日本一人口が少ない市の郷土料理「なんこ」って?約60年続く精肉店の味を実食
明治から昭和にかけて、北海道には多くの人が道外から移住しました。「新十津川」や「北広島」など新天地に故郷の地名を付けたり、郷土芸能を継承するなど、各地で独自の文化が築かれています。歌志内市の郷土料理『なんこ』(馬の腸の煮込み料理)も、その一つ。起源や味に迫りました。
日本一人口が少ない市「歌志内市」
北海道・歌志内市は“日本一人口が少ない市”として知られています。
炭鉱景気に沸いた昭和23(1948)年には、人口約46,000人を記録。昭和30年代までそれをキープしていましたが、昭和40年代に炭鉱が相次いで閉山すると人口流出が始まりました。令和4(2022)年10月31日現在の人口は2,800人ほど。65歳以上の人口が50%以上を占めています。
郷土料理「なんこ」は秋田県北部がルーツ!?
馬の腸を煮込んだ『なんこ』は、歌志内の郷土料理です。
秋田県北部では馬肉のことを「なんこ」と呼び、鉄板を熱し馬脂を溶かして馬肉を炒め、野菜とともに味噌で煮る馬肉鍋『ナンコウカヤキ』が食されています。秋田には多数の鉱山があり、坑内で働く人たちの湿気病の予防対策として食べられるようになったといいます。名称の由来は諸説ありますが、家畜の馬を食べることがはばかれたため、南の方角を表す午(うま)から転じて、「南向(なんこう)」=「なんこ」と呼んだと考えられているそう。
歌志内には東北出身者が多く、秋田の鉱山から炭鉱に流れた人たちが故郷の味を持ち込んだと考えられています。
※歌志内市郷土資料館ゆめつむぎ 1997年調べ
歌志内では昭和61(1986)年から、秋田県・男鹿半島の行事である『なまはげ』に独自のアレンジを加えた『歌志内なまはげ祭り』を開催。秋田県との繋がりを大切にしています。
歌志内で約60年続く精肉店が作り方を伝授
歌志内で約60年続く「肉の木村」の木村竜二さんに、『なんこ』の作り方を伺いました。家庭によって調理法は異なりますが、ここでは一例を紹介します。
まずは『なんこ』を沸騰したお湯で1時間ほどゆでた後、一口大に切ります。ガス代がかかるので、圧力釜を使うと時間もお金も節約できます。
臭みを取るために、タマネギを一緒に鍋に入れ、やわらかくなるまで約1時間煮込みます。その後、味噌で味を整えますが、醤油やカレー粉などを使って独自の味を追求してもOK。さらに30分ほど煮込んで完成です。
木村家に伝わる味は、シンプルな味噌仕立て。「ホルモンが好き」という人は、とても気に入ることでしょう。ご飯のおかずにも、お酒のつまみにも合います。
珍しい鍋料理として家庭で作ってみるのもいいですし、キャンプなどアウトドアで食べるのもおすすめです。
「なんこ」が食べられるレストラン「チロルの湯」
「気軽に『なんこ』を食べたい」という方は、道の駅「うたしないチロルの湯」に直結する温泉宿泊施設「チロルの湯」へどうぞ。
レストランで『なんこ鍋定食』を提供しています。食事の後は、旧炭鉱の採掘坑より毎分650リットル湧出している天然温泉でリラックスしてください。
歌志内には国道が通っておらず、鉄道も30年以上前に廃止されました。目立った観光地や飲食店も少ない。そんな歌志市のPRポスターを街角で見つけました。
「そこそこ楽しめて、そこそこ暇をつぶせる。うたしない」
まさかの自虐ネタです。お後がよろしいようで……
<店舗情報>
■店舗名:肉の木村
■住所:北海道歌志内市字歌神36番地
■電話番号:0125-42-2235<店舗情報>
■店舗名:チロルの湯 レストラン
■住所:北海道歌志内市字中村78番地3 「チロルの湯」内
■電話番号:0125-42-5588
■営業時間:ランチタイム 11時30分~14時、アイドルタイム 14~14時30分・16〜17時、ディナータイム17~20時(L.O.19時30分)
■HP:http://tirolnoyu.jp/restaurant.html
【取材協力・画像】歌志内市役所、肉の木村
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