打ち上げの瞬間

インターステラテクノロジズ株式会社「ねじのロケット」成功!打上げ時記者会見(全文)

インターステラテクノロジズ株式会社(本社:北海道大樹町。以下、IST株式会社)は2021年7月3日(土)、自社で開発した観測ロケット『MOMO』の7号機『ねじのロケット』の打上げに成功しました。17時45分に打ち上げられ、17時49分には最高高度約100kmに到達。IST株式会社として2019年5月『MOMO 3号機』以来、2度目の宇宙空間到達となりました。

同日20時45分より、大樹町にて打上げ時記者会見が行われました。

【記者会見登壇者】

IST株式会社 代表取締役社長 稲川 貴大氏

IST株式会社 ファウンダー 堀江 貴文氏

<スポンサー>

サンコーインダストリー株式会社 代表取締役 奥山 淑英(おくやま よしひで)氏

花キューピット株式会社 代表取締役社長 吉川 登(よしかわ のぼる)氏

平和酒造株式会社 代表取締役社長 山本 典正(やまもと のりまさ)氏

株式会社サザコーヒー 代表取締役 社長 鈴木 太郎(すずき たろう)氏

高知県立大学法人高知工科大学 山本 真行(やまもと まさゆき)氏

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打ち上げ実施について

IST株式会社 代表・稲川氏

『ねじのロケット』打ち上げ成功は我々としては二度目の宇宙空間到達という結果となりました。今回の結果は、打ち上げ時刻は本日(3日)17時45分です。最高高度約100kmで、詳細は現在解析中です。宇宙空間に到達したと考えております。最高高度への到達時刻は、打ち上げから4分後の17時49分、そして着水時刻が17時55分となります。着水地までテレメトリ(データ)がとれておりまして、射程より沖合南東方向に73kmのところに着水したことも実際に確認が取れています。

今回打ち上げたのは、全面改良を行いました『MOMO v1』シリーズです。打ち上げ成功したというところで我々としても非常に大きなマイルストーンを達成できたと考えております。当初、我々の開発計画として、この夏の期間のうちに今回1機目だった『MOMO v1』シリーズを、2機打ち上げができる範囲で仕様内動作の達成を開発計画として立てていました。

仕様内動作には、エンジン・ロール制御システムが正常に点火、そしてランチャーを正常に離脱、メインエンジンのステージ間の正常燃焼、適切な姿勢制御・警戒範囲内への着水、そして飛行管制のテレメトリの正常な受信。これ以外にもありますが、実際にこれらの仕様内動作というのは間違いなく達成できたので、打ち上げ成功だということになります。

ミッションとしましても、今回同席いただいていますが、各ミッションを搭載したロケットになっています。それぞれ宇宙空間到達日データの取得という観点でミッション成功したと考えております。

『ねじのロケット』は『MOMO』7号機に相当します。この機体打ち上げ成功をもって、『MOMO』シリーズ量産化へ進みたいと考えております。具体的に今回の打ち上げした機体と同時期に『TENGAロケット』という機体の製造を行っております。先日機体公開を行いましたが、弊社工場で同時期に2機つくれているというところも量産化の表れです。これまでは1機ずつ製造して、1機つくっている間に他に場所や設備がないような状態でしたが、今は複数機同時に製造ができるようになっており、今後さらに量産化へ向けて進んでまいります。今回の『ねじのロケット』の成功を受けて、今年の夏のうちに『TENGAロケット』の打ち上げも実施したいと考えております。機体公開した通り、準備を進めております。

また、弊社としてこの『MOMO』シリーズと同時に『ZERO』という機体、我々からすれば次世代機の開発を進めています。今回の『MOMO v1』の成功は、打ち上げデータがしっかり取れたので『ZERO』の開発に直結すると考えております。実際に宇宙空間に飛んでいったデータというのは非常に貴重です。こうつくってこう飛ばせばこういう結果になるというデータが実際の宇宙空間で取れたというのは『ZERO』開発のための貴重なことです。今回の『MOMO v1』で、『ZERO』に向けた部品の開発を一部行っておりますので、そういった意味でも『ZERO』にいたる技術の実証もコンポーネント単位では一部クリアできています。『ZERO』の開発に向けても大きなマイルストーンを達成できたと考えております。

