堀田さま1

「ピア21しほろ」を運営する株式会社at LOCAL代表・堀田悠希。士幌町民が集まる道の駅を目指して

民間運営を始めて5年が経った士幌町の道の駅『ピア21しほろ』。その運営を行うため、夫婦で『株式会社at LOCAL』を設立し代表取締役として活躍しているのが、堀田悠希さん。

社長として、幼い2人の子どもを抱える母として、忙しい毎日を送る堀田さんに、道の駅運営の経緯や当時の気持ち、士幌町の良さを伺いました。そして、働く女性なら気になる1日のスケジュールも、特別に公開していただきました。

堀田悠希(ほった・ゆき) 十勝・中札内村出身。札幌の短大を卒業後、JA中札内に就職。結婚を機に士幌町に移住し、夫・隆一さんとご両親と共に『夢想農園』で野菜を栽培。2014年若手女性農業者ネットワーク『農と暮らしの委員会』を設立し、マルシェや勉強会を開催。2016年道の駅『ピア21しほろ』の民間運営が決まり、公募に名乗り出るため『株式会社at LOCAL』を設立。2020年士幌町商工会で62年の歴史ではじめての女性理事に選任される。

支えてくれた町民が喜ぶ施設を目指したい

北海道Likersライターオオイ:2016年、士幌町の道の駅『ピア21しほろ』のリニューアル、そして、議会で民間運営が決まりました。運営事業者公募に応募するため『株式会社at LOCAL』を設立し、運営を任されることになったわけですが、その当時の気持ちをお聞かせください。

堀田さん:道の駅の公募に応募しようとはじめに言ったのは、夫でした。しかし、当時は夫の実家である『夢想農園』が手一杯の状態。応募前の4年間は、自分なりに一生涯続けられる農業を模索し続け、札幌や東京の料理店に営業を行いました。すぐには結果は出ませんでしたが、じわじわと販路がつながり、全国の100件近くのレストランや取引先に野菜を発送するまでになったのです。

そのため、自分の仕事的な余力が足りなく、道の駅の運営は難しいと感じていました。ただ、夫は一度やると決めたことはやり通す人なので、やるしかないと(笑) 将来的に夫は『夢想農園』の社長になる予定だったので、『株式会社at LOCAL』の代表は私がやることになったのがスタートですね。

士幌町野菜

道の駅『ピア21しほろ』では『夢想農園』の野菜も販売中 出典: 北海道Likers

北海道Likersライターオオイ:道の駅の運営というのはリスクもあったと思いますが、不安はなかったのですか?

堀田さん:はじめは運営が難しいかなと思うこともありましたが、やると決めてからはポジティブな状態でした。不安はあまりなかったです。

会社を設立後、運営事業者として選任を受け、新しい道の駅のオープンまで1年間ありました。その期間は、運営を成功させるためには町民の人たちの協力が必要だと考え、どうやったら準備に参加してもらえるかを考えていましたね。

道の駅ベンチ

2022年4月、道の駅のベンチのペンキ塗り親子ボランティアを募集。カラフルに塗り直されたベンチ 出典: 北海道Likers

北海道Likersライターオオイ:今年の4月で5周年を迎えた『ピア21しほろ』。オープン当初はクレームが多かったと聞きました。

堀田さん:オープン時は予想を上回る来場があり、お土産品がなくなり、お客様からお叱りの声をいただくことが多くありました。当時は立て直す時間も取れないまま、たくさんの来場があり苦しい時期でした。そんななか、道の駅に納品してくださる町民出荷者さんに「身体だけは無理するなよ。今は耐えるしかないんだから、寝られるときに寝ておけよ」と、たくさん声をかけていただいたんです。

そのときに、そばで見てくれている人は必ずいる、温かい気持ちを持つ町民の人たちが喜ぶ施設を作らなければいけないと強く感じました。

堀田さんの1日のスケジュールは?

