
今シーズンの注目レースは?予想新聞編集長がやさしく解説【ばん馬の見方、プロが教えます。#1】
北海道帯広市にある『帯広競馬場』で開催される『ばんえい競馬』は、世界で唯一、体重が1トンほどの巨大な“ばん馬”たちが重いソリを引いてゴールを目指すレースです。
今回スタートする新連載『ばん馬の見方、教えます。』では、日ごろから『ばんえい競馬』に精通する専門家が、レースの見どころや今シーズンならではの展開、注目ポイントなど、“今”のばんえい競馬について紹介していきます。
第1回は、『ばんえい競馬』の専門紙『ねっとばんばキンタロー』編集長・板垣雅己さん。長年ばんえい競馬を見守ってきた“板垣さんならではの視点”で、その魅力や楽しみ方をお届けします。
まず知っておきたい!「ばんえい競馬」の基本と魅力

『ねっとばんばキンタロー』編集長・板垣雅己さん
画像:ばんえい十勝
こんにちは。予想紙『ねっとばんばキンタロー』の板垣です。
競馬に興味を持ったきっかけは、テレビで中央競馬を観たことです。その後、30年以上前になりますが、当時は私の地元・北海道旭川市でもホッカイドウ競馬やばんえい競馬が開催されており、当時勤めていた会社の先輩や同僚と一緒に競馬場へ通っていました。
ばんえい競馬との関わりは、競馬関係者と知り合いだった先輩から、ばんえい競馬に関わる仕事を紹介してもらったことがきっかけです。その後、競馬の存続危機などさまざまな出来事を経て、2017年からは予想紙『ねっとばんばキンタロー』を立ち上げるに至りました。

画像:ばんえい十勝
『ばんえい競馬』はテレビで見る平地競馬とはまったく違う、北海道帯広市だけで行われる唯一無二の競馬です。馬は大小二つの山(障害)がある直線200メートルのコースを『ばんえい重量』と呼ばれる既定の重量を積んだソリを引いてゴールを目指します。
ばんえい競馬は競走なのにレース中に止まってしまう不思議な競馬です。重い重量を引く馬は200メートルを一気に走り抜けることはできないため、第一障害と第二障害の道中で脚を止め、息を入れて再び歩き出します。
道中では馬の能力を最大限に引き出すため、ソリの上から巧みに馬を操る騎手の裁量に委ねられます。ライバル馬との位置関係や騎手同士の駆け引きは、ばんえい競馬の見どころの一つでもあります。
難関の第二障害では馬と騎手が呼吸を合わせ一気に駆け上がります。障害が得意な馬はすんなり下りますが、苦手な馬は坂の途中で止まってしまうこともあります。なんとか第二障害を越えた馬はスタミナの続く限り直線を歩き続けます。
騎手は馬を励まし、馬はその期待に応えようと必死に前に進みます。ばんえい競馬ではソリの後端がゴール線上を通過した瞬間にゴールと認められます。
勝利目前の馬がゴール線上で止まって最下位となることも、人気薄の馬が止まった馬をかわしてゴールすることもあるかもしれません。勝利の瞬間まで目を離せないのがばんえい競馬です。
4月~5月は「ばんえい競馬」の“始まりの季節”
『ばんえい競馬』は、4月中旬に開幕して翌3月中下旬で1シーズンを終えます。
ばんえい競馬で馬が引くソリの『ばんえい重量』は開幕当初が最も軽く、開催を重ねるごとに増量されます。ばんえい競馬の予想をする上で、ばんえい重量は重要な項目ですが、最も重量が軽いこの時期はスピードのある馬が予想の狙い目となります。

馬場水分表示画面
画像:ばんえい十勝
『馬場水分』も予想に重要な項目です。馬場水分とはコースの砂に含まれる水分のことで、馬場水分の数値が高い(軽馬場)ほど走破タイムが速くなります。逆に馬場水分が少ない(重馬場)の場合はソリと砂の摩擦が大きく走破タイムは遅くなります。
馬によってスイスイ進める軽馬場が得意の馬もいて、急な天候の変化によって馬場水分も変化するため、注意が必要です。

画像:ばんえい十勝
また、他の平地競馬と同様にばんえい競馬にも“格付け”があり、獲得した賞金額が高い順にオープン、A1、A2、B1、B2、B3、B4、C1、C2のクラスに分けられます。
高いクラスほどレースのレベルが高いと言えますが、ばんえい競馬では新シーズン開幕時に過去3年間に獲得した賞金額でクラスが再編成されます。
昨季まで上のクラスで走っていた力のある馬が開幕では降級してスタートする場合があり、そのような馬は予想の狙い目となります。
競馬新聞には数レース前の馬柱(過去成績)がありますので、その馬柱で過去のクラスを確認することができます。

