デラックス

受験、病院の付き添い、観光客も…「ぐっすり眠ってほしい」札幌手稲のドミトリーホテル

札幌市手稲区の国道5号線沿いに、一風変わったホテルがあります。全室ドミトリータイプで休憩も可能。トラックが余裕で複数台止められる大きめな駐車場を完備し、比較的都心の近くながらRVパークの認定も受けています。

「ちょい寝ホテル札幌手稲」のオーナー、清田純一郎さんにお話を伺いました。

業界未経験者でゼロからホテル経営を開始

「ちょい寝ホテル札幌手稲」は、札幌の中心部から車で30分ほどの手稲区富丘にあります。オーナーの清田(せいだ)純一郎さんは、開業直前まで新聞社で営業を担当するサラリーマンでした。ホテル業や観光業の経験は一切なし。実は愛娘に対する想いが「ちょい寝ホテル札幌手稲」をオープンさせたのです。

「帯広支社勤務の頃、娘が北大病院で心臓の手術することになりました。付き添いの妻が、病院近くのホテルを予約しようとしたところ、宿泊料金が高いうえに長期の予約がとれませんでした」その経験から「同じような境遇にある人たちのためにホテルを開業できないか」という思いが沸き上がったそうです。

それから数年後、清田さんは札幌本社の勤務となり出身地である手稲区に転居します。同区には多数の医療機関や、北海道立子ども総合医療・療育センター(コドモックル)があるにも関わらず、ホテルはわずか。「この地域でホテルを開業したらどうだろうか?」と眠っていた思いが目覚めました。そしてついに2019年2月“郊外型ゲストハウス風カプセルスタイル”をコンセプトに掲げ、ベッド36台の「ちょい寝ホテル札幌手稲」をオープンしました。

札幌における拠点的宿泊施設

ホテルがある手稲区は札幌中心部をはじめ、小樽・ニセコ方面や、石狩・留萌方面に行くのにも便利。実は手稲インターチェンジから高速道を使えば、全道各地へのアクセスも利便性が高いのです。

カプセルベッドのエコノミー(上段)の広さは、通常のカプセルホテルの1.5倍。

デラックス(下段)は幅153cm、奥行200cm、高さ160cmを誇り、キャリーバッグなどの荷物の収納が可能。

長期滞在者を想定したキッチンも完備し、食器や調理器具も自由に使えて自炊も可能です。

基本的に18~23時までチェックイン可能で、平日と休日前で料金が異なります。

また、宿泊以外に6~10時と、12~16時までの最大各4時間利用できる『朝寝・お昼寝プラン』1,000円(税込)もあり、用途に合わせて多様な使い方ができます。

離陸しようとしたら滑走路が途絶えていた!?

2019年2月1日に開業してからは、通年の手頃な料金設定や想定以上の快適性が評価され、少しずつ稼働率は伸びていきます。順調なペースで繁忙期となる夏季を過ぎ、開業からちょうど1年の「さっぽろ雪まつり」を過ぎた2020年2月、新型コロナウイルスの問題が日本中を駆け巡りました。「開業1年を過ぎ、大空に向かって飛び立とうとしていたのに、離陸前に突然滑走路が途切れたような気分でした」と清田さんは当時を振り返ります。

たびたび発令される緊急事態宣言や、まん延防止等重点措置によって、人々の旅行気運は吹き飛んでしまいました。「1日数名でも、宿泊いただける喜びに勇気づけられました。離陸できないのならいつでも飛び立てるよう、スピードを維持しながら滑走路を延長すればいい」と清田さんは奮起します。

土建業を営む友人の協力を得て未舗装だった駐車場を舗装したり、バイク専用駐車場も作りました。サウナを手作りしたり、RVパークの認定を受けるなど、新しいサービスを取り入れて新たな集客にも乗り出しました。

「近くに就職先として全国屈指の人気病院があるため、就職希望の医学生や看護学生さんが利用したり、運転免許試験場や近隣の大学で行われる資格試験の受験者など、一般旅行客以外の人たちも対象としていたのが功を奏しました。また、リモートワークが増えたことで、家庭内で家族との距離感を保ちたい方が宿泊されるなど、コロナ禍らしい需要も掘り起こすことができました」

「ぐっすりと眠れる」ホテルを目指す

国立精神・神経医療研究センターの研究*によると、日本人の5人に1人が睡眠に悩んでいるそうです。適切な睡眠を取らなければ、日常生活にも悪影響を及ぼします。

「ちょい寝ホテル札幌手稲」の宿泊客からは「自宅よりもぐっすりと眠れた」という声を多く聞くそうです。理由は明確ではないとのことですが、遮光性の高いカプセルベッドや、寝返りがしやすいマットレスを採用しているためだと考えているそう。さらに数種類の寝具を用意したり、お客さんに良眠していただける環境作りに取り組んでいます。

 

清田さんは睡眠についての資格取得を目指しており、将来的には「エビデンスにもとづいたアドバイスができるようになりたい」といいます。「ちょい寝ホテル札幌手稲」にはより良い睡眠環境を求めて宿泊する“ぐっすり寝ホテル”としての側面もあるようですね。

<店舗情報>
■ちょい寝ホテル札幌手稲
■住所:北海道札幌市手稲区富丘3条7丁目1-58
■電話:011-688-8707
⇒場所をマップで見る

*研究内容 / 独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所・精神生理部

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