北海道Likersライターオオイ:今年2022年2月に第2子を出産されました。2人の子どもを育てながら仕事をされているので、忙しいのは想像できますが、どのような1日を過ごされているかが気になります。

堀田さん:私もどんな1日を過ごしているのか気になったので、先ほど書き出してみました。

北海道Likersライターオオイ:ありがとうございます! 想像していたよりも睡眠時間がありますね。

堀田さん:在宅ワークをして、その後、娘や息子の食事、お風呂を入れて寝かしつけて、そうすると息絶えたように眠りますね。できることなら睡眠時間を削って仕事をしたいと思っているんですけれど、現在は夜中の授乳を2回しているので、無理はしないようにしています。

ただ、本当はやりたいと思っている仕事が埋もれてしまって、「辛いな」と思いながら過ごすこともあるんです。ほかの女性起業家のSNSで活躍を見て焦ることもありますが、1日何度も「今は無理しない」とお守りのように唱えています。

北海道Likersライターオオイ:4ヶ月の息子さんは曽祖母さんが面倒を見てくださっているんですね。

堀田さん:娘も平日の昼は保育園で過ごしますが、保育園が終わると私が迎えにいくまでの間は、曽祖母の家で過ごします。土日は娘を両親に預けていて、娘には申し訳ないと思いつつも、3拠点生活になっています。そんななか、両親は娘を遊びに連れていってくれることもあり、とても助かっています。私の場合、家族の協力があってこそ仕事が成立している現状です。

おんぶ紐で息子を抱えながら、片付けをしたり、料理をしたり……そんなすごい母にはなかなかなれません。家事に関しては、夫にお任せすることが多いです。夫はオシャレな過ごし方を好むので、午前3時に起きて、アロマキャンドルを焚きながらストレッチをするんですよ(笑)

士幌町の強み、そして道の駅のこれからは?

堀田さまとお二方

農業教員の村上さん(写真左)と松井駅長(右) 出典: 北海道Likers

北海道Likersライターオオイ:士幌町の好きなところ、反対に嫌いなところ(課題)などありましたら教えてください。

堀田さん:後継者不足などの課題はあると思いますが、嫌いなところはないです。反対に好きなところですが、“やる気や想い、行動力があれば協力してくれる地域性”でしょうか。

「道の駅を運営したい!」といって手を挙げましたが、私たちのような当時29歳の若夫婦に任せてくれる町ってなかなかないと思います。できれば行政で運営や管理したいと考えるのが普通です。農協も「こんなことをしたい」というと応援してくれるので、開拓者精神が強い土地柄だったりするのかもしれませんね。老若男女問わずサポートしてくれる、そして、地域の結束の強さが士幌町の強みだと感じます。

北海道Likersライターオオイ:6年目を迎えた道の駅『ピア21しほろ』ですが、これからの展望を教えてください。

堀田さん:スタートは20万人の来場者を予想して建築された建物ですが、おかげさまで2019年には40万人来場者がありました。どんどん商品を作って売場を広げてきましたが、限界があります。そのため、増築または増床を考えています。

ただ、簡単に増築をするというわけではなく、町の人や、道の駅に来場されるお客さまが喜ぶ施設を作りたいです。そのことを忘れずに、現在計画中です。

道の駅「ピア21しほろ」で堀田さんを取材して

今回、堀田さんにお話を伺い、士幌町民のため、そして道の駅の来場者のために、喜ぶことを考え続けてくれる人だと感じました。

取材日も道の駅内にあるカフェのコーヒーを飲みながら、ゆっくりとお話をしている方が2組ほどいました。おそらく地元の方だとお見受けしましたが、地元の人が集まる道の駅というのは素敵ですね。

道の駅『ピア21しほろ』は、士幌町特産品が本当に充実しており、どれも買って帰りたくなるほど魅力的。

そして、カフェはもちろん、しほろ牛が味わえるレストランもあり、飲食目的だけでも訪れたくなる施設です。

筆者が道の駅『ピア21しほろ』を訪れたのは3年ほど前。それまで道の駅が販売している商品というのは、どこもありふれたものが多いイメージでしたが、上の写真の“シホロTシャツ”を見て、この道の駅は“攻めているな”と思ったのが最初の印象。それからは、筆者が訪れた道の駅ランキングの1位はずっと『ピア21しほろ』です。

今後も無理をせずに、スタッフや町民のみなさんと協力しながら、楽しい道の駅を運営していただきたいです。

<施設情報>
■施設名:道の駅 ピア21しほろ
■住所:北海道河東郡士幌町字士幌西2線134番地1
■電話番号:01564-5-3940
■営業時間:9〜17時
■定休日:年末年始
■ホームページ:【公式】道の駅 ピア21しほろ

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