幼虫の姿がかわいいと人気!貴重な国蝶「オオムラサキ」が観察できるスポット(栗山町)
空知地方の南部に位置する栗山町。日本遺産『炭鉄港』の構成文化財である「小林酒造建造物群」や動物たちと触れ合える「栗山公園」を有し、自然豊かで歴史のある町です。
その「栗山公園」のすぐ近くに「ふるさと いきものの里 オオムラサキ館」があります。日本の国蝶で切手にもなっている『オオムラサキ』にまつわる展示などがあるということで取材に伺いました。
栗山町の自然を学べる施設「ふるさと いきものの里 オオムラサキ館」
「ふるさと いきものの里 オオムラサキ館」は「栗山公園」内にあった「ファーブルの森観察飼育舎」と現在の場所にあった地域の方たちが集う「ふれあい交流館」が1つになり、2018年7月にオープン。自然と人間の共生をテーマにした学習や交流活動の拠点施設となっています。
まずは『オオムラサキ』にまつわる展示から見ていきましょう。
国内や中国に生息する『オオムラサキ』の標本が展示されていて、地域によって少しずつ特徴が違うことがわかります。
ほかには栗山町に生息する生き物の展示コーナーも。両生類や魚類など、30種以上の生き物が展示されています。
冬期はサケの卵を孵化させて稚魚を展示。その数なんと1万個! 取材に伺ったときはお腹に養分の入ったオレンジの袋が付いていました。この稚魚は毎年4月上旬の土曜日に夕張川に放流し、ここ数年で遡上数が増加していることが確認されています。
館外には餌台が設置されており、野鳥の観察もできます。『ヤマゲラ』、『シジュウカラ』、取材時に撮影できた『ヤマガラ』などが多く見られるそうなので、双眼鏡で探してみてください!
冬期は越冬期間となってしまうため見ることができませんが、春から秋の期間には観察飼育舎で蝶が飛んでいる様子を間近で観察できる貴重な施設です。
栗山町が生息の北東限!「オオムラサキ」の生態とは
『オオムラサキ』が北海道で生息しているのは石狩市と札幌市、そして栗山町など。栗山町は『オオムラサキ』の生息場所として日本の北東限とされています。
「ふるさと いきものの里 オオムラサキ館」では年間を通してその生育の様子を観察することができます。どのようにして蝶になっていくのでしょうか。
産卵は7〜8月ごろ。1羽で10~150個ほど産みます(多いもので200個近く産むものもいるそうです)。10日ほどで卵が孵化して幼虫となり、4回ほど脱皮をして10月ごろに越冬幼虫の姿へ。
取材した2月は越冬時期の真っ最中。越冬の様子も観察することができます。通常積もった雪の下にある落ち葉に隠れているので、葉っぱとともにケースに入れられていました。
写真中央の2本の触覚が見えるのが越冬幼虫。落ち葉と同じような色になって身を隠しています。とても小さくて驚きました。
そしてアップで撮らせていただいたのがこちら。この色と顔がコアラのようでかわいいと人気なのだそう!
半年ほどの越冬期間を終え、5月上旬ごろからは再び動きが活発に。餌をたくさん食べて太っていき、6月ごろには大人の小指くらいにもなります。緑色の幼虫の姿もとってもかわいいですね!
館内にはあちこちに幼虫のイラストがあり、写真も展示されています。
大きく育ったあとは、さなぎとなり、蝶となります。羽を広げると7〜9cmほどの大きさで、蝶として生きられるのはわずか2週間だけ。その期間に産卵し、また新しい命が生まれていくんです。
栗山町の「オオムラサキ」を守る活動
栗山町で『オオムラサキ』が発見されたのは1985年。小学校の副読本を制作するために資料を探していたところ、『オオムラサキ』が飛んでいるのが偶然発見されました。幼虫の餌となるエゾエノキの木が御大師山に1本だけあったそう。この木がなければ『オオムラサキ』は蝶となることができません。
そこで最初に発見した方が、『オオムラサキ』が栗山町で生き続けられる環境づくりが必要だと、その翌年に「栗山オオムラサキの会」を発足。絵本の制作やエゾエノキの植林などが行われていました。
栗山町では『オオムラサキ』の発見をきっかけに、自然環境を守る取り組みを積極的に行い、栗山町に生息する生き物について知ってもらおうと子ども向けのイベントも行っています。
「オリジナルの昆虫カードを作成して配布するなど、子どもたちが楽しみながら学んでくれるような場所にしたいです」とスタッフさん。
1年を通してたびたび訪れ、生育の過程を学んでみるのも面白そうですね!
<施設情報>
■ふるさと いきものの里 オオムラサキ館
■住所:北海道夕張郡栗山町桜丘2丁目38番地5
■電話番号:0123-72-3000
⇒開館時間など詳細はこちら
【画像】ふるさと いきものの里 オオムラサキ館