中川真吾

株式会社ロカラ代表・中川真吾。ローカルを幸せにする「人の魅力」を伝えたい

道南のつくり手と消費者をつなぐショッピングサイト『道南地元市場』を運営するのは中川真吾さん。ひとりひとり丁寧に取材したコンテンツで、食材の背景にある人の魅力を伝えています。地域の魅力を伝える事業を始めたきっかけや、今後挑戦したいことについてお話を伺いました。

中川真吾(なかがわ・しんご)。1984年生まれ。北海道函館市出身。弘前大学卒業後、札幌市内の病院に診療放射線技師として8年間勤務。2015年農家向け支援事業を創業。2016年、地元・函館に戻り、『株式会社ロカラ(Localer, Inc.)』を設立。地域の人とともに歩み、地域に貢献できる企業を目指している。

死に向き合い、やるべきことを考えた

北海道Likers編集部:『道南地元市場』など、地域の真の価値を見出し、届ける事業を行っていらっしゃいます。事業を始めようと思ったきっかけを教えてください。

中川真吾さん

今回の取材はオンラインで行いました

中川さん:僕は、新卒から8年間、診療放射線技師をしていました。重たい話なのですが、そこには常に人の死が目の前にあって。それまで意識したことがなかった死に日々向き合うようになってから、自分の親もいつか死ぬんだなと思うようになったんです。

今、いきなり父が死んだらどうなるんだろうと考えた時、一度、医療従事者という専門職から離れて、家業が農家だったこともあり、一次産業に関わるビジネスをしてみたいと思いました。

はじめは技術もなく何をしていいかわからなかったので、全道の農家さん50軒くらいに飛び込みで困っていることをヒアリングしてまわって自分のできることを探したんです。

すると「ネットショップに出してみたいけど難しい」とか「ウェブサイトを作ってみたい」という声が多くありました。そこから、札幌のウェブ会社さんと一緒に組んでお手伝いをしているうちに、食に特化したECサイトを始めることに。

現在は80社ほど加盟いただいていますが、課題は多種多様。農家さん・漁師さんによっても違いますし、地域によっても異なります。裏を返せば、魅力も十人十色。『道南地元市場』では食べ物を扱っているのですが、一番の魅力は人だと考えています。ひとつひとつの魅力を伝えられる、ローカルにコミットしたサービスにしていきたいです。

規格から外れた野菜に新たな付加価値を

北海道Likers編集部:北海道に特化したクラウドファンディングサイト『COTAN』で現在クラウドファンディングを行っている、『北ピクルス』はオリジナル製品ですよね。この商品が誕生した経緯や、こだわったポイントを教えてください。

中川さん:うちで通販をしている農家さんから北海道“らしい”野菜以外の販売の難しさは常々聞いていました。関東でもつくっているニンジンや大根をわざわざ送料のかかる北海道から買う人は少ないと。農家さんは丹精込めて何10種類も農作物をつくっているので、何とか力になれないかとずっと思っていました。

きっかけになったのは、トウモロコシの販売をさせて頂いている農家さんから鳥につつかれたトウモロコシが全部売れない話を聞いたこと。ほんの少し規格から外れただけで「これも売れないの?」と。なんとか付加価値をつけて売り物にできないだろうかと考え誕生したのが『北ピクルス』です。ピクルスにしたのはどんな野菜でも新たな命を吹き込むことができるから。新鮮なシーズンに採ってすぐ、つくっています。

北海道Likers編集部:特にこだわっているポイントはありますか?

中川さん:北海道らしさには徹底的にこだわりました。ジャガイモやかぼちゃのピクルスってあまり見たことがないでしょう? あと、ピクルス液の味もひとつひとつ素材に合わせてつくっています。すっぱいだけではなく、甘かったり辛かったり。バニラビーンズがはいっているものもあるんですよ。

うちの管理栄養士いわく、ピクルス液にも栄養が溶け込んでいるそう。ピクルス液まで味わってもらえたら嬉しいなと思っています。リンゴのピクルスなら、炭酸水で割るとおいしいですよ。

魅力的な人々をつなげ、幸せな地域をつくる

北海道Likers編集部:今後挑戦したいことを教えてください。

中川さん:一貫して持っているのは、ローカルにいる人たちの魅力を発信して、そこにいる人たちを幸せにしたいという気持ちです。「ローカルに魅力を!人々に幸せを!」というスローガンを掲げて日々取り組んでいます。

今期で『ロカラ』は、ちょうど5期目に入りました。今後は食から少し大きな範囲で、地域全体の価値を高められる活動をしていきたいと考えています。ドローン空撮や動画編集事業など、地域のクリエイターやエンジニアを巻き込みながら、地元の課題を地元で解決するという事業を通して、地域に還元できることを目指していきたいです。

最終的には、北海道全土で様々なつながりを生み出し、北海道全体で各地の課題を解決できる仕組みをつくっていければと思っています。

北海道Likers編集部:最後に北海道への思いを教えてください。

中川さん:シンプルに大好きな場所です。北海道は大きいですが、北海道愛が強い人が結構多いと思います。またそこが好きだったりして。

これまで北海道に育てていただいたので、最大限、魅力を発信することで、微力ながら北海道に恩返ししていけたらと思っています。

 

―――「一番の魅力は人の魅力だ」と言い切る中川さん。「本当にたくさんの魅力的な方がいて、会うたびに発見や刺激をもらいます」と話します。生産者ひとりひとりと向き合い、真摯に魅力を発信し続けているからこそ、その想いが伝わり、新たなつながりが生まれ、広がるのだと感じました。