実は北海道だけだった…!本州とは異なる「お正月のかるた遊び」
今回のお正月は久しぶりに帰省をして、家族と一緒に過ごすという人もいるでしょう。お正月はなにをする予定ですか? たこあげやコマ回し、福笑いなどと同じく、伝統的なお正月遊びに“かるた”がありますね。どうやら北海道の“かるた遊び”は、本州とは少し異なるようです。
北海道のかるたは「下の句」を読み、「下の句」を取る
一般的なお正月遊びのかるたには、小倉百人一首が用いられることが多いですね。読み札には短歌が書かれており、上の句だけを読みます。取り札には下の句が書かれているため、小倉百人一首を覚えていなければ札を取れません。読み手の声にスピーディーに反応してすばやく札を取る、“競技かるた”もおこなわれています。
一方、北海道では、上の句ではなく“下の句”を読みます。取り札に書かれているのも“下の句”です。「下の句かるた」とも呼ばれています。小倉百人一首を覚える必要がなく、読まれたものを取るだけなら簡単そうですよね。しかし、北海道のかるた遊びは難易度が高いです。その理由は……
取り札は変体仮名が書かれた「木板」
読めますでしょうか? ところどころ読める字もありますが、読めない字もあるのではないでしょうか。実はこれが、北海道のかるた遊びで使われる取り札なんです。
北海道のかるた遊びでは、ホオノキなどでつくられた木の板に、くずし字で下の句を記した取り札が使われます。木板を使うことから、「板かるた」という別名も。
現在のひらがなのもとになった、旧字体の“変体仮名”で書かれているため読みにくく、かるたの難易度も高くなるというわけです。小倉百人一首を覚えながら、くずし字や変体仮名を読めるようになれば、より日本文化を学べますね。
筆者が子どものころから一緒に暮らしていた祖父も、木板のかるたを持っていて、家族で遊んだ思い出があります。当時は、“下の句だけを読む”や“取り札が木板”が北海道だけのルールだと知りませんでした。変体仮名は読めなかったので、カルタの絵柄のように形を覚えて遊んでいました。自分がすばやく取れる得意の札もあり、ゲームとして楽しんでいました。
「板かるた」の発祥は福島県の会津地方?
下の句を読み、下の句の木板を取る「板かるた」の発祥は、福島県の会津地方ではないかと考えられているそうです。1928(昭和3)年7月に発行された『会津会報誌』32号の「京都会津会第2回例会兼新年互礼会」に、「板歌留多」という言葉が登場。「板かるた」と読めますよね。しかし、現在の福島県で「板かるた」はおこなわれておらず、北海道で文化が残っているようです。
「ホオノキ」はアイヌ文化でも親しみのある木
ちょっとした豆知識もご紹介します。「板かるた」は本州から伝わってきたと考えられているようですが、かるたの木板に用いられると説明した“ホオノキ”は、アイヌ文化でも親しまれている木です。モクレン科で香りがよく、木の実をお茶にして飲むこともあったのだとか。また彫りやすい素材の木だったので、矢筒や小刀のさやなどの細工にも活用されていたそうです。
お正月の遊びでも、北海道と道外で違いがあるのは面白いですね。北海道でお正月を過ごす機会があれば、ぜひ独自の“かるた遊び”を楽しんでみてくださいね。
【参考】国会国立図書館、一般社団法人 全日本かるた協会、壮瞥町、北海道博物館、国文学研究資料館、同志社女子大学、アイヌ民族博物館
レファレンス事例詳細 / 国会国立図書館
はじめての競技かるた / 一般社団法人 全日本かるた協会
【北海道】下の句で読む百人一首『板かるた』 / 壮瞥町
取り札が木板の百人一首 / 北海道博物館
くずし字って何? / 国文学研究資料館
会津の板かるた / 同志社女子大学 吉海 直人(日本語日本文学科 教授)
日本語名:ホオノキ(ホウノキ) / アイヌ民族博物館 アイヌと自然 デジタル図鑑
【画像】Rhetorica、nouvelle、HAPPY SMILE、tarousite、kattyan、Ystudio / PIXTA(ピクスタ)