喜茂別町から届く、小麦の記憶。ソーケシュ製パン×トモエコーヒーの「食パン」をお取り寄せ

2026.10.23

日本有数のパンの消費量が多い都市・京都に生まれ育った、パン大好きライターのみやこです。これまで200店舗以上のパン屋さんを自らの足で巡り、おいしいパンとの出会いを大切にしてきました。そんな筆者が今、ときめいているのが、北の大地から届く北海道のパンです。

パン激戦区・京都で培ったパンへの愛情と視点を胸に、自宅にいながら北海道の豊かなめぐみを味わう。連載『パン好きライターみやこの北海道パンLikers』では、お取り寄せでしか味わえない感動をひとつずつ丁寧にお伝えしていきたいと思います。

さて、今回お取り寄せしたのは、羊蹄山の麓・喜茂別町(きもべつちょう)に工房を構える『ソーケシュ製パン×トモエコーヒー』の『おためし薪窯パンセット』です。

京都のパン好きが惹かれた、羊蹄山の麓で薪窯が焼き上げる素朴なパン

京都には、ヨーロッパの伝統を汲んだハード系を焼く名店や、石窯でじっくりと焼き上げるこだわりのお店が数多くしのぎを削っています。そんな舌の肥えたパン好きが集まる京都で育った私ですが、北海道・喜茂別町にある『ソーケシュ製パン』の存在を知ったとき、胸が強く高鳴りました。

蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山の麓、冬には深い雪に包まれる寒冷な土地で、自ら築いた薪窯に薪をくべ、レンガに蓄えられた余熱だけでパンを焼く。現代のパン作りでは効率化のために省かれがちな“昔ながらの製法”に愚直なまでに寄り添う姿勢は、広島の名店『ドリアン』での出会いを原点にしているのだそう。

「北の大地で薪の熱を浴びて焼き上げられたパンは、一体どんな表情をしているのだろう」——その好奇心が抑えきれず、迷わずお取り寄せのボタンを押しました。

冷凍便の冷気の中に閉じ込められた、薪の香ばしさと温もりあふれる栞

段ボールを開けると、ひんやりとした冷気とともに、透明な袋に大切に包まれたパンたちが姿を現しました。

届いたパンたちと説明書
画像:みやこ

鼻を近づけると、冷凍状態であるにもかかわらず、薪窯特有の燻したような芳ばしい香りと、発酵の澄んだ気配がふわりと鼻をくすぐります。

ソーケシュ流のトースト方法や保存法が記された説明書
画像:みやこ

パンに添えられていたのは、温かみのある手描きのイラストが描かれた一枚の説明書。そこには、パンをおいしく保つための冷凍保存法だけでなく、“食パンは親指の幅”“カンパーニュは人差し指から小指の幅”といった厚さの目安、さらにはフライパンと霧吹きを使った“ソーケシュ流トースト”の手順が丁寧に綴られていました。

遠く離れた京都の食卓へ、一番おいしい状態で届けたいという店主の誠実な想いが、この紙一枚からじんわりと伝わってきます。

北海道十勝産小麦と薪窯の蓄熱が織りなすストーリー

ソーケシュ製パンのパンを手にして驚かされるのは、手の中でずっしりと主張するその密度の濃さです。

パンブロンの原材料表示ラベル
画像:みやこ

パッケージ裏の原材料ラベルを見てみると、全粒粉、小麦粉、パン酵母、食塩という、これ以上ないほど潔くシンプルな配合。余計な油脂や添加物は一切使われていません。

公式サイトを紐解くと、使われているのは北海道十勝産の小麦粉やライ麦粉。それを自家製酵母(ルヴァン種)でゆっくりと発酵させ、薪を燃やし尽くした後のレンガ窯の余熱でじっくりと焼き上げています。

電気やガスの窯と違い、水分をギュッと閉じ込めながら芯まで熱を通す薪窯だからこそ、この驚くほどの重厚感としっとりした質感が生み出されるのだと、手元のパンを眺めながら深く納得しました。