さらに、今年の4月から『北海道スペースポート』の本格稼働を打ち出しております。今年の4月にSPACE COTAN株式会社が発足いたしまして、我々IST株式会社からも出資して『北海道スペースポート計画』を進めております。このプロジェクトは、大樹町、SPACE COTAN株式会社、IST株式会社そして道内の多くの企業さんに入っていただいております。そのなかで、初打ち上げに成功したということで、この『北海道スペースポート計画』もかなり前向きに進むと考えております。

今回の打ち上げに際しまして、非常に関係各所の皆様に多くご協力をいただきました。ロケットの打ち上げでは、非常に多くの関係者の方々がいらっしゃって、それぞれの型のご協力とご理解がなければ打ち上げできないところでしたので、今回の打ち上げ無事に完了したというところで関係各所の皆様にまず御礼申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

IST株式会社 ファウンダー 堀江貴文氏

今回打ち上げ、取材していただいて、そして見ていただいてありがとうございます。IST株式会社にとっては、昨年夏以来の打ち上げで、1年間できなかった。その間に1年間かけて『MOMO v1』という新しい機体をつくる、そこに集中するというのは苦渋の決断であったわけですけれども、なんとか経営的にもそこを持ちこたえて、新しい機体ができて、そして、想定通りにほとんどそのマイナートラブルだけでメジャーなトラブルは一切起きずにここまで来られたのは、会社としても、たくさんの社員がそれから入ってきて、そして組織として非常に強い組織がつくれて、みんなが思っていた通りに打ち上げができたとからだと考えております。

ずっと取材していただいている方々はお分かりかと思いますが、だいたい我々はウィンドウを使い果たして最後ぎりぎりのところで打ち上げて、うまくいくか失敗するかみたいなことがずっと続いていたと思うんですけれども、天候が味方したというところもありますが、天候以外の理由で打ち上げ中止になることもなく、初日に打ち上がったというのも、実は地味にすごいです。その背景には技術的に失敗しないような運用体制を構築している、あるいは設計から製造、そして運用に至るまで、それぞれのチームとしての確固たる体制ができたということの表れだと思っております。そういう意味でも、1年かけて大きく成長できたことは、稲川も言っていましたけれども、次世代機『ZERO』、めちゃくちゃ大きいロケットで、その推進システムも大きくメジャーバージョンアップするんですが、宇宙に機体を運ぶ難しい部分は、『MOMO』をやるところで、習得する部分が非常に大きいです。制御だったりそこに至るまでの運用だったりとか、関係各所との交渉だったり、さまざまな要素が絡み合うんですけれども、その大部分を『MOMO v1』をやる上で習得していったということは、今後『ZERO』の成功の確率が非常にあがったんではないかと考えております。今日はどうもありがとうございました。

IST株式会社「MOMO v1」開発マネージャーの植松千春氏

はじめに、関係各所のみなさま、大樹町のみなさま含めて、いろんな関係機関の方々のご協力あって打ち上げを行うことができました。本当にありがとうございました。開発マネージャーとして1年間、今回は『MOMO v1』開発をすすめさせていただきましたけれども、3号機の成功と違って感じるのはチームが強くなったなと。堀江からも話ありましたけれども、人数が3号機打ち上げと比較して倍になり、本社工場もできて、本当に3号機のときにやりきれなかった、見きれなかった箇所も含め、たくさんのメンバーがそれぞれの知恵をふり絞って、しっかりと開発を進めることができたので、開発機『MOMO v1』初号機になるんですけど、一発目で成功できたのは各メンバーの協力のおかげだったと思います。今後の『MOMO』の量産もそうですし、『ZERO』開発に向けて非常にいいスタートですね。あらためて、次の新時代に進めるべくいいチームできていると思いますので、これからも頑張っていきたいとおもいますので、みなさまこれからもご声援の方をいただければと思います。引き続きよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

