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ずらりと並ぶ170台、すべて1人で集めた!思い出が詰まった「十勝の私設博物館」がすごい

8月19日はバイクの日。夏の北海道はツーリングに最適です。どこまでも高い空のもと、広い大地を走り抜けられる“十勝エリア”は、ライダー憧れのツーリングスポットです。

そんな十勝で立ち寄りたいのが、帯広市大正地区にある「とかち大正二輪館」。館内には、ほかではなかなかお目にかかることができない貴重な車両が約170台も展示されています。しかも、すべて1人の男性のコレクションだというから驚きです。館長の牧野昌徳さんに話を伺いました。

十勝平野に佇む私設博物館「とかち大正二輪館」

十勝平野の真ん中に位置する帯広市大正地区。360度どこを見渡しても畑が広がる北海道らしい風景が旅人たちを惹きつけています。

国道236号を走行して市街地に入ると、「とかち大正二輪館」の看板が見えてきます。「懐かしのバイクモーター展示館」の文字に好奇心を掻き立てられます。

「とかち大正二輪館」は、プロパンや灯油、燃料機器販売を行う「牧野燃料」に併設されています。代表取締役の牧野昌徳さんは、趣味が高じて2011年に私設博物館をオープンしました。

父親の「BSモーター」がバイク好きの原点

牧野さんがバイクに興味を持ったのは、昭和30年代初めの中学生のころのこと。「父親が買ってきた『BSモーター』に衝撃を受けた」と言います。

今ではタイヤメーカー及び自転車メーカーとして知られるブリヂストンですが、かつては自転車に原動機を取り付けた乗り物を製造していました。その第1号は1952年に発売された『バンビー号』で、『BSモーター』はその後継機種として1954年に発売されました*。

*BSモーターを製造している富士精密工業株式会社はブリヂストンの系列会社

エンジンをかけると、動力がゴムローラーに伝わって車輪が動きます。当時の大卒初任給が約1万円に対し、『BSモーター』は2万1,800円で販売されていました。興奮が収まらない牧野さんは、夜中にこっそり『BSモーター』を持ち出して運転し、父親から大目玉を食らったそうです。それでもバイク熱は冷めやらず、ますますのめり込んでいきました。

民家の納屋に眠るバイクに息吹を与える

バイクのコレクションは、ふとしたきっかけから始まりました。

「30代のときに、現在の会社を立ち上げました。当時、燃料の主流だった石炭を配達していると、農家の納屋に年代物のバイクが保管されていることがありました。“今は使っていない”ということが多く、それらを譲り受けては自分で整備したり磨いたりしているうちに、これだけの台数になりました」

40年前からコレクションを始めており、「いつかは展示してみんなに見てもらいたい」と考えていたところ、スーパーマーケットだった現在の物件が売りに出されます。そして2011年、私設博物館「とかち大正二輪館」をオープンしました。

人の暮らしと共に歩んだ名車たち

扉を開くと、ぎっしりとバイクが詰まった空間が現れました。展示されている車両は、レーサーやメーカーのフラッグシップモデルなどではなく、いずれも人の暮らしと共に歩んできた車両ばかり。牧野さんの人生に大きく影響与えた『BSモーター』も展示されています。

ツーリング中に立ち寄ったライダーも「懐かしい!」「初めて見た!」と、興奮を隠せない様子。

展示車両の一部を紹介します。

当時は自家用ジェット機を乗り回す感覚!?

『陸王』は、1930~1950年代にかけて日本で製造・販売されていた、アメリカのハーレーダビッドソンを源流とする“和製ハーレー”です。「三共内燃機」が正式なライセンスを得て生産していました。

展示されているのは『陸王RQ』で、1953年に製造されました。エンジンは空冷4ストローク・サイドバルブV型2気筒746.63ccで、最高出力22馬力を誇ります。

当時の新車価格は34万5,000円。国家公務員の大卒初任給の約7,000円/月と比較すると、4年分相当になります。もちろんローンなどはない時代なので、桁外れの金持ちしか手にすることはできません。

館内には『陸王RT2(昭和28年製)』も展示されています。いずれもオーナーが大切にされていた車両で、「ここに展示すれば、みんなに見てもらえる」と寄贈されました。

かつては多くのメーカーがバイク業界に参入していた

国内でバイクの製造・販売をしている4大メーカーは、ホンダ・カワサキ・ヤマハ・スズキですが、かつては多くのメーカーが参入していました。

前述したブリヂストンのほかに、現在も自転車で人気の丸石や、船外機で圧倒的なシェアを誇るトーハツ、自動車メーカーであるダイハツや富士重工(現・スバル)もバイクを製造していました。

スーパーカブ伝説は、この1台から始まった

乱立するメーカーのなかから抜け出したのが、ホンダとスズキです。

とくにホンダは後発メーカーのため、販売力が課題でしたが、本田宗一郎氏のパートナーであった藤澤武夫氏の尽力により、白いタンクに赤いエンジンの『カブF型(通称・赤カブ)』が大ヒット。およそ15,000軒の自転車店で販売され、日本中に普及したそう。これこそが、現在も世界中で活躍する『スーパーカブ』の第一歩だったのです。

孫との思い出が詰まった牧野さん最後の常用車

ホンダ『レブル』は、牧野さん名義の最後の常用車です。チェコスロバキアのベロレックス製のサイドカーが取り付けられており、お孫さんを乗せて走った思い出が詰まっています。

現在、バイクの公道走行は行っておらず、たまに「とかち大正二輪館」前の駐車場を走る程度だそうですが、「それだけでもバイクは楽しい」と、少年のような笑顔を見せてくれました。

 

展示されているバイクには、それぞれが持つストーリーを感じました。実は、バックヤードには部品が調達できずに眠っているバイクが40台もあるそうです。

「“売ってください”という方もいますが、販売は行っていません。ただし、私が欲しいバイクがあれば買わせていただくかもしれません」

牧野さんのバイク愛に終わりはないようです。

<施設情報>
■とかち大正二輪館
■住所:北海道帯広市大正本町本通り2丁目18番地1
■電話番号:0155-64-5319(牧野燃料内)
⇒営業時間や入場料など詳細はこちら

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