実食! 五感を刺激する薪窯パン

今回は、おためし薪窯パンセットの個性豊かな4つのパンをじっくりと味わいました。

もっちりとした高密度のクラムが魅力の食パン断面
画像:みやこ

まずは、セットの中でもひときわ異彩を放っていた『食パン』から。一般的なふわふわとした山型食パンを想像してナイフを入れると、そのしっかりとした弾力に驚かされます。

気泡を抱き込んだ断面は、まるでカンパーニュのよう。口に含むと、通常の食パンよりもハード系に近い、もっちり・むっちりとした強いコシと密度を感じます。薪窯の火入れによってしっかりと焼き込まれたクラスト(外皮)の香ばしさと、噛みしめるほどに押し寄せる北海道産小麦の豊かな甘み。トーストすると外側がザクッと小気味よい音を立て、内側のむっちり感との見事なコントラストに思わずため息がこぼれます。

気泡が美しく入ったパンブロンの断面
画像:みやこ

続いては、全粒粉の豊かな風合いが楽しめる『パンブロン』。スライスすると、大小の美しい気泡が艶やかに光っています。

鼻を抜けるのは、自家製酵母由来の穏やかで上品な酸味と、薪窯の力強い薫香。口に運ぶと、クラムは驚くほどみずみずしく、ぷるんとした水分をたたえています。噛むたびに全粒粉の素朴なコクと甘みが舌の上に広がり、塩気が小麦の輪郭をキリッと引き締めてくれます。毎日食べても決して飽きることのない、主食としての圧倒的な説得力を感じました。

大粒のドライイチジクとオレンジピールが詰まった断面
画像:みやこ

3つ目は、お取り寄せならではの贅沢感を味わえる『イチジク・オレンジピール』。断面には、濃密な琥珀色のドライイチジクが惜しげもなく顔を覗かせています。

口に入れた瞬間、イチジクのプチプチとした種の食感とともに、凝縮された果汁の甘みがじゅわりと弾けます。そこにオレンジピールのほろ苦さと清涼感ある香りが重なり、どっしりとした全粒粉生地の滋味深さと見事に調和。甘みと酸味、そして薪窯の香ばしさが幾重にも重なり合う、贅沢な味わいです。

レーズンとクルミがぎっしり詰まった断面
画像:みやこ

最後は、王道の組み合わせである『レーズン・クルミ』。スライスした断面のどこを切っても、大粒のクルミと瑞々しいレーズンがぎっしりと敷き詰められています。

カリッと心地よい歯触りのクルミのコクに、噛むほどにジューシーな甘酸っぱさを放つレーズン。それらを包み込む力強いクラムが具材の個性をどっしりと受け止め、絶妙な一体感を生み出しています。薄めにスライスしても一口ごとの満足度が非常に高く、薪窯の余熱でじっくり火が入ったナッツの香ばしさが後を引きます。

プロのアドバイス:最高のリベイクと「京」のペアリング

薪窯パンのポテンシャルを最大限に引き出すなら、同封のリーフレットで推奨されている“フライパンでの蒸し焼きリベイク”が一番のおすすめです。スライスしたパンの表面に霧吹きで軽く水を吹きかけ、弱火にかけたフライパンにフタをしてじっくり蒸気を閉じ込めながら温め直すと、オーブントースターだけでは出せないクラストのバリッとした香ばしさと、クラムの吸い付くようなむっちり感が見事に蘇ります。

この力強いパンたちに合わせるなら、もっちりとした食パンに有塩発酵バターをとろりと溶かし、香ばしい焙煎香が薪窯の薫香と美しく共鳴する京都・一保堂茶舗の『極上ほうじ茶』を合わせたり、濃厚なイチジクやレーズンのパンにクリーミーなマスカルポーネを塗り、京都名物・原了郭の『黒七味』をひとふりして奥深い山椒の刺激とともにワインや深煎り珈琲と味わうなど、薪窯の素朴な滋味に京都の伝統の香りをひとさじ添えるペアリングが驚くほどよく合います。

店舗情報

店名:ソーケシュ製パン×トモエコーヒー
住所:北海道虻田郡喜茂別町字中里185-1
お取り寄せした商品:おためし薪窯パンセット
オンラインショップ:https://sokeshu.com/
※パンの種類やセット内容は仕込み状況や季節によって変動する場合があります。詳細は公式オンラインショップをご確認ください。

ライター・みやこのひとこと

羊蹄山の麓で、薪を焚き、粉をこね、自然のリズムとともに焼き上げられるソーケシュ製パン。

スライスしたパンをフライパンで温め直した瞬間、立ちのぼる薪の香ばしさに包まれ、京都の自宅にいながら喜茂別の澄んだ風と薪窯の温もりを肌で感じることができました。

噛みしめるほどに広がる北海道産小麦の力強い滋味を、ぜひ皆様のご自宅の食卓でもゆっくりと味わってみてください。