
最強の相棒と共に。ばんえい記念優勝・阿部武臣騎手が語る「ばんえい競馬」の今とこれから
北海道帯広市で開催されている、世界で唯一の競馬『ばんえい競馬』。その最高峰レースである『ばんえい記念』で、見事な勝利を飾ったのが阿部武臣(あべ・たけとみ)騎手と現役最強馬メムロボブサップのコンビです。

画像:ばんえい十勝
昨年はご自身の怪我による休養もありましたが、見事に復帰を果たし、再び大舞台で強さを見せつけました。今回は、そんなばんえい競馬を牽引するトップジョッキー・阿部武臣騎手に、最強の相棒への想いや、若手騎手への期待、そしてばんえい競馬の未来についてお話を伺いました。
阿部武臣(あべたけとみ)1972年生まれ、宮城県出身。ホクショウマサルやメムロボブサップの主戦騎手で、2023年7月には2,000勝を達成するなど、ばんえい競馬の最前線で活躍中。
「我慢させるのが大変なほど」頼もしい相棒・メムロボブサップ

ばんえい記念、優勝おめでとうございます!昨年はお怪我で休養されていましたが、復帰に向けて「もう一度メムロボブサップと一緒に頑張りたい」という思いが強かったそうですね。改めて、阿部騎手にとってメムロボブサップはどのような存在ですか?
本当に頼もしい相棒だと思っています。
前回のインタビュー(2024年3月)では、「メムロボブサップが自分で呼吸を整えられるようになってきた」という成長について伺いました。今回のばんえい記念でも、瞬間の判断や相棒との反応などで感じたことはありましたか?
今年は休養が多かった分、ばんえい記念は確実にとって制覇したいという思いがありました。休ませていたこともあり、帯広記念の時は一番出が悪い状態でしたが、それでも勝ってくれました。
その後レースで使っていくうちにレースの勘も戻り、尻上がりに調子が良くなっていきましたね。
ばんえい記念では「120%の仕上がり」とおっしゃっていましたが、どのタイミングでそれを確信しましたか?

道中でもすでに仕上がっていて、止めるのが大変なぐらいだったんです。息が入れば入るほど「もう行きたい!」という感じで、我慢させるのが本当に大変なほどでした。
重量が重たかったので絶対止まる計算で乗っていましたが、止まってもすぐに出ましたし、逆にあまり合わせるより止めた方がいいかなと思ったくらいです。それほど、メムロボブサップ自身の「行きたい」という気持ちがすごかったですね。
前回のインタビューの際には「いかに無事にゴールさせるかが騎手の腕の見せ所だ」ともお話しされていました。メムロボブサップも10歳になり、いよいよラストシーズンが見えてきますが、最高のパフォーマンスを引き出すためにこれからの1年、特に見極めていきたい点はどこでしょうか?

今のところ、力の衰えはほとんどありません。それを維持するために、やはり普段の体調面が一番大事になります。体調を崩さずにいければ、他の馬よりも力を落とさずに1年を過ごせると思っています。特に近年は夏がすごく暑いので、そこでいかに体力を消耗せずに夏を乗り切り、秋を迎えるかが重要になってくると思います。
若い世代へ繋ぐバトンと、ベテランとしての意地
現在、若手騎手が次々とデビューし活躍しています。阿部騎手の息子さんである優哉騎手も含め、次世代の騎手たちにはどのような思いを持っていますか?
騎手というのは大変な職業ですが、年数を重ねるにつれて腕を磨き、「上手になったな」と言われるジョッキーになってほしいですね。そして、ばんえい競馬をしっかり盛り上げていってもらいたいです。

自分たちももう年なので、そう長くは乗れないと思っています。やはり騎手は表舞台で活躍する存在なので、いかに自分のパフォーマンスをしっかり見せられるかが大事になってきます。特別なパフォーマンスを見せてくれれば、ファンの皆さんも期待して見てくれると思うので、そこを大切にしてほしいです。
ベテランとして、今後のばんえい競馬をどのように引っ張っていきたいですか?
若い人たちに色々な乗り方などを伝授しつつも、自分も振り落とされないように“年寄りじいさん”なりに頑張っていくしかないかなと思っています(笑)
生まれ変わる競馬場。ファンの声援が力になる
長年ばんえい競馬の世界にいる阿部騎手にとって、競馬場全体の雰囲気の変化は感じますか?
昔は、タバコの煙がもくもくしていて、赤ペンと競馬新聞を持ったおじさんたちがいるような場所でした(笑)。でも今は、家族連れや若いカップルなど、若い人たちがたくさん来てくれるようになり、雰囲気自体が本当に明るくなってきたと感じています。

ジョッキーも若い騎手が増えてきているので、そのあたりでもまた違った盛り上がりを見せているのかなと思います。
ご自身にとって、今年度はどのような1年でしたか?

自分的には、いかに早く怪我を治すかの1年でしたね。あっという間に過ぎていきました。
最後に、新シーズンへの抱負と、ファンへのメッセージをお願いします!

今年怪我で乗れなかった分、新シーズンは一つでも多く騎乗させてもらい、1勝でも多く勝てたらと思っています。これまで以上にファンの皆さんの応援の力で、明るく楽しい競馬にしていってほしいなと思っています。
最後に「北海道Likers」の読者へ向けて、一言メッセージをお願いします!
ばんえい競馬は、北海道の帯広でしかやっていない特殊な競馬です。知名度はまだまだ低いと思うので、色々な人に見てもらって、応援してもらいたいなと思っています。

編集部
怪我を乗り越え、最強の相棒・メムロボブサップと共に栄冠を手にした阿部武臣騎手。若手へ技術を伝えながらも「まだまだ負けない」と静かに闘志を燃やす姿に、トップジョッキーとしての矜持を感じました。
明るく生まれ変わった帯広競馬場で、これからも阿部騎手とばん馬たちが織りなす熱いレースから目が離せません!
取材・文/北海道Likers編集部 写真提供/ばんえい十勝
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