柴田さん

味のメリハリが魅力。北海道だからこそ叶う、私流食の楽しみ方3つ【アリサの北海道お菓子店 chat・柴田愛里沙】

2021.10.15

ラーメン、海鮮、ジンギスカン。絶対に外さない定番グルメで括られがちな北海道の食を、「素材にメリハリがあるんですよね」と鮮やかな表現で語りだしてくれたのは、ヴィーガン/グルテンフリースイーツ専門店『アリサの北海道お菓子店 chat』の店長・柴田愛里沙さん。“手作りとオーガニック”が普通だったという家庭に育った柴田さんは、大学と新卒時代を東京で過ごしてから、北海道でUターン起業というご経歴の持ち主です。宗教や思想、健康状態関係なく楽しめるお菓子を届けたいという想いでヴィーガン/グルテンフリーのスイーツ専門店を立ち上げました。

お菓子屋さんという仕事柄だけでなくプライベートでも、柴田さんと“食”は、切っても切り離せない関係。今回は、ただ美味しく食べるだけにとどまらない、柴田さん流の食の楽しみ方をこっそり伝授してもらいました。

柴田愛里沙さん

今回の取材は柴田さんのお店「アリサの北海道お菓子店 chat」で行いました 出典: 北海道Likers

柴田愛里沙(しばた・ありさ)。1990年生まれ。北海道札幌市出身。株式会社TREASUREIN STOMACH代表取締役。ヴィーガン/グルテンフリースイーツ専門店『アリサの北海道お菓子店 chat』を経営する傍ら、北海道の暮らしを発信するYouTubeチャンネル『愛里沙の北海道暮らし』を運営。

HOKKAIDO LOVE! な食の楽しみ方1:自分で育てる~都市近郊の自給自足生活って夢みたいじゃない?

北海道Likersライター Nao Matsumoto:突然なのですが、柴田さんのご実家は札幌市内で野菜の自給自足をされているって本当ですか?

家の畑収穫中

実家の畑で収穫 出典: アリサの北海道お菓子店 chat

柴田さん:はい! 家族で野菜や果物を育てています。ズッキーニ、人参、とうもろこし、ぶどう、ブルーベリー、ラズベリー、苺、ブラックベリーとか。ミント、セージ、タイム、レモンバームなど、ハーブ類を含めると20種類くらいになります。

幼少期から、夏場スーパーで買うのは肉や魚だけ、といった生活でした。

養蜂1

養蜂も。刺されそうですが「怖がらなければ大丈夫」と柴田さん 出典: アリサの北海道お菓子店 chat

8年前から養蜂もはじめて、甘味も自給自足しているんですよ。蜂が花粉を運んでくれるおかげで果実の実りが良いんです。

北海道Likersライター Nao Matsumoto:理想的な生活すぎる……そこで採れた作物はお店のお菓子に使うこともあるんですか?

柴田さん:もちろんです! ベリー類や蜂蜜はよく使いますし、ハーブはクリスマスケーキのデコレーションとしてのせたりとか。自分で作った作物でお菓子を作るのは、いちばんよく生産過程がわかるから安心・安全なんです。

北海道Likersライター Nao Matsumoto: “畑から食卓まで”をまさか札幌で実現できるなんて知りませんでした。幼いころからそのような生活が当たり前だったんですか?

自然の中 家の畑でハーブ収穫中

畑ではハーブも 出典: アリサの北海道お菓子店 chat

柴田さん:はい、親が手作りやオーガニック志向だったため、ファストフードも家ではほとんど食べていなくて。カレールーというものが世に存在することを知ったのは大学生のときなんですよ(笑)

北海道Likersライター Nao Matsumoto:それはさすがに驚きです。加工品ではなくオーガニック、買うのではなくまず自分で作る、といったご両親の食育が、柴田さんの現在のお菓子作りの土台や、そのインスピレーションの源泉に繋がっているんですね。

柴田さん:そうですね。そんな家庭環境が、ヴィーガンやグルテンフリーに興味を持ったことにも関係しているかもしれません。

HOKKAIDO LOVE! な食の楽しみ方2:じっくり味わう~一度食べたら忘れられない、抜群に美味しい味覚たち

北海道Likersライター Nao Matsumoto:柴田さんが実際に食べて感動した北海道グルメ、ぜひ教えてください!

ゆうしげ

山口農園のハスカップ『ゆうしげ』 出典: ハスカップファーム山口農園

柴田さん:(間髪入れず)ハスカップ! 厚真町の「山口農園」さんで採れるハスカップがすっごく美味しくて。酸っぱいといわれがちな果物ですが、甘みがあって食べやすいんです。

そのままでも充分美味しいですが、常温にしたバターに生の果肉を混ぜて攪拌するとハスカップバターが作れます。ビスケットやクッキーに挟むと、お菓子の風味と果実の甘酸っぱさが絶妙にマッチするんです。

<LOVE! 情報>
■農園名:ハスカップファーム山口農園
■販売店舗:ハスカップカフェLabo(ラボ)
■住所:勇払郡厚真町表町53-6

北海道Likersライター Nao Matsumoto:それ、絶対に美味しいですね。

紅玉タルト

紅玉タルト 出典: アリサの北海道お菓子店 chat

柴田さん:簡単なのでぜひ作ってみてください。

同じ果物でいうと、りんごの『紅玉』も大好き。そのままだと酸味が強いのですが、焼きりんごとかジャムとか、火を通すととっても美味しくなります。紅玉が出回っている時期はたくさん買い込んで、せっせとりんごタルトを作っています(笑)

北海道は冷涼な気候なので虫もつきにくく、農薬をあまり使わずに安心・安全なりんごを作ることができる貴重な土地。スーパーにはあまり売っていませんが、りんご農園の直売所やネットで買えるのでぜひ!

