唯一の女性騎手・竹ケ原茉耶。「強い意志と馬への愛」ばんえい競馬で戦い続ける理由
世界で唯一“ばんえい競馬”が見られる北海道・帯広市。以前は、北海道内では旭川市・北見市・岩見沢市・帯広市の4市で開催されていましたが、現在はここ帯広市だけで楽しむことができます。
ばんえい競馬のルーツは、北海道の開拓時代にまでさかのぼります。農耕馬として働く馬を、お祭りのときに競わせたのが始まりなのだとか。重さ450キロ~1トン(クラスやレース条件で異なる)の重りを乗せたそりを曳く馬は、サラブレッドではなく体重が1トンを超える大型馬です。
そのばんえい十勝で活躍する竹ケ原茉耶騎手は、現在のばんえい競馬をけん引する紅一点の女性騎手。ばんえい初心者の筆者が騎手の仕事やばんえい競馬の魅力について伺いました。
竹ケ原茉耶(たけがはら・まや)。1982年、青森県百石町生まれ。高校卒業後、厩務員(きゅうむいん)として勤務し騎手免許試験を受験。2005年に騎手デビュー。通算成績は2,709戦185勝(6.8%)※2021年3月21日現在。2020年の成績は136戦6勝。ばんえい競馬をけん引する女性騎手として第一線で活躍している。
小さな頃から馬に親しんだ生活、騎手になると決めていた
北海道Likersライターまみ:ばんえい競馬の騎手になろうと思ったきっかけはありますか?
竹ケ原さん:小さな頃から動物が好きで、動物に関わる仕事がしたかったんです。その中でも身近なトリマーなどではなく、少し変わった仕事がしてみたいと思っていました。たまたま親がばんえい競馬の馬主だったので、騎手という仕事に自然と興味を持つようになりました。
両親は女性だからと心配することはなく、背中を押してくれましたね。厳しい環境であることもよく聞かされていたので、覚悟をしっかりと決めて騎手への道を進むことができたと思います。体力を落とさないよう高校までは柔道を続け、高校卒業と同時に北海道へ向かいました。厩務員として2年以上の経験を積んだ後に受験できる騎手免許試験*を受験し、騎手になりました。
* 当時は原則2年間の厩務員経験が必要だった。現在は異なるが多くの場合厩務員を経験後騎手となる。
女性だからという苦労は感じなかった
北海道Likersライターまみ:騎手と聞くと男性社会のイメージがあります。女性ならではの大変さはありましたか?
竹ケ原さん:私の場合、学生時代も、厩務員時代も、騎手の仕事は男性社会で綺麗な環境でもない、休みも取りにくいなど聞いていたので、違和感や苦労は特にありませんでしたね。同じ厩舎に女性騎手が居た期間は、休みを一緒に過ごすこともありましたよ。ですが、自分も周囲も性別は意識せず、仕事に向き合っていたと思います。
北海道Likersライターまみ:毎日している習慣やお休みの過ごし方を教えてください。
竹ケ原さん:特にルーティンにしていることはありません。レース以外にも、馬のエサやりや、厩舎の掃除など、毎日厩務員作業があり忙しくしています。休みはほとんどありませんが、犬を飼っているので、休日はグッズや必需品を探したりお買い物したりしています。
ばんえい競馬ならではの駆け引きが魅力
北海道Likersライターまみ:ばんえい競馬の初心者の方に、楽しみ方を教えてください。
竹ケ原さん:ばんえい競馬は、サラブレッド種の馬が走る競馬よりも、途中で止めたり動き出したりといったレース中の駆け引きが見えやすいと思います。たった200mの中で色々なレース展開が起きることが一番の面白さですね。
北海道Likersライターまみ:競馬場に足を運べない方もインターネットで気軽にレースを見られるようになりました。応援するときに注目してほしいポイントがあれば教えてください。
竹ケ原さん:全部応援してほしいです(笑) とはいえ、ネットでは過去のレースを見ることもできるので、1本のレースだけではなく5~6本同じ馬のレースを観察してみると、馬の特徴や騎手の狙いがわかるのではないかなと思います。たとえばレースを見ていると、「なんでこんなに後ろの方からゆっくり……」と思うような馬がいます。実はその馬の他のレースを見ると、早い走り出しをしたことで後半止まってしまって結果がよくなかった、ということもあります。こんな風に複数のレースを見ることで「だから、ゆっくり走り出していたのか!」と駆け引きを知ることも楽しみ方のひとつですよね。
馬と向き合い、1日を大切に過ごすこと
北海道Likersライターまみ:今後の目標を教えてください。
竹ケ原さん:騎手歴も長くなりましたので、いつまでできるかな?という思いはありますが、とにかく1日を、1回のレースを大切にしていくこと。そして、各回のレースを振り返りながら馬の良さを引き出せるようになることがずっと目標です。その時々でベストを尽くしていくことが、先につながっていくと思っています。
どうしたらこの馬と1着を取れるだろうと考えるのが面白いんです。自分が世話をしている馬がレースで1着を取るのがうれしいし、自分が乗ったらなおのこと。それがこの仕事の魅力かな?と思っています。
―――ばんえい競馬、紅一点の騎手として活躍する竹ケ原茉耶騎手にお話をお聞きしました。
これまで長く騎手として続けてこられた竹ケ原騎手からは、馬への深い愛情を感じられました。経験ある竹ケ原騎手。今後のレースも大変楽しみで、応援していきたいですね!
普段よく目にする競馬の“平地競走”とは異なり、ゆっくりとしたペースでレースが進む“ばんえい競馬”は、初心者にもわかりやすく楽しみ方もさまざま。駆け引きの多いレース展開と、馬や騎手の力強さに惹かれることでしょう。帯広競馬場で、オンラインで、“ばんえい競馬”を楽しみたいですね!
ばんえい女子とは:
世界で唯一、帯広競馬場でしか見ることができないばん馬によるレース“ばんえい競馬”。大きな馬と騎手が生み出す、力強い迫力は見る者を圧倒します。そんな「ばんえい競馬(ばんえい十勝)」を主催する北海道帯広市と、インターネット勝馬投票券(馬券)購入サイト『楽天競馬』を運営する楽天グループの競馬モール株式会社が実施する「ばんえい十勝応援企画」は、ばんえい競馬を通じた地域振興の取り組み。本企画では、騎手や調教師など、ばんえい競馬を盛り上げ、支える女性たちの活躍に迫ります。彼女たちだからこそ知っている、ばんえい競馬の魅力とは?『ばんえい女子』記事一覧はこちら
【画像】NAR、ばんえい十勝
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