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最後までわからないから面白い!パワフルな75歳ばんえい競馬ラバーが語る魅力

2021.10.29

かつては道内4か所(帯広・旭川・岩見沢・北見)で行われていた『ばんえい競馬』。一時は経営難から廃止も検討されていましたが、2007年から帯広競馬場での単独開催となりました。

今回は、ばんえい競馬存続の危機脱却に尽力し長年ばんえい競馬を応援している清原三枝子さんに、存続が危ぶまれていた当時のお話や“ばんえいラバー”だからこそ知っている魅力を伺いました。

清原三枝子(きよはら・みえこ)。1946年生まれ。帯広市出身。NPO法人『とかち馬文化を支える会』を立ち上げ、ばんえい競馬やばん馬の歴史を伝える活動を始める。2019年8月よりYouTubeチャンネル『清原チャンネル』を開設し、おもしろくて元気になる動画や十勝の魅力を発信。現在は帯広大谷短期大学で住生活論非常勤講師を務める。

存続の危機を救うため、立ち上がる

北海道Likersライターkino:まずは清原さんがばんえい競馬に出会ったきっかけ、ばんえい競馬を応援することになったきっかけを教えてください。

清原さん:小さい頃、帯広競馬場の近くに住んでいたんです。「子どもが行く場所じゃない」と言われていたので行くことはあまりなく、しかも昔、馬に追いかけられたことがあって、どっちかというと怖い存在だったんです(笑) ただ、ばんえい競馬は当たり前に身近にあるものでした。

そんな私がばんえい競馬と深く関わるきっかけとなったのは、2006年にばんえい競馬が存続の危機に陥ったとき。4市中3市で廃止が決まる中、帯広市では存続することが想定されていました。しかし、数日の間で一転「帯広市も廃止か」と報道され、そのことに納得できませんでした。

そのうえ、存続のために動いているのは関係者のみ。一般の人から声が上がらない状況では存続は難しいだろうという話を知人から聞き、十勝の歴史を語るうえで欠かせないばんえい競馬を残したい、そのために何かできないかと考えるようになりました。

まずは現場の想いを知ろうと、調教師や騎手など実際にばんえい競馬に携わっている方たちから話を聞くことにしました。関係者のみなさんの熱い想いを聞いて、存続に向け仲間たちと手伝うことを決意。廃止することになった理由を納得できるように説明してほしいと署名を集めたところ、全国から賛同の声が届きました。当時の帯広市長も署名をしたうえで、「なんとかしたい」と言ってくださいました。それもあってか議会で存続が決定し、2007年の5月から帯広競馬場でレースが再び開催されることになったんです。

その後、ばんえい競馬廃止の危機を乗り越えるために尽力した有志が集まり作った「ばん馬を愛する会」という団体をもとに、2007年にNPO法人「とかち馬文化を支える会」を設立。専務理事に就任し、ばんえい競馬の支援やイベントの開催などを行いました。

【関連記事】初の女性調教師・谷あゆみ。ばんえい競馬の存続危機を乗り越えたパイオニアの胆力(PR)

「帯広競馬場」をみんなに愛される場所へ

北海道Likersライターkino:帯広競馬場は世界でオンリーワンのばん馬の競馬場として存続できることになりましたが、NPO法人としてどんなことを行ったのでしょうか。

清原さん:競馬場って男の人が来るところというイメージが強かったので、家族や友人、カップルなどで楽しんでもらえる場所にしたいなという思いがありました。そうなるためには改善すべきところがたくさんあったんです。まずはお土産もの(グッズ)を作ること、初めて帯広競馬場に来ても楽しめるようインフォメーションの設置を進めました。

競馬場に来てくれた方々への声かけも行いました。最初は煙たがっていた人もだんだんと会話してくれるようになり、ばんえい競馬の不満などを話してくれるようになって。今でも電話をかけてくれて、やり取りすることもあります。

2年間NPO法人の専務理事としていろんな活動をしてきましたが、他の方に譲れるようになり、現在では土日に開催されるイベントでばんえい競馬のPRを行ったり、学生に教えるなど今までできなかったことができるようになりました。今でもグッズを制作するなど、別の形で応援しています。

今ではこんな立派な「ふれあい動物園」ができ、近くでばん馬を見るだけでなく餌やりをすることもできるように。週末に家族連れで競馬場へ来てくれている様子を見ると嬉しいですね。

「ばんえい競馬」ならでは!レース後にも見どころが

北海道Likersライターkino:初めてばんえい競馬を見る、楽しむという方にぜひ見てほしいポイントを教えてください。

清原さん:帯広競馬場はコース近く(エキサイティングゾーン)から見られるので、ばん馬の大きさや迫力を間近で感じられます。一見大きくて怖がってしまいがちなんですが、本当にやさしくてかしこくて温厚なんです。

ばんえい競馬は馬が人を乗せたそりを曳くレース。このそりがとても大きくて重いんです。レース後はずり金(コース砂面と接する鉄板部分)を上にあげ、コース脇のトロッコ列車に載せてスタート位置まで戻します。約1トンあるばん馬が曳くそりはそれくらいの重さがないと役目を果たせないんですよね。そりを使うのはばんえい競馬だけなので、ここでしか見られない光景ですよ。ぜひレース後のそりにも注目してほしいです。

騎手の重量は一律に決められているので、足りない場合は鉛のおもりを入れた鉄製の箱を持って調整し同じ体重にしています。パドックでは装具品を付けず、そのまま騎手が乗るというのもばんえい競馬ならではですね。逆立ちするように足を上げて馬に乗るんです。

―――「ばんえい競馬は最後の最後までレースがどうなるかわからない。諦めないで……というメッセージを感じるんです」とレースで最後尾になっている馬にやさしく声援を送る清原さん。ばん馬とばんえい競馬を心から愛していらっしゃるのがそのお姿から伝わってきました。75歳とは思えないパワフルさ、若々しさでこれからもばんえい競馬を盛り上げてほしいです。