
極寒の夜も、大雪の朝も。道民の「当たり前の日常」を裏側で守り続ける、ALSOK北海道の知られざる舞台裏
北海道Likersの連載『情熱の仕事人』では、北海道のさまざまな分野の“仕事人”を取り上げ、その取り組みや志、熱い想いなどを紹介しています。
今回は、道内トップの総合セキュリティ企業で、2026年5月に創立51周年を迎えた『ALSOK北海道株式会社』の代表取締役社長・吉田さんにお話を伺いました。吉田社長は、警備員からキャリアをスタートさせた入社43年目の「叩き上げ」トップ。東京2020オリンピックでの大規模警備の指揮や、人手不足に立ち向かう“安全DX”の推進など革新を続ける一方で、その胸には決してブレない“現場主義”の情熱がありました。
私たちの平穏な日常を裏側で守り続けるセキュリティのリアルと、その熱い舞台裏に迫ります。

吉田浩儀(よしだ・ひろよし)。 ※「吉」の正確な表記は、上部が「士」ではなく「土」(つちよし)。
北海道伊達市出身。昭和58年4月に綜合警備保障株式会社(現:ALSOK株式会社)入社、警送千葉支社長、警送サービス部長を経て、平成31年4月に執行役員(東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会推進担当)に就任。令和4年4月には常務執行役員として常駐警備事業を担当、大阪・関西万博における警備等に携わる。令和8年6月より ALSOK北海道株式会社の代表取締役社長に就任。
「現場百遍」の信念。警備員から始まった43年のキャリアと現場へのリスペクト
道内トップの警備企業を率いる社長として、お仕事に対する使命感や情熱のルーツについて教えてください。
弊社は1975年(昭和50年)5月に創業し、地域社会の安全・安心に貢献することを使命に歩んできました。何事にも常に感謝の心を忘れない“ありがとうの心”と、強く、正しく、温かい“武士の精神”をもって、立派な警備を提供する。この経営理念のもとでおかげさまで創立51周年を迎えることができ、現在は道内最大の警備会社となりました。
私自身は、『ALSOK』に入社して44年目になります。現場の警備員からキャリアをスタートさせた“叩き上げ”ですので、最前線の苦労や厳しさは誰よりも理解しているつもりです。

特に北海道の冬は厳しいですが、警備員は誰もが布団で眠っている夜間や大型連休中も、24時間365日休むことなく動き続けています。だからこそ、私は営業や管理部門の社員に「現場の社員は夜を徹して仕事をしている。その苦労を決して忘れるな」と伝えています。現場の仕事の本質を理解して初めて、お客様に寄り添った提案ができるからです。

私の信条は、警察用語でもある“現場百遍”です。課題や答え、お客様が求める真のニーズはすべて“現場”にしかありません。2026年6月に社長に就任してから全道を一巡しましたが、自分の足で回ることで、この地で安心とインフラを支え続ける重みを強く実感いたしました。
8年間の激闘と、急な札幌変更。東京2020オリンピック警備の舞台裏
これまでのキャリアの中で、特に心に深く残っているエピソードについて教えてください。
招致から本大会閉幕まで足掛け8年間にわたり専任で担当した『東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会』の警備プロジェクトです。全国から1日最大約2,500名もの警備員を招集し、選手村や競技会場を警備しました。選手や関係者の方々から「守ってくれてありがとう」と笑顔で声をかけていただけた瞬間の感動は、生涯忘れることができません。

また、この大会ではマラソン競技が暑さ対策のために急遽、札幌へ変更されるという激動のドラマもありました。すべてのシミュレーションを終えた最終段階での変更だったため、すぐさま札幌に入り、短期間で新たな警備体制をゼロから再構築しました。スタート前日の夜20時になって「開始時間をさらに1時間前倒しにする」という変更指令が入るなど、現場の緊張感は極限まで張り詰めていました。

それでも、スタッフが一丸となって粘り強く対応し、無事に競技を完遂させました。当日は東京よりも札幌の方が気温が高かったというオチもありましたが(笑)、道民のひとりとして歴史的な大イベントを無事に守り抜けたことは、今でも大きな誇りです。
「安全DX」の道具と、それを使いこなす「人」を育てる両輪の強み
長年築き上げてきた信頼の原点と、最先端の「安全DX」への挑戦、および時代が変わっても「変わらない信念」について教えてください。

