看板商品は銘菓・黒ダイヤカステラ!地元に愛され76年目「伝統を受け継ぐお菓子屋さん」
地元に古くからあるお菓子屋さん、文房具屋さん、居酒屋さん。みなさんの住む町には、そんなお店がどれだけ残っていますか?
長年地域に根ざしてきたお店も、人口の減少や、新型コロナウィルスのまん延など、さまざまな事情で閉店しているのが現状です。
そんな時代の変化のなか、北海道夕張市で75年間愛され、今もなお営業を続ける「お菓子のふじ」があります。1947年に開店してから76年目。伝統のお菓子を受け継ぐ3代目店主・前田直美さんにお話を伺いました。
前田直美(まえだ・なおみ)。北海道夕張市生まれ。札幌、東京でパティシエの経験を経て、2014年「お菓子のふじ」3代目店主に。2023年5月現在「お菓子のふじ」は76年目。
東京で修行後、気負わずに始めた3代目店主
前田さんは札幌のお菓子屋さんで働いた後、東京で5年間、ケーキ屋さんに勤めました。夕張のお店を継ぐために修行をしていたわけではないといいます。
「お店を継ぐつもりはありませんでしたが、どこかで北海道には戻りたいと思っていました。ちょうど私が35歳のときに、お店を継いでいたおじさんが“辞めようと思っている”という話が出たのがきっかけでした」
「私は“自分でお店をやりたい”という野望がなかったため、お店を継ぐのに不安もありました。当時働いていた東京のケーキ屋さんのオーナーシェフが、“野心を持って始めて失敗する人だっているんだから、気負わないでできるほうがいいんじゃない”と後押ししてくださって。まずは軽い気持ちで始めてみることにしました」と前田さん。
お客さまの声で気づいた「歴史を残す大切さ」
看板商品は、夕張銘菓『黒ダイヤカステラ』。かつて「黒いダイヤ」と呼ばれた石炭がモチーフで、生地は竹炭で黒く色づけされています。小豆甘納豆と小豆餡が中に練りこまれた優しい甘さで、長年市民に愛されている逸品です。
そのほかにも「お菓子のふじ」では、昔からのお菓子が多く販売されています。
しかし、前田さんはお店を継いだ当時、180度違う考え方を持っていたといいます。
「私が帰ってきたとき、古い商品を全部やめたいと思っていました。ただ、いざ店頭に立ってみると、“これないの?”“あれないの?”と昔のお菓子を買い求めてくるお客さんが多かったんです。新しいお菓子はいろいろなお店にありますが、そこでしか作れない昔からあるお菓子を作った方がいいのではないかと思いました。」
「『黒ダイヤカステラ』は夕張南部にあったお菓子屋さんから教えてもらい、味を引き継いでいます。懐かしいと思ってもらえるのはとても嬉しいので、これからも受け継いでいきたいと思っています!」
70~80%の力で無理なく続ける
2014年に夕張に戻ってお店を継いだ前田さん。気負わずに継いだお店は9年続いています。地元の方に愛され、数か月に1回出店しているマルシェでは、お客さまにも仲間にも恵まれているそうです。
「来てくれる人、一緒にマルシェなどに出店するあたたかい仲間に恵まれていますし、この9年間、辞めたいと思ったことは1度もありません!」と前田さんは語ります。
「私は経営者としてはまだまだだと思っています。帳面も毎月つけていませんし、年々売り上げは落ちていますが、まだ良い解決策は思いつかないです(笑)
逃げ道がないと嫌なので、常に70~80%の力でやっています。絶賛子育て中なので、負担がかからないように、無理なく続けていくのが大事だと思っています」
“伝統を守らなければならない”
“存続するためにはもっとアップデートが必要”
お店が存続するために考えることはたくさんあります。しかし、伝統を守るためには、“無理なく、気負わずに”いるのが一番なのではないでしょうか。自分が「続けたい」と思わない限り、お店を存続することはないのですから。
<店舗情報>
お菓子のふじ
■住所:北海道夕張市清水沢3丁目130
■電話番号:0123-59-7878
⇒営業時間など詳細はこちら
【画像】お菓子のふじ
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