中華饅頭サムネ

本州の人は見たことないかも!肉まんとは違う、北海道の「中華まんじゅう」とは

2021.08.14

「中華まんじゅう」を食べたことはありますか? この質問に対して、道産子とそうではない人で、思い浮かべている食べ物が違うかもしれません。驚くことに北海道の「中華まんじゅう」は甘い和菓子なんです。

北海道の「中華まんじゅう」は全然違う!?

「中華まんじゅう」というと、どんなものを思い浮かべますか? 「コンビニや中華街で食べるあれでしょ!」と考えている方が思い浮かべているのは、こちらではないでしょうか。

白い生地に肉だねを包んだほかほかのおまんじゅうがおなじみですよね。一般的には「中華まん」とも呼ばれています。

ところが、北海道で「中華まんじゅう」というと、まったく違うものなんです。それがこちら。

色や形がまるで違いますよね。「中華まん」は白く丸い形なのに対して、「中華まんじゅう」は半月型。外側はどら焼きのような生地で、なかにはこしあんが入っていて味は甘いです。

北海道で食べられている「中華まんじゅう」

筆者は父からよく「中華まんじゅう」の話を聞きました。父が子どもの頃、「中華まんじゅう」はお葬式のお供え物の菓子であり、兄弟で分け合って食べていたのだとか。たしかにお葬式で「中華まんじゅう」がお供えされていたのを筆者も見たことがあり、和菓子が好きなので何度も食べたことがあります。

和菓子屋やスーパーなどで買えるため、日常的なお菓子として食べている人もいるようです。

ちなみに新潟県には「中皮まんじゅう」という名前の似た和菓子があります。

「サザエ」の中華まんじゅうを食べてみた

せっかくなので「中華まんじゅう」の食レポもします! 北海道の食品企業『サザエ』で購入した「中華まんじゅう」です。『サザエ』は十勝産の小豆を使ったおはぎが有名で、道産子にはなじみ深い食品メーカーです。

『サザエ』としっかり書いてありますね。

半月のような三日月のような形をしています。手のひらに置くとずっしりとした重みを感じます。サイズは長さ約16~17cm、幅約7cm、重さは約155gでした。

カットしてみると、なかにこしあんがたっぷりと入っていることがおわかりいただけるでしょう。

それでは、いただきます!

なめらかなこしあんの味を引き立たせるよう、生地の甘さは控えめ。甘くておいしい和菓子です。組み合わせとしては似ているどら焼きの生地がふわっとした食感なのに対して、「中華まんじゅう」の生地は薄くしっとりしています。

「中華まんじゅう」の歴史を調べてみた

「中華まんじゅう」について調べてみたところ、どうやら古い歴史のある和菓子のようです。

「中華まんじゅう」は「中花(もしくは中花まんじゅう)」といわれることもあり、“中花種”と呼ばれる、卵・砂糖・小麦粉を混ぜて焼いた生地を使います。

日本で和菓子に卵や砂糖を使うようになったのは、日本がポルトガルやスペインと外交し、南蛮船によって卵や砂糖をたくさん使う“南蛮菓子”がもたらされた影響だと考えられています。南蛮菓子はカステラや金平糖などが有名です。

おそらくは「中華まんじゅう」も南蛮菓子のひとつ、あるいは南蛮菓子が日本に入ってきて以降にできた和菓子なのではないでしょうか。

実際に、江戸時代の嘉永5年(1852年)に出版された『鼎左秘録(ていさひろく)』というお菓子作りの本に、「中華饅頭」という名前が出てきます。今でいうレシピ本のような書籍です。

材料は「鶏卵、雪白砂糖、うどんの粉」。“生地を混ぜて焼き、餡を包む”というような作り方も記載されています。材料も作り方も、北海道でよく見かける「中華まんじゅう」によく似ています。この「中華饅頭」が今残っているもののルーツなのかもしれません。

 

北海道のご当地お菓子と思いきや、どうやら古い歴史もありそうな「中華まんじゅう」。とってもおいしいので北海道で見かけたら、ぜひ買って食べてみてくださいね。

【参考】
むらかみやげ / 一般社団法人 村上市観光協会
サザエ食品株式会社
『和菓子の変遷と菓子屋の展開』並松信久 / 京都産業大学日本文化研究所紀要 第26号・令和3年(2021)3月

南蛮菓子と砂糖の関係 / 独立行政法人農畜産業振興機構
鼎左秘録 1巻付録1巻 / 国立国会図書館デジタルコレクション

【画像】チリーズ、Elenglush / PIXTA(ピクスタ)