情熱の仕事人サツドラ代表「富山 浩樹」が創るEZOCA経済圏(ZOOMインタビュー前編)
富山 浩樹氏は、北海道に200店舗以上を持つ、ドラッグストアチェーン『サツドラ』を牽引しつつ、地元プロスポーツチームとのマーケティング連携やハイテク企業を次々と立ち上げるチャレンジングな若きリーダーだ。まさに大きな変革期にある今、北海道経済人のトップランナーとして何を考えどこへ進むのか。これまでの挑戦の裏にある想いと、今後の展望に迫ります。
富山 浩樹 / Tomiyama Hiroki
1976年札幌生まれ。札幌の大学を卒業後、日用品卸商社に入社。2007年株式会社サッポロドラッグストアーに入社。営業本部長の傍ら2013年に株式会社リージョナルマーケティングを設立し、北海道共通ポイントカード『EZOCA』の事業をスタートする。
2015年5月に代表取締役社長に就任。2016年より新ブランド「サツドラ」の推進をスタートする。同年8月にはサツドラホールディングス株式会社を設立し代表取締役社長に就任。その他 AWL株式会社 取締役 / 株式会社コンサドーレ取締役を務める。
「地域をつなぎ、日本を未来へ。」のコンセプトのもと、店舗や地域の資産を活かして新たな課題解決型ビジネスの創造を目指す。
「サツドラ」2代目として覚えた危機感が、さらなる挑戦の原動力に
北海道Likers編集部:札幌の大学をご卒業後、福島や東京など北海道外に出られてお仕事をされていたとのこと。一度、道外に出られて北海道に戻ってこられたときに、どのような気持ちでしたか。
富山さん:僕は2代目ですが、もともと将来的に会社を継ごうと考えていたわけではなかったので、「戻らないか」と誘いを受けてから1~2年は正直迷っていました。しかし、せっかく機会があるのだから、チャンスを生かして挑戦しようという想いで戻ってきました。
北海道Likers編集部:入社後、『EZOCA』事業の展開など、多角的な事業展開を進めていらっしゃいます。いつからこのような構想を持たれていたのですか。
富山さん:入ってからですね。中間流通業の営業マン時代の経験や『サツドラ』の店舗で勤務での体験から、このまま変わらないと生き残っていけないという危機感を強く抱いていました。
北海道Likers編集部:具体的にどんなところに危機感を感じていたのですか。
富山さん:当時の『サツドラ』は、個店から約100店舗の規模まで創業者が大きく成長させていました。北海道はドラックストアの寡占化が進んでいるのですが、アメリカのチェーンストアの事例を見て、これからさらに寡占化が進むだろうと感じました。その中で、『サツドラ』は北海道エリアでは強くても、全国展開しているドラックストアと比べると規模が小さい。そういった意味で、このままでは生き残っていくのが難しいだろうと考えていました。
北海道Likers編集部:生き残るための戦略としてどんなことを考えられたのでしょうか。
富山さん:全国規模のチェーン店ができないことは何かと考えたときに、“地域に特化すること”が我々の勝ち筋ではないかと思いました。
大きな軸は2つあります。1つ目は王道ですが、『サツドラ』のブランドを確立し、通常のドラックストア以上に生活利便店化していくことです。
ただ、これを実現するには時間もお金もかかります。だから2つ目の軸として、株式会社リージョナルマーケティングを立ち上げ、地域共通ポイントカードの『EZOCA』事業をはじめました。北海道をひとつのエリアとしてとらえ、面でお客さんとの関係性を構築していく。8年前くらいのことですが、今もその方針をもとに事業を進めています。
北海道世帯の60%以上が加入するポイントカード「EZOCA」
富山さん:おかげさまで『EZOCA』は会員数が190万人弱、大体世帯カバー率で言うと6割以上の世帯が持っているカードになりました。加盟企業も120社、700店舗まで増加し、『サツドラ』はじめ、スーパーマーケットやホームセンター、飲食店、クリーニング店など、さまざまな業種の企業さんと一緒に取り組むことができています。
だからうちは『サツドラ』というドラックストアとしては北海道のエリアの中でもまだ小さいですが、『EZOCA』経済圏という面で考えるとお客さまの数を増やすことができました。
感情を動かす「子育て」と「スポーツ」を軸にコミュニティをつくる
北海道Likers編集部:『EZOCA』は、どういう点が道民の方々響いていると思いますか。
富山さん:『EZOCA』の事業構想は、本当にシンプルな丸を2つ書いたことからはじまりました。小さい丸とそれを囲む大きい丸を書いて、小さい丸のところが『EZOCA』。ポイントカードなので、そのベネフィットは、お得さや便利さ。その周りに大きな丸を書いて、『EZO CLUB』っていう概念を作りました。『EZO CLUB』は、繋がるとか楽しいというベネフィットを提供するもの。
この事業を始めた当時は、共通ポイントカードが日本中で急速にシェアを伸ばしていた時期。お誘いも受けましたが、我々は地域で、自分たちでやろうと。ここでの差別化という意味で、『EZO CLUB』というある意味“無形”なんだけどもコミュニティ的に繋がっていくことを実現しようと思ったんです。
実は『EZOCA』って正式名称は『EZO CLUB POINT CARD』略して『EZOCA』なんですよ。『EZO CLUB』っていう概念の方が大きくて、緩く広く広がっていて、その中の道具として『EZOCA』というポイントカードがありますという立て付けです。
『EZOCA』ではお得と便利を、『EZO CLUB』では、違う感情のベネフィットを出そうと考えました。エンゲージメントが高そうなことをバッと並べてディスカッションした時に、感情を動かすのは「スポーツ」と「子育て」だろうと。ここをまず徹底的にやろうという戦略を立てました。子育て中のママさんのコミュニティにどんどん声をかけて『EZO CLUB』にタグ付けしてもらいました。ママさんコミュニティの集会場所がないとか宣伝ができないなどのニーズを拾って、『EZO CLUB』コミュニティルームとして空いている場所をご提供したりだとか。コミュニティリーダーなども決めて、輪を広げてきました。今もクラブコミュニティの半分以上はママさんコミュニティですね。
「コンサドーレEZOCA」の成功でシナジーが生まれた
北海道Likers: もう一つの軸、スポーツについては。
富山さん:『コンサドーレEZOCA』を作りました。『EZOCA』を使えば使うほどコンサドーレに還元できるというモデルにして、還元額はポイントを使ったお店さんに払っていただく。我々は、コンサドーレさんとは単なるスポンサーではなくマーケティングパートナーとして業務提携したんです。これがブレークポイントになりました。
お客様は、カードを持つことで常にコンサドーレを意識します。普段の買い物を『EZOCA』の加盟店にするだけでコンサドーレさんに貢献できるんだ、というポイントに感情がのった状態にするということをやったんですね。そのときお客様に痛みはないんですよ。自分のポイントを差し出す訳じゃないので。買った分の0.5%を企業側が負担しますというだけなので。
自分の痛みを、ポイントを差し出してまで応援する人っていうのは相当コアな人です。そこまでじゃないけど行動をちょっと変えるだけで応援できるってなればもっとファンの裾野が広がります。そこでファンが増えて、コンサドーレさんにとってもうれしい。「もうサツドラでしか買い物しない」とか言ってくれる人もすごく増えました。スポーツのエンゲージメントの高さっていうのを凄く感じましたね。
そして、このスポーツを軸に、企業間のつながりが生まれることになる。インタビュー後半はBtoBとリジョナリーマーケティング事業について語っていただきます。《後半へ続く》