以外の部分でも低コストを追及していることがわかります。

取材時は実際のロケット(予備用)を見ることができました。

さらに奥に進むと発射台が。発射時には、滑車でロケットが横向きに運び込まれ、突起部分で縦に立ち上げられます(写真右に写るのは、ISTのファウンダーである堀江貴文氏)。

作りはこれ以上ないというほどシンプル。鉄板の上に、発射時の炎を散らすための突起がついています。オレンジ色の部分は、何度か発射した際に炎で変色した場所。

射場のいたるところには、協賛企業のネームプレートや広告が。「ちょっと宇宙行ってくるわ」にワクワクしました。

トータルして『LC-0』は、意外とシンプルな印象。「北海道スペースポート」では、現状の『LC-0』をはじめとして『Launch Complex-1』『Launch Complex-2』と『MOMO』よりも大型の人工衛星用の射場を2023年、2025年に整備するためプロジェクトを推進中。今後どんな姿になるのか楽しみです。

大樹町多目的航空公園の滑走路も要チェック

「大樹町多目的航空公園」にある全長1,000mの滑走路。JAXAや大学による実験が行われている場所です。

「北海道スペースポート」は、将来的には宇宙旅行等に使われる有人スペースプレーンのために3,000m滑走路の新設を構想しているそう。実際に滑走路に立つと1,000mでもかなりの距離でしたが、逆にこれが3倍になれば、有人スペースプレーンが飛ばせるということにも驚きです。

取材時には日本テレビのお天気キャラクター『そらジロー』が特別に登場。宇宙と天気は密接な関係にあることから、『そらジロー』初の北海道上陸となりました。

滑走路沿いには、カラマツがそびえたち、圧巻! 北海道らしい景色を楽しめる観光スポットとしてもおすすめです。

隣接する施設「大樹町宇宙交流センターSORA」は、大樹町の宇宙の歴史が学べる施設です。

館内には世界の宇宙産業の歴史や過去の実験などの資料がずらり。写真は過去に大樹町で実験したロケット4基。

宇宙の可能性やさまざまなプロジェクト、実績についてパネルや実物を見ながら学ぶことができます。

IST本社工場!人工衛星打ち上げに向けて開発進行中

最後にISTの本社工場をチラ見せ。ロケットと聞くととてつもなく壮大なイメージがありますが、低コストを追求するIST、工場も非常にシンプルでした。

『MOMO』の発射成功を収めたISTは、現在人工衛星ロケット『ZERO』の開発を進めています。2023年度に打上げを目指しているそう。

『ZERO』は、『MOMO』と比較してその大きさの差は歴然! こんなに大きなロケットが真上に飛んでいく……考えるだけでかなりの衝撃です。

写真は『ZERO』のテストエンジン。高価で時間のかかるやり方はありますが、ISTでは、低コストで大量生産が可能な独自のやり方を追求するべく開発を進めているそうです。

 

これからどんどん開発が進んでいくであろう「北海道スペースポート」。次に訪れるときにはどんな姿になっていくのか、今はその変化も楽しめるタイミングです。

今回取材した射場・工場ツアーは、ISTで受け付けています。団体のみにはなりますが、修学旅行や社員旅行など、日本の宇宙産業の先駆けとなる存在をぜひ旅程に組み込んでみては。

⇒こんな記事も読まれています

ついに北海道宇宙サミット開催!宇宙が近くなる「激アツの2日間」の見どころ解説

大樹町から今夏2度目のロケット発射成功!「TENGAロケット」打上げに密着