まさか危険な状態!? 北海道民が言う「ガスかかってる」ってどういうこと
みなさんは“ガスかかってる”という言葉を耳にしたとき、どのような状態を思い浮かべますか?
周囲に危険なガスが充満しており、少しでも火気に触れようものなら大爆発する……なんて想像するかもしれません。しかし、ご安心を。今回ご紹介する“ガスかかってる”という言葉は、このような一触即発の大ピンチを指すものではありません。
では、北海道民がいう“ガスかかってる”とはどういった意味なのでしょうか。
「ガス」は北海道の方言で「霧」を表す
結論からいうと、ガスは“霧”のことを指します。これは北海道東部地方の方言です。とくに、日本で最も霧が発生する釧路出身の人にとっては馴染み深い呼び方のようです。
ですが、釧路出身ではない筆者もたまに霧を“ガス”と表現することがあるように、必ずしも特定の地域限定で使われている訳ではないと思われます。
なぜ、霧をガスと呼ぶのか?筆者なりに考えてみた
では、なぜ霧をガスと呼ぶのでしょうか。このことに関する学術的な先行研究や知見を見つけることができなかったため、2つの英単語の意味をもとに筆者なりに考えてみました。
gas(ガス)は、英語では“気体”や“ガソリン”といった意味がありますが、霧の意味を直接的には持っていません。本来、日本語の霧に対応する英単語はfog(フォグ)です。つまり、霧がかかっているさまを言い表す際には”ガスかかってる”ではなく、“フォグかかっている”ということになりますが、なんともしっくりきません。
そこでガスという言葉の登場です。ガスはもともと気体を表す言葉で、なおかつ、状態的、視覚的に霧と類似していることから、このような呼び方がされていると考えることもできますね。
霧とどう違う?あまり知られていない「じり」とは
霧がかかっている状態を表す言葉に“じり”があります。これも”ガスかかっている”と同様に、釧路を中心とした北海道東部地方で使われていますが、“ガスかかっている”ほどよく知られた言葉ではありません。“じり”は海霧のことで、北太平洋の寒冷な親潮と海上の温暖湿潤の寒暖差によって発生するとされています。
霧との決定的な違いは、“濃さ”です。じりは霧よりも濃い霧を指します。釧路では毎年7~8月になると、じりがピークに達し、幻想的な風景が見られるそうです。
今回は、霧にまつわる北海道民独特の呼び方として、“ガスかかってる”と“じり”の2つを紹介しました。霧がかかっているシチュエーションに遭遇した際には、すかさず使ってみてくださいね。
【参考】
「霧の街、釧路」釧路・阿寒湖観光公式サイト SUPER FANTASTIC(最終閲覧日 2021年4月23日)
釧路地方の霧発生の仕組み / 湿原データセンター(最終閲覧日 2021.4.23)
【画像】Tobias Schwindling、TungCheung、Ondrej Prosicky / shutterstock、ゆ~や / PIXTA(ピクスタ)