愛され続けて100年以上。歴史ある「小林酒造」を徹底解剖!【日本遺産「炭鉄港」・栗山編】
『炭鉄港』は、近代の北海道を築く基となった三都(空知・室蘭・小樽)を、石炭・鉄鋼・港湾・鉄道というテーマで結んだ産業革命の物語です。これまでに室蘭市、赤平市、美唄市を取り上げました。今回は、空知エリア・栗山町の構成文化財「小林酒造建造物群」をピックアップ。
小林酒造の歴史から、見学や日本酒の購入ができるおすすめスポットまで詳しくご紹介します。
栗山町の日本遺産「小林酒造建造物群」
栗山町で日本遺産『炭鉄港』の構成文化財に指定されたのは、夕張川沿いにある「小林酒造建造物群」。小林酒造は『北の錦』の酒蔵として知られています。
敷地内にはレンガ蔵が18棟あり、その規模の大きさや歴史の長さを物語っています。酒蔵見学実施時以外は蔵の中に入ることはできませんが、建物を外から見学することは可能。
レンガの建物は外気温の影響を受けにくく、酒造りに適しているといいます。夏は少し涼しく、冬は日本酒を適温で保管できるんだとか。
敷地内の各所には歴史を感じさせる貴重な資料が展示されています。こちらの入口はかつて日本酒の販売所だったそう。入ってすぐに受付があり、その先にはレールが敷かれています。
このレールは酒蔵の中まで繋がっていて、平台の上に日本酒を積み出して販売所まで運んだり、出荷したりするのに使用していたそうです。
炭鉱と「小林酒造」の繋がり
小林酒造は、1878(明治11)年、初代小林米三郎氏が札幌で酒造業をスタート。その後、豊かな自然に恵まれた栗山町で酒造りを行いたいと1900(明治33)年に移転しました。
こちらの写真は、1930(昭和5)年ごろの小林酒造の様子。現在の“普通酒”といわれる日本酒を主に製造していました。基本的には甘口で、比較的安価な商品だったそうです。
当時、普通酒は夕張炭鉱などの小林酒造周辺にあった炭鉱労働者の“息抜き酒”として飲まれ、急激に出荷量が増えたといいます。日々命を懸けて石炭を掘り出していた炭鉱労働者は、しっかりとした味のある日本酒を好んだのではないでしょうか。
そのころの繁栄ぶりをいまだ残しているのが敷地内にある「小林家」。1897(明治30)年に建築された住宅で、二代目小林米三郎氏(小林家では歴代の社長が初代米三郎の名前を襲名)の家族が生活していた場所です。2011(平成23)年に三代目小林米三郎氏が亡くなるまで住宅として使われていました。この住宅には23の部屋があり、住み込みで家政婦が7人いたという数字からも、その規模の大きさがわかります。
しかし、昭和に入ると各地の炭鉱で閉鎖が相次ぎ、酒造りにも大きな影響を与えました。しだいに経営が厳しくなり、苦しい時代もあったそうですが、なんとかその危機を乗り越え、現在でも道内最古の酒蔵として酒造りが続けられています。
その苦しい時代を物語っているのが『千枚の布』。二代目小林米三郎氏の妻・小林チノ氏が明治の終わりごろに、破れたり擦り切れた着物の使える部分を切り取り、2枚重ねて繕った10センチ四方の布切れを縫い合わせたもの。ものを大事にするという精神が伝わってきます。
「小林家」の中を見学できるツアー(有料、前日までに要予約)では、“守りびと”と呼ばれるスタッフに部屋を案内してもらいながら貴重なお話を聞くことができます。
<施設情報>
■施設名:小林家 ※見学は前日までの予約制
■住所:北海道夕張郡栗山町錦3丁目109番地
■電話番号:0123-76-7228
■定休日:水曜、年末年始、2022年3月16日(水)~4月8日(金)の期間(年度末の大掃除と年度始めの準備ため)
■ホームページ:https://www.kobayashike-maruta.com/
高価な日本酒作りへの転換
炭鉱の衰退と共に売り上げが落ち込み、経営が危ぶまれる状況から脱却したいと、小林酒造は酒造りの方向転換を行うこととなります。メインであった普通酒から道産素材を使って美味しいお酒を作ることを目指し、1985(昭和60)年に道産米キタヒカリ100%の清酒を発売しました。
小林酒造で作られる日本酒は、栗山町にほど近い夕張山系からの水と道産米(酒造用加工米・酒造好適米)を100%使用しています。
こちらが酒蔵の入口。今はまさに酒造りを行っている時期なので見学を行っていませんが、特別に取材させていただきました。
入ってすぐのところにあるのが貯蔵庫。奥には氷温貯蔵庫もあります。
酒造りに欠かせない米麹。翌日の仕込みに備え、乾燥させていたものです。まさに発酵を行っている最中の樽の中も見せていただきましたが、三段仕込みという方法を用いているとのこと。そこから火入れ、熟成などの工程を経て日本酒ができます。
今後の酒蔵見学についてはホームページなどでご確認ください。
<施設情報>
■施設名:小林酒造株式会社
■住所:北海道夕張郡栗山町錦3丁目109番地
■電話番号:0123-72-1001
■定休日:土曜、日曜、祝日
■ホームページ:http://www.kitanonishiki.com/
歴史に触れたあとはショッピング!
敷地内にある「蔵元 北の錦記念館」では、全国各地の徳利など日本酒に関する道具が展示されているだけでなく、日本酒やオリジナルグッズなども購入できます。
「炭鉄港」構成文化財に選ばれたことを記念して販売されている純米吟醸『炭鉄港』は、ラベルや箱に各地の構成文化財がプリントされています(ネットショップでも購入可)。
ほかにも、ここでしか買えない日本酒や、お酒が飲めない方へのお土産にも喜ばれる甘酒を使ったお菓子などもありますよ。
<施設情報>
■施設名:蔵元 北の錦記念館(小林酒造直売所)
■住所:北海道夕張郡栗山町錦3丁目109番地
■電話番号:0123-76-9292(小林酒造直売所直通)
■定休日:12月31日~1月3日、4月第3月曜日
■ホームページ:http://www.kitanonishiki.com/
今回ご紹介できませんでしたが、敷地内には本格手打ち蕎麦としぼりたての『北の錦』を楽しめる「錦水庵(きんすいあん)」という蕎麦店もあります。歴史に触れ、日本酒について学べる貴重なスポットにぜひおでかけください!
【参考・画像】小林酒造株式会社
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