IST株式会社「MOMO v1」運用マネージャーの堀尾修平氏

今日の朝、我々IST株式会社のメンバーには「今日は伝説の1日になるよ」と伝えました。「日本の宇宙開発において偉業を成し遂げます。ISTにとっても事業化、『MOMO』の量産化、『ZERO』にむけて新たな一歩ですよ」と。何としてもですね、運用マネージャーですので、打ち上げの実施責任者として7月3日になんとしても打つというめちゃくちゃ強い意志を持って、そういったことをメンバーの前に宣言しました。なので、延期したら、もし天候が怪しかったときは、明日の朝なんて言おうとずっと考えながらドキドキしていたんですが、今日の朝もメンバーに最後に言ったのが、「皆さんがやってきたことを信じてください。私は皆さんを信じます」ということです。

みなさん実際に打ち上げをご覧になって、思ったと思うんですけれども、どこも不安にならないというか、頼もしいメンバーばっかりだし、それをまた応援してくださるスポンサーのみなさんもドシッと構えていただいて、大変打ち上げとして信じるに足る、不安の要素なく、絶対に夕方ウィンドウを狙うと決めた時から「打ち上げできるな」とこみ上げるような自信ですね。これはやっぱり『MOMO v0』があって、『MOMO v1』、この1年弱の開発をやってきたという自信が今日1日すべての集大成として表れたんだなと。「IST株式会社強くなりましたね」と今なら胸を張って言えます。次のロケットも必ず成功させます。今日はありがとうございました。

スポンサーからメッセージ

サンコーインダストリー株式会社 代表取締役 奥山氏

この度は打ち上げ成功おめでとうございます。我々、ネジの会社でネジを扱っていますけれども『ねじのロケット』ということで、今回スポンサーさせていただきました。

『MOMO v0』、『MOMO v1』ともに参加させていただいて、非常に貴重な経験をさせていただいたと考えております。我々、打ち上げの瞬間はオンラインで拝見したんですけれども、非常に変な挙動なくまっすぐきれいに上昇したように、素人目には見えました。この1年間ものすごいご苦労をされたと思うんですけれども、機体が打ちあがるのをみるとやっぱり今後の量産にも弾みがつくんじゃないかなと思って非常にうれしい気持ちになりました。我々としまして、量産の始まりとなりますともっともっとネジを使っていただけると思いますので、今後はIST株式会社さんともネジというところで何かいろいろご支援させていただければと思っております。今回は2度目の成功、本当におめでとうございます。私からは以上です。

高知県立大学法人高知工科大学 山本氏

この度は、おめでとうございます。私たちは『MOMO』2号機から関わらせていただき、最初いきなり爆発してどうなることかと思って、そこからおかげさまで長いことお付き合いの方々が増えて、いろんなことを聞いていただき、ありがとうございます。今回も、花火の打ち上げでは大樹町の皆さんにいろいろご迷惑をおかけしながら実験ができまして、どうもありがとうございました。我々としては2勝3敗かなというところですが、ただしこの2勝目の今回の1勝は非常に大きなデータが取れたと思っています。3号機のときは、あがってからちょうどこの辺(軌道の頂上ほど)まででデータが終わっていたんですけれども、今回は上がってから降りてくるまで全部データがほぼ完璧に取れていますので、そういう意味で科学観測として観測ロケットとして成功したと思っております。どうもありがとうございました。

株式会社サザコーヒー 代表取締役 社長 鈴木氏

打ち上げ成功おめでとうございます。『MOMO』4号機からのお付き合いで、4号機は飛んだけど宇宙に行かない、5号機も飛んだけど宇宙に行かない、と3回目失敗したらもう諦めようかなと思ったんですけど、今回届いたんで夢を叶えていただいて本当にありがとうございます。宇宙に行くコーヒーということで、パッケージとか強度を持たせるモチベーションになって本当にありがとうございました。あと、世界一高いコーヒー頑張って買っているんですけれども、世界一高いところまでコーヒー届いたらいいなと思いまして、本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。

