「いけだワイン城」ツアーでより味わい深く!生誕60周年のワインから知る町の歴史【池田町】
北海道では数多くのワインが作られていますが、その中でも1963年、全国で初めて自治体経営によるワインが誕生しました。その名は十勝・池田町で製造されている「十勝ワイン」です。来年(2023年)で生誕60周年。
今回は、2020年にリニューアルオープンした「いけだワイン城」の“ワイナリーツアー”に参加。苦難の連続だった町の歴史を学びながら、「十勝ワイン」の魅力に迫ります。そして、ワインだけでなく、4階にあるフードやスイーツが充実したレストランもご紹介! アルコールが飲める人も飲めない人も、最後までご覧くださいね。
町のシンボル「いけだワイン城」は仮の名前?
「十勝ワイン」で有名な池田町のシンボルといえば「いけだワイン城」。今回の取材はワインをいただくため、JRで池田町を訪問。帯広駅からだと特急で約16分、普通列車だと30分程度で到着します。
駅のホームを降りると、目の前には「いけだワイン城」が! 近さに驚きです。池田駅から徒歩で10分ほどの距離。駅前にはタクシー乗り場がありますが、今回は歩いて目的地へ向かいました。
1974年に建設された「いけだワイン城」。もともとは醸造施設でしたが、20年ほど前に工場を移設後、観光スポットとして多くの人に親しまれました。2020年6月には、今まで以上に“お客さま目線”を意識した改装が行われ、リニューアルオープンしています。
ちなみに「いけだワイン城」は正式名称ではありません。正式には「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」。お城のような外観から「ワイン城」と呼ばれることになったそう。
ワイナリーツアーに参加!ワインは町の歴史
「いけだワイン城」では、土日祝日限定で1日2回『ワイナリーツアー』を開催しています。各回の定員は10名。参加費は一人2,000円(テイスティングを希望されない方は無料で参加可能)。開催日の2日前までの予約が必要です。
今回のツアーガイドは、ワイン専門指導員の内藤彰彦さん。元「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」の所長という経歴の持ち主。ときにユーモアを交えながら、「十勝ワイン」の歴史について教えてくれます。
城内の裏側にあるC倉庫ではスパークリングワインの製造方法や、池田町でのブドウ栽培の歴史が学べます。
フランスのシャンパン同様、瓶内二次発酵製法で作ったスパークリングワインを日本で初めて作ったのが同所。1985年のことです。
池田町でワイン醸造を始めたのは、1963年。1952年の第一次十勝沖地震、そして2年連続の冷害により池田町は財政危機を迎えます。この困難を克服するため町長になった丸谷金保氏。丸谷氏は「池田町には山ブドウが自生できるのだから、ブドウ栽培もできるはず」と考え、1960年に農村青年によって「ブドウ愛好会」を結成。ゼロからブドウ栽培に取り組みます。
池田町でブドウを栽培する一番の課題は、“冬の寒さ”。ブドウ樹が寒さで枯死してしまうため、冬は土をかけ保温する対策を取りました。しかし、春になり土を取り除く労力は相当なもの。そのため、寒さに負けない品種を開発するべく、さまざまな品種との交配が行われます。その数は21,000種に及びます。
「十勝ワイン」の一番の目的は、“ブドウ栽培による農業振興”。だからこそ土を取り除く労力や、数多くの品種改良などの努力を惜しむことなく継続しているのです。その努力が身を結び、冬の寒さを乗り越える『清舞』や『山幸』という「十勝ワイン」の将来を担う品種が誕生しました。
ワイン城内の地下熟成庫にあるワイン樽。木目からわずかな空気が出入りし、緩やかに酸化することでワインの熟成を深めます。室温は15度に設定されていて、夏はひんやり、冬は暖かく感じるのだそう。
1階にあるブランデー蒸留室。ワイン熟成庫同様に、通常でもガラス越しに見学は可能。ただ、ワインやブランデーの香りを感じられるのは、『ワイナリーツアー』ならでは!
いよいよお楽しみのテイスティング
地下熟成庫やブランデー蒸留室には試飲コーナーがありますが、現在はコロナ対策として、2階にあるライブラリでテイスティングを行っています。3種類のワイン・ブランデーとおつまみが味わえます。
まずは、1杯目スパークリングワイン『ブルーム 白』。辛口でややパンチのある味わい。
2杯目は赤ワイン『山幸』。「十勝ワイン」の中でも人気のある商品です。赤ワイン独特の渋みはやや控えめで、すっきりとした酸味が飲みやすい一品。
3杯目は、一切の加水をしていない『ブランデー原酒』(チェーサー付き)。濃厚な香りが口の中をただよいます。アルコール度数が59%なので少しずつチェーサーを飲みながら、味わってくださいね。
『ワイナリーツアー』で商品に対しての知識が深まっているため、テイスティングするときも感慨深い気持ちに。知らないで味わうよりも、知ることで味わいがより一層引き立つのかもしれません。
「いけだワイン城」では、平日の曜日限定で無料の“ミニワイナリーツアー”も開催しています。テイスティングはありませんが、ワインやブランデーに対する知識を深めたい方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
ショップやレストランも魅力的!
1階のショッピングエリアでは数多くのワインを取り揃えています。ワインアドバイザーがいるので、ワイン選びに悩んだときは相談することも可能。また、有料の試飲コーナーもあり、自分で味を確かめられますよ。
ワイン以外にも特産品やスイーツの販売も行っています。アルコールが飲めない人へのお土産選びもできますね。
4階にあるフードカウンターとレストラン入口。ワイン樽を使用したテーブルや木を使った装飾が印象的です。
「いけだワイン城」は小高い丘にあるので、景色を眺めながら食事をいただくことができます。
ツアーガイドの内藤さんおすすめの『本日のマカロン』300円(税込)をいただきました。取材時は、“ピスタチオ”のマカロン。しっとりしていて濃厚なお味。そのマカロンと共にいただいたのが、デザートワインの『シルモ』700円(税込)。発酵途中のワインにブランデーを加えた、深い味わいの中にもブドウの糖分を感じる甘口ワインです。
スイーツのほかにも、十勝牛を使用したお肉料理やパスタ類などのお食事メニュー、ワイン・ブランデーに合うおつまみ類、ソフトドリンクも充実。本格的な食事からカフェメニューまで、いろんな用途で使いやすいレストランなので、近くにお越しの際は利用してみては?
リニューアル前のワイン城は何度か訪れたことはありましたが、今回、『ワイナリーツアー』に参加することで、「十勝ワイン」と共に歩む池田町の歴史を初めて学びました。出来上がるまでの歴史に触れることで、自分の中でただの“商品”から少し“特別な存在”になるものなんですね。
歴史のある「いけだワイン城」だからこそ体感できる『ワイナリーツアー』。おすすめします!
<施設情報>
■いけだワイン城(池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)
■住所:北海道中川郡池田町字清見83-4
■電話番号:015-578-7850
⇒営業時間など詳細はこちら
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