ゆきひかりの水田

市川農場『ゆきひかり』の水田には綺麗な水でしか咲かないという絶滅危惧種の「ミズアオイ」が 出典: 市川農場

あとは「市川農場」さんの『ゆきひかり』もおすすめですね。低アレルゲンのお米で、あっさりした風味が食べやすくやみつきになります。私はもちもちした食感のお米が苦手なので、このお米と運命的な出会いを果たしてからずっとリピート買いしています。どのくらい好きか表現すると、わざわざ農場長さんと直接契約してお店のお菓子で米粉として使うほど。カレーやリゾットにとくに合いますよ。

<LOVE! 情報>
■農場名:市川農場
■住所:北海道旭川市西神楽3線8号

北海道Likersライター Nao Matsumoto:3つともグルメというよりは素材そのものですね。日本には美味しい食べ物がたくさん存在しますが、なかでも北海道の素材を選ぶ理由はなんだと思いますか?

自然の中 森でよもぎ収穫中

森でよもぎを収穫することも 出典: アリサの北海道お菓子店 chat

柴田さん:まずは何といっても味が良い。たとえば同じラズベリーでも、採れる季節によって甘さのメリハリがあるんです。春夏秋冬を食できっちり感じられることは魅力的で、食に携わる人間として毎年楽しいですね。

あとは地域や季節の合ったものを食べるのが一番体に優しいんじゃないかと思うので、地産地消や食材の旬を心がけて食を営んでいます。そういう意味でも道民にとっては北海道産がいちばん!

北海道Likersライター Nao Matsumoto:なるほど、味の観点と地産地消の観点。どちらをとっても道産素材がベストなんですね。

HOKKAIDO LOVE! な食の楽しみ方3:人と繋がる~物語のある食を通して、作り手と食べ手に想いを馳せながら

北海道Likersライター Nao Matsumoto:お仕事として食に関わるうえで大事にしていることは何でしょう?

お店作業中

お店でお菓子を作る柴田さん 出典: アリサの北海道お菓子店 chat

柴田さん:作り手の顔がちゃんと見えるか、というのを大切にしています。仕入れのときに直接やり取りするのは時間も手間もかかりますが、なるべく現地に伺うようにしています。

北海道Likersライター Nao Matsumoto:さまざまな生産者の方との出会いがあるなかで、とくに尊敬する方がいたら教えてください。

本川さんと猟犬フク

本川さんと猟犬フク(本川さん提供)

柴田さん:お菓子関係ではありませんが、本川哲代さんという鹿ハンターの女性です。むかわ町在住で、動物の視点で何が大切か、人間として動物にどう関わっていったらいいのかを深く考えて狩猟を行っているんです。たとえば、狩猟する際は、罠を使用せず銃で無駄な痛みを与えないようにする、狩猟した鹿は無駄なく美しく解体し、人間が食べられない部分はペット用として販売するなど工夫をしてできるだけ全てをいただく。このように鹿や北海道の自然に対して、真摯に向き合っている方で、とても尊敬しています。

<LOVE! 情報>
■店名:むかわのジビエ
■住所:北海道勇払郡むかわ町春日190-3

北海道Likersライター Nao Matsumoto:とても芯のある考え方ですね。食に関してポリシーを持つかっこいい方に多く出会えるのも、北海道に住む醍醐味なのかなと思います。

ところで柴田さんが取り扱うヴィーガンやグルテンフリーのスイーツは、まだまだ知らない人が多い分野だと思います。そういったお菓子屋さんを北海道で営む良さは何かありますか?

Chatのお菓子

お店にはヴィーガン/グルテンフリーのお菓子がずらり 出典: 北海道Likers

柴田さん:まずは農家さんとの距離が近いことですね。あと、食に関心のある人が多いこと! 北海道の人はみんな食べるのが大好きなのか、興味半分で店頭のお菓子を手に取ってくれるお客さんも多いです。開拓されて間もない土地なので、新しいものを取り入れることに抵抗がないのかもしれないですね。

北海道Likersライター Nao Matsumoto:それは意識したことがありませんでした。食べるのが大好きな人達がまわりにたくさんいるなんて、なんだか嬉しいですね。

Chatの店内

「アリサの北海道お菓子店 chat」店内の様子 出典: 北海道Likers

 

———食材の味そのものだけでなく、そこに込められた想いや人との繋がりをとても大切にされている柴田さん。その語り口からは、北海道の食への愛がひしひしと伝わってきました。流行りのスイーツや便利な加工食品であふれかえる世の中ですが、今度の休日は心機一転、気になる食材を手に取って、じっくりコトコト料理をするのもいいかもしれません。

絵に描いたていねいな暮らしではなくとも、自分らしく食を楽しめたら、人生はもっと素敵かも。あなたのお気に入りと心地良さをつめ込んだ、自分だけの“北海道の食”を見つけてみてくださいね。

「HOKKAIDO LOVE! な人」とは:

日常のなかに潜んでいる“北海道が好き”という気持ちを深堀り、本当の北海道の魅力を再発見するインタビュー企画です。北海道に住む人ならきっとだれもが抱いたことがあるだろう「やっぱり北海道が好き」という感覚。きっとそこには、北海道でしか体験できないこと、北海道でしか堪能できない味、北海道でしか出会えなかった人……1人ひとりにそんな特別な存在があるはず。インタビューには北海道で活躍する“HOKKAIDO LOVE! ”な面々が揃います。あなたの“HOKKAIDO LOVE! ”はなんですか?

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