花キューピット株式会社 代表取締役社長 吉川氏

稲川社長、そしてファウンダーの堀江さんおめでとうございます。そして、ありがとうございます。我々、お花を全国に届けて、利尻島から石垣島まで約4,400店舗加盟店がございまして、昭和28年からやっております。お花も感動や癒しを与えるというのがあって、もう1年半くらい前に堀江さんとお話をさせてもらった時に、お花を積んで宇宙まで行けるかなという話があって、積めますよとあったのでぜひ5年先か10年先か20年先かわかりませんが、お花を宇宙に届けるというミッションがあれば花キューピッドならできるという形のことを、一歩先いろんなことでやっていきたいなとに思っております。これを機に宇宙とお花というので何か始められたらなと思っておりますので、本当にありがとうございました。

平和酒造株式会社 代表取締役社長 山本氏

IST株式会社の皆様、本当に今回の打ち上げおめでとうございます。打ちあがる瞬間を見ておりまして、本当に大感動しました。私ども、平和酒造は『紀土(きっど)』というお酒をロケットの燃料に使っていただくと、そして宇宙を目指すという非常にエクストリームなミッションだったんですけれども、それを完璧に達成していただけたということ本当にうれしいです。日本酒業界はこのコロナ禍で非常に大打撃を受けている業界になるわけですけれども、そういった意味では一筋の明るい飛翔を見せていただいて未来につながったなと思っております。本当に感動しました。ありがとうございました。

北海道大樹町長 酒森氏

IST株式会社の皆様、『ねじのロケット』、『MOMO』7号機の打ち上げが、北海道大樹町にある『北海道スペースポート』内で実施され見事に打ちあがり大成功であったことにつきまして、大変うれしく思っております。打ち上がるロケットを見て深く感激いたしております。IST株式会社におかれましては、昨年末本社工場を建設され、スタッフも大幅に増員した中で機体の全面改良に取り組まれ、その努力が本日見事に結実しました。IST株式会社の皆様に敬意を表しお慶びを申し上げるとともに本日の打ち上げにご協力いただいた町民の皆様、関係各位に感謝とお礼を申し上げます。

本日井上内閣府特命担当大臣が大樹町に来町されこの地での宇宙の取り組みを視察いただきましたことと合わせて、大樹町にとりましてそして『北海道スペースポート』にとりまして大変大きな1日となりました。私どもが取り組むロケット射場、宇宙往還機の発着基地を核とする『北海道スペースポート』のさらなる整備に向け大きな弾みとなることと思っております。今後より一層邁進してまいりたいと思っております。

質疑応答

記者:宇宙空間に到達したかというのは最終的にどのように判断されたのでしょうか。

稲川氏:まずデータに関して、我々はロケットの中にセンサーを搭載しておりまして、コンピューターも搭載しています。また無線機も搭載していて、それをダウンリンクという言い方をしますけれども、地上に降ろしてくるということをやっています。それを合わせてテレメトリという言い方をします。そのテレメトリのシステムで、地上でモニタリングしているということになります。各周波数でそれぞれ取るデータがあるんですけれども、そのデータを持って確認しています。今回、『MOMO v1』シリーズという機体の開発を通してですね、技術力向上と信頼性向上と仕様内動作をさせことが機体の開発としては大きな目標だったわけですけれども、その達成ができたので大きな成功だったと考えています。

記者:宇宙空間に到達する・しないの違いは大きいと受け止められているのでしょうか。

堀江氏:99kmとか100kmとかいう話でしょうか。正直、ロケットの宇宙空間っていう定義って、国際的には100km以上が宇宙空間ですよと言われているんですけど、例えば、ヴァージンギャランティックっていう会社がやっている基準は、アメリカの空軍の基準では80kmと言われていて、いろんな解釈があるんですけれども、まあだいたい宇宙ということで99kmも100kmも101kmもあんまり変わらないです。もともと『MOMO v1』という機体はちょうど100kmくらいに到達するように設計されていますので、設計通りに動いて、設計通りだいたい狙った場所に到達して狙った場所に落ちているということで、機体の動作としてはパーフェクトです。なので宇宙空間に達したと言っても問題ないです。重箱の隅をつつくようなものではないかなと。

稲川氏:今テレメトリのデータをみているところですが、モニターされている数字とちょっと違うもので見ています。詳細なデータは解析中ですので、改めて出てきますし、我々ロケットの飛行データは初号機から全て公開していますので、世界中のロケットでここまで公開しているものはないんですけれども、改めてこの機体もオープンにしていきたいと思っています。

記者:今回2回目の成功ということで、1回目と2回目でどのような違いがありましたか。事業化にむけて、今回の2回目が果たす役割、実際に提示できるものを含めてどれくらい近づいたとお考えでしょうか?

