
30分で完売!元ITエンジニアら5人が赤井川村の“耕作放棄地”を再生。「赤井川コーン」の挑戦
札幌から車で約60分、新千歳空港から約90分。“日本で最も美しい村”連合にも加盟し、太古の巨大噴火によって生まれたカルデラ盆地が広がる北海道赤井川村。山々に囲まれたミネラル豊富な土壌と、夏でも夜は長袖が必要なほどの昼夜の寒暖差は、旨味と甘みの詰まった農産物を育む絶好の環境です。
この豊かな大地で2026年夏、これまで農業とは無縁のキャリアを歩んできた全国からの移住者5人が、耕作放棄地を再生させて育て上げたブランドとうもろこし『赤井川コーン』の初収穫を迎えました。
農薬や化学肥料に一切頼らず、外部の資材に依存しない“1000年続く農業”を目指す彼らの取り組み。なぜ異色のメンバーが集まり、北海道の小さな村で持続可能な農業に挑むのか。初収穫の裏側や独自の販売スタイル、そして『赤井川コーン』という名に込めた地域創生の想いに迫ります。
ITエンジニアからの転身。なぜ異業種の5人は赤井川村の“耕作放棄地”を選んだのか?

『赤井川コーン』の代表を務める枝元正寛(えだもと・まさひろ)さんは、もともと半導体・ITエンジニアとして活躍していた経歴の持ち主です。転機となったのは、コロナ禍でのリモートワーク期間中に出会った週末農業でした。品川区の区民農園で自ら育てた大根を仲間に手渡したときの直接的な喜びから、「顔の見える関係で作物を届けたい」と一念発起。2024年に茨城県で本格的に農業を学びました。

移住先を探す中で見つけたのが、赤井川村の耕作放棄地でした。縄文時代からの歴史が残り、豊かな自然と強烈な昼夜の寒暖差を持つこの土地に魅了され、枝元さんは季節ごとの表情を確かめるため何度も現場に足を運びました。

枝元さんの志に共感し、全国から集まったのは全5名の移住者メンバー。いずれも異業種でキャリアを積んできた面々ですが、「食と暮らしに向き合いたい」という共通の熱意を胸に、赤井川村での新たな農業ライフをスタートさせました。
目指すは外部に頼らない“1000年続く農業”。西オーストラリアで実績を持つプロと挑む有機栽培

彼らが掲げるビジョンは、“外の資源に頼らず、循環の中で完結する持続可能な農業=1000年続く農業”です。

技術指導に当たるのは、西オーストラリア州政府からの要請で東京ドーム約64個分(300ヘクタール)におよぶ大規模農場のオーガニック栽培を成功させ、タイや中国など世界各地で指導を行ってきた熟練の農業指導者。輸入化学肥料や農薬に頼る従来の構造では、国際情勢や供給網の途絶によって持続できなくなるリスクがあるとし、「何百年も続けられる農業の仕組みを持つことこそが未来の食を守る」と語ります。

土づくりには、伊達市に登録されている『水産系堆肥』を採用。ホタテの付着物や畜糞、木質系チップを原料とした自然由来の資材を使い、土本来の力を引き出しています。鹿による幼葉の食害対策や手作業での丁寧な除草など、人の手を惜しまずに注ぎ込むことで、安心・安全でパワフルな作物を育て上げています。
夜明け前の暗闇で手摘みする高糖度コーン「おおもの」。横浜で30分完売を叩き出した理由

栽培している品種は、大粒で非常に高い糖度を誇る最高級スイートコーン『おおもの』です。

とうもろこしの甘みが極限まで高まるのは、一日の中で最も気温が下がる夜明け前。メンバーたちはヘッドライトを頭に装着し、暗闇の畑の中で目印を頼りに手作業で収穫を行います。収穫したコーンは即座に急冷され、鮮度と糖度を閉じ込めた状態で出荷されます。
さらに驚くべきは、その流通・販売スタイルです。一般的な農協や市場流通を通さず、朝採れの鮮度のまま都市部や地元へダイレクトに届ける直売にこだわっています。

横浜市内のオフィスビルに開設した特設ブースでの販売会では、北海道から届いたばかりの朝採れ『赤井川コーン』を求めて行列ができ、用意したコーンが開始わずか30分で完売する大盛況を記録。都内の高級ホテルやレストランのシェフからも「とても甘く、やさしい味で最高」と絶賛の声が寄せられています。
夕張メロンや十勝じゃがいもに続くブランドへ!「赤井川コーン」が描く新しい季節移住型農業

『赤井川コーン』というネーミングには、産地の名前をそのまま全国に届けるブランド化への強い決意が込められています。

北海道という広大なブランドの中に隠れがちな市町村単位の個性を、“夕張メロン”や“十勝のじゃがいも”のように、“赤井川といえばとうもろこし”と誰もが認知する全国区の地域ブランドへと引き上げること。それが移住者である彼らが地域に果たす恩返しであり、地域活性化への道筋です。
また、彼らの働き方そのものも非常に先進的です。夏の収穫期は涼しい赤井川村で農業に没頭し、秋の収穫が終わると本州の生活拠点や本業に戻る“季節移住型の農業スタイル”を実践しています。

令和8年度は約5ヘクタール・6万株からのスタートですが、今後は仲間を増やしながら最終的に約20ヘクタール(東京ドーム約4個分)までの農地再生を目指す構想です。さらに、農園でのとうもろこし狩りやBBQテラスでの交流、手軽に野菜が育つ『バッグ栽培』の普及、将来的な水田再生と籾殻の堆肥循環など、豊かな農村ライフの魅力を発信し続けています。
北海道Likers編集部のひとこと
異業種から飛び込んだ5人の移住者が、北国のカルデラの大地で汗を流し、笑顔で実り豊かなコーンを収穫する姿には胸が熱くなりますね。
単に甘くておいしいとうもろこしを味わうだけでなく、その背景にある“1000年続く持続可能な農業”や地域への愛に触れることで、日々の食卓がより豊かで愛おしいものに感じられそうです。
赤井川村の豊かな自然が育んだ『赤井川コーン』。ぜひ現地や直売でその圧倒的な鮮度と甘みを体験してみてください!
文/北海道Likers 画像・参考/赤井川コーン
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