圧倒的な信頼をいただけた原点は、やはり“誠実、正確、強力、迅速”というモットーを掲げた経営理念を、社員全員が現場で愚直に実行してきたからです。一方で、これからの大きな課題が人手不足と高齢化です。札幌市中心部の再開発やイベント等の開催により警備需要は非常に高いものの、採用環境は厳しく、常に人手不足の壁に直面しています。

この課題を乗り越えるために推進しているのが、最先端テクノロジーを取り入れた“安全DX”です。AIカメラや自律型警備ロボット、ドローン、アバターを現場に導入することで、従来10人必要だった現場を高いセキュリティレベルを維持しながら8人で稼働させる省人化を可能にしました。デジタル機器を活用することで警備員の体力的な負担が軽減され、高齢スタッフでも無理なく、安全に長く働けるようになります。

ただ、いくら優れたAIやアバターを導入しても、異常検知時に最終的な状況判断を下し、現場で最適な対応を行うのはどこまでいっても“人”です。だからこそ、道具を使う人間の能力も高める必要があり、弊社では独自の教育・研修体制に力を注いでいます。自律的なステップアップを支援するため、業務に必要な国家資格の取得・学習のバックアップ体制も整えています。
働き方改革と高齢者雇用の両立。そして「次の50年」へ広げる安心の輪
若い世代の働き方改革や通年採用、ベテラン社員が活躍できる環境、およびこれからの未来ビジョンをお聞かせください。
これからの若い世代は余暇やプライベートの時間を重視する傾向があります。警備は“多くの人が休んでいるとき”にこそ稼働する仕事ですから、このギャップを勤務シフトの工夫や有給休暇の取得促進などの働き方改革でいかに埋めていくかが経営者としての宿題です。新卒採用だけでなく、転職者、自衛官出身者、Uターン希望者などを歓迎する通年採用も毎月積極的に行っています。

それと同時に、定年を迎えた後も、健康で意欲のある社員が活躍できるよう、体力に合わせたポジションへの配置や夜間勤務時間の短縮など、身体的負担を軽減する仕組みを徹底しています。若い世代への投資と、ベテランの知恵の継承。このバランスが私たちの最大の強みです。
そして、これからの次の50年に向けては、北海道新幹線の延伸や全道各地の再開発プロジェクトをセキュリティのプロとして裏側からしっかりと支えられればと考えております。

また、高齢化社会における独居高齢者世帯の見守りに地域密着で貢献していきます。現在、道内の12の市町村と『高齢者見守りサービス』を提携しており、民生委員のなり手不足などの課題を補うべく、非常ボタンからの信号を弊社のガードセンターがキャッチし、近くの警備員が24時間体制で急行する仕組みを提供しています。全国のホームセキュリティ普及率はまだ5%未満。これからも自治体や地域と手を取り合い、広大な北海道の隅々にまで安心の輪を広げてまいります。
最後に、あなたの北海道Like(=北海道の好きなところ)を教えてください
私は仕事の関係で、約26年間北海道を離れて東京で勤務していました。26年ぶりに帰郷して全道を一巡した際、改めてあの“果てしない大空と広い大地”に包まれ、本当に深い安心感が心に込み上げました。美しい緑の大自然は本当に素晴らしく、いつも心が癒されます。
食べ物で言いますと、やっぱりお米です。気候変動による暑さは厳しいものの、お米が非常においしくなったという良い側面も感じています。特に北海道産の『ゆめぴりか』は抜群においしいお米だと思っていて大好きです。
今回は会社全体のインフラや未来のお話が中心になりましたが、また次の機会には、私が生まれ育った、雪が少なく温暖で“北の湘南”と呼ばれる伊達市の素晴らしさをたっぷりとお話しさせてくださいね(笑)。
北海道Likers編集部のひとこと
現場の警備員からキャリアをスタートされた吉田社長。その物腰柔らかな語り口の奥には、最前線で働く社員への深いリスペクトと、熱い“現場主義”の情熱が脈々と流れていました。
私たちが当たり前に享受している“平穏な日常”を、最先端の安全DXと全社一丸のチームワークで作り出す。テクノロジーと人の温もりを融合させながら進化を続ける同社の挑戦に、今後も目が離せません。
取材・文/北海道Likers編集部 取材協力/ALSOK北海道株式会社