堀江氏:さっき僕言いましたけど、7月3日にバシッと狙った最初の日に打ち上げられるためには、ちゃんと設計して製造して、そしてちゃんと運営する体制をつくらなくてはならないんです。それがしっかりできていたがゆえに天候で何時間か延期しましたけれど、それ以外の要因では一切延期せず狙った初日に打ちあがったということが事業化に向けては非常に大事なことです。『MOMO』3号機の成功の時は「次打ち上がる時は確率はどれくらいだろうね」っていう話をしていて、彼(堀尾氏)が「次も必ず成功します」と断言していましたけれど、断言できるくらいの体制をつくったということです。

なので『MOMO』に関しては、少なくとも次も恐らく成功して事業化できると思っています。『MOMO』は開発フェーズが終了して開発に関わっていた人員は全部『ZERO』に振り分けますので、『ZERO』の事業化がこれからスピードアップしていくという形。全力で『ZERO』を2023年度までに打ち上げるというところに向けて邁進していきます。『MOMO』が事業化できて、仮に年間10機、20機と打ち上げられると事業の大きな柱になると考えます。山本先生と話していたんですけれども、世界的には意外と打ち上げ回数が少ないんですね。JAXAでも年に1本か2本しか打ち上げてないですし。

次回『TENGAロケット』はペイロード(荷物)の再回収をやります。『MOMO』くらいの機体でペイロードを再回収できる機体ってないと思うので、意外と大きなマーケットがあるかもしれないと、そこはすごく期待できますね。そちらが事業として離陸していくと機動投入機『ZERO』へ向けてある一定の定評は得られるかな。

しかも、設計・開発・運用という部分がカチッと『MOMO』をやる上で経験として持てたっていうことは、この部分に関しては『ZERO』になろうがもっと大きな機体になろうが一緒ですから、そこの基礎ができたことで、次の『ZERO』が初号機からちゃんと運用できるということにかなり近づいたなと思います。

記者:みなさんがおっしゃるチームが強くなったという“人”の部分ですが、どういった理由があるか教えていただけますか。

稲川氏:やはり3号機の施工をうけて、我々も資金調達を発表しましたけれども、人材募集も行って、非常に優秀なメンバーがそろってきたとことが大きいと思います。

また、昨年の12月に新工場を新興しまして、実際に作業、設計場所などもつくって1つのフロアに社員みんなが集まっていわゆる“わいがや”といわれる、その場で議論しながら設計していく。設計チームだけではなくてものづくりのメンバー、そして運用するメンバーが一緒になって議論しながらスピーディーに開発ができるというそういう“ヒト・モノ・カネ”それぞれの部分で大きく改善してきたというところが2019年から進んできて実際に形になってきたのかなと思っています。

記者:今日は7号機が1発で成功したということなんですが、これから『TENGAロケット』に向けて準備が進んでいくと思います。7号機・6号機を連続して成功させることが今後商業化・事業化に向けて大きなことになるとおっしゃっていたと思いますが、『TENGAロケット』の準備に向けての抱負教えてください。

稲川氏:すでに『TENGAロケット』に関しても機体公開しているように、ミッション部の最終調整ありますけれども、機体は完成して準備を進めているところです。今回の『ねじのロケット』のポストフライト解析という言い方をしますけれども、飛行解析の結果を受けて、次の機体の準備を進めるというのが時系列的な話になります。基本的には今回の施工を受けて、同様の設計をしている次の機体も上手くいくことを祈りながら、しっかりと下準備を進めていきます。

記者:堀江氏のお話で今後は『ZERO』に注力していくというお話がありましたが、観測ロケットでのペイロード放出にも需要はあるのかなと思います。今後『MOMO』のバージョンアップは考えていらっしゃいますでしょうか?