能力検査トップタイムのばん馬
画像:ばんえい十勝
さらに、この時期は能力検査に合格した2歳馬がいよいよ競走馬としてデビューする『新馬戦』の時期でもあります。
レース実績がなく予想は能力検査のタイムで比較するしかありませんが、好時計で上位合格した馬は信頼度がグンと高くなります。
2歳馬はまだまだ成長途上なので、お気に入りの新馬を今のうちに見つけて一緒に成長を見届けるのは競馬の醍醐味といえるかもしれません。

“現役最強馬”の呼び声高いメムロボブサップ
画像:ばんえい十勝
今、ばんえい競馬には不動の現役最強馬・メムロボブサップという存在がいます。
昨季はばんえい競馬最高峰の『ばんえい記念(BG1)』を勝利するなど11戦10勝2着1回と完璧な成績で他馬を圧倒しました。
今季9歳ですが出走すればまだまだ中心となりそうで、その地位を脅かす存在の出現が期待されます。
直近の重賞レースを振り返り

画像:ばんえい十勝
“重賞レース”とは、通常行われる“特別レース”に比べ、賞金が高額でレベルの高いメンバーで構成される重要な意義を持つ格式高いレースのことです。
『ばんえい競馬』では重賞レースに1~3までのグレードがあり、それぞれBG1、BG2、BG3と表記され、BG1が最も賞金・格式の高いレースとなります。
今季最初の重賞レースは2025年4月27日(日)に『ばんえい十勝オッズパーク杯(BG2)』が行われる予定でしたが、厩舎内に流行した馬インフルエンザの影響で競馬開催が取り止めとなってしまいました。
現時点(2025年5月9日(金)時点)で今後の日程は未定ですが、馬インフルエンザは終息に向かっており再開催が待たれます。
※『ばんえい十勝オッズパーク杯(BG2)』に関しては、2025年5月18日に代替開催されました。
注目の「北斗賞」は?

2024年『北斗賞』の様子
画像:ばんえい十勝
『北斗賞』は、もともとシーズン最初の古馬重賞に位置付けられていましたが、4月に行われる『ばんえい十勝オッズパーク杯(BG2)』の創設によりシーズン2回目の古馬重賞となりました。
7月に行われる『旭川記念(BG2)』の予想を検討するうえで重要なレースとなります。
基本的には実力のある人気馬が上位を占める印象ですが、有力馬のメムロボブサップが出走を回避した昨季は8番人気のクリスタルコルドが勝利し、3連単※が4.6万円の波乱の結果となっており、今回もメムロボブサップが不在となれば混戦必至となる可能性があります。
過去5年では、5・6歳馬が4勝しており、6歳勢では2連覇を狙うクリスタルコルド、キングフェスタ、ツガルノヒロイモノ、5歳勢ではタカラキングダム、マルホンリョウユウなど障害上手で勢いのある馬のスピードに注目です。
※3連単:3連勝単式。1着、2着、3着になる馬の馬番号を着順通りに当てる馬券の賭け式。
初心者が楽しむための「3つのポイント」

令和7年開幕レースの様子
画像:ばんえい十勝
ポイント1:応援できる一頭を探し出す
人間同様に馬にも個性があります。性格がおとなしく穏やかな馬からイライラして気性の荒い馬もいます。パドックや馬場入場での動きをじっくり見ていると何となくその馬の気性が伺えます。
毛色も豊富で黄金色が鮮やかな栗毛やクールな印象の青毛など様々ですので、まずはお気に入りの一頭を見つけてもらいたいです。
お気に入りの一頭が見つかれば同じレースに出走している他のメンバーも分かっていきます。
ポイント2:競走馬としての馬の個性を知る
二つ目のポイントは、一つ目にも通じますが、競走馬としての馬の個性を知ることです。
競走馬は障害を先に下りる逃げ馬や、道中で脚をためて直線で他馬をかわす差し馬などそれぞれ得意の戦法があります。
それぞれの馬の持ち味を知ればレース展開が読めるようになり競馬がいっそう面白くなります。
ポイント3:馬券の購入額は少額から
三つ目のポイントは、馬券の購入額は少額からをおすすめします。
自分のお気に入りの応援馬券を無理のない程度で購入することが、『ばんえい競馬』を長く楽しむ秘訣です。
北海道Likers読者へ
ばんえい競馬の競走馬の先祖はパワーとスタミナが求められる農耕や運搬・移動に使われていた大型馬です。1トン前後の巨体の馬ですが、騎手やファンの期待に応えようと一生懸命にゴールを目指します。
今はばんえい競馬のホームページから辿ればライブを観戦することや、ネットでの馬券を購入することもできます。
地方競馬全国協会のホームページでは過去のレース動画もチェックできます。ぜひ、“ばん馬”たちの頑張りを応援してください。
文/板垣雅己 画像/ばんえい十勝 編集/北海道Likers編集部
連載『ばん馬の見方、教えます。』では、『ばんえい競馬』に精通する専門家が、“今”のばんえい競馬について紹介していきます。次回もお楽しみに。
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