堀江氏:ペイロードは次の機体で放出するので、『TENGAロケット』で『TENGAロボ』『メッセンジャーポット』を放出します。これは4号機の紙飛行機ミッションは達成できなかったのですが、4号機では小さな穴から紙飛行機を射出する装置をつくりました。『TENGAロケット』では、それを改良してもう少し大きい直径3センチくらいの穴からメッセージポットを宇宙空間から放出して海面で回収するっていうミッションを次の『TENGAロケット』でやります。これがそのまま使えることになると思います。

ニーズは恐らくあって、紙飛行機、メッセージポットという話をしていたらコーヒー豆という話がさっき出ていたんです。宇宙に行ったシリーズを回収するっていうエンタメミッションもあれば、なにか学術研究的な部分で宇宙でとったさまざまなデータをそのポットに入れて回収するっていうミッションはニーズがあると思うので、それは次の機会で実装しますのでそこで回収のノウハウというか、海面で飛行機を使って回収するということをやるんですけれどもこういったことができれば、レギュラーのミッションとして今後シリーズでできると思ってます。

記者:『MOMO v1』の改良点の1つは運用性だと思います。打ち上げ前の準備作業や延期時のリカバリーなど、改善の実感はありましたか?

稲川氏:そうですね。今回『MOMO v1』シリーズでは、機体も大きく改修していますけれども、同時に地上設備の改修というのも大きな開発項目ではありました。今回打ち上げに際して作業するメンバーの集合時間が打ち上げ前にかなり短縮されてできたとか、今回氷結層っていう理由で上空の天空を観ながら11時の打ち上げから夕方の打ち上げに移ったわけですけれども、この時間が変更しても非常に短期間・工数も少なく準備ができたというところは機体の運用性の改良・地上設備の改良というところも合わせて非常に省力化できたために運用できたというところだと思っています。

現地で最前線の場から作業というよりは指揮していたのですが、非常に練度も高く情報のやり取りが非常にスムーズにできていていいチームになっているなと私自身も思っています。

記者:『MOMO』6号機、『TENGAロケット』の打ち上げはいつくらいになりそうですか?今月もあり得るのか、それとも来月なのか、大体のスケジュール感をお願いします。

稲川氏:『TENGAロケット』に関しては今年の夏打ち上げというところで先月の機体公開でも発表していましたけれども、基本的にそのまま今年の夏の打ち上げを目指します。いつなのか具体的なところはさまざまな関係各所との調整の上で最終決定するので、決まり次第なるべく早くご案内はしたいと思います。基本的に次の打ち上げも無観客での実施になりますので、一般の皆様にお知らせするのは打ち上げのかなり直前のタイミングで公開させていただきたいと考えています。機体の準備は非常にスピーディーに進めてまいります。

記者:当初の燃焼時間がまだ確認中ですが、当初予定していた120秒は超えていたとに考えられていますか。

稲川氏:これもですね、すぐ見られたデータでは細かい秒数までは見られていないです。詳細データをみて改めて確定した時間が分かるというところですので、今日時点で〇.〇秒というところまでは分かっていません。

ただ、到達高度だとか実際の挙動をみていても基本的には計画の動作は達成できたと思っているので、約2分間の燃焼はできたと考えております。

記者:重箱の隅をつつくような質問かもしれませんが、当初99kmということで話されておりました。6号機『TENGAロケット』に向けて推進剤の量を変えたり、改良したりということは考えていらっしゃるのでしょうか。

稲川氏:基本的にはポストフライト解析という今回のデータを後日解析したうえで増強できる部分がもしあれば、実施します。その他、できるところはやろうと思いますけれども、なるべく早い打ち上げというところも次のお客様からも言われていますので、その兼ね合いも見ながらどこまでできるか調整していきます。

※本記事は記者会見での発言を文字に起こしたものです。言い回し等編集の都合上変更している場合がございます。

【画像】インターステラテクノロジズ株式会社

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