立坑櫓

知られざる歴史が…!北海道民なら知っておきたい遺産スポット【日本遺産「炭鉄港」・赤平市編】

2021.11.07

『炭鉄港』は、近代の北海道を築く基となった三都(空知・室蘭・小樽)を、石炭・鉄鋼・港湾・鉄道というテーマで結んだ産業革命の物語です。前回は室蘭市をご紹介しましたが、今回はかつては炭鉱が多く存在した空知エリアにある赤平(あかびら)市をご紹介します。

「炭鉱」で栄えたまち・赤平

赤平市には数多くの炭鉱がありましたが、大きな炭鉱として住友赤平炭鉱、赤間炭鉱、茂尻炭鉱、豊里炭鉱の4つが挙げられます。まずは大正7年に茂尻炭鉱(大倉鉱業株式会社)が開坑。昭和12年に豊里炭鉱(昭和肥料株式会社)、1938(昭和13)年に住友赤平炭鉱(住友石炭鉱業株式会社)と赤間炭鉱(北海道炭礦汽船株式会社)が続いて開坑します。

昭和30年代後半から、石炭産業の衰退を余儀なくされ、1994(平成6)年には最後の一山が閉山し、赤平の「石炭の歴史」に幕を下ろしました。

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赤平市の「炭鉄港」構成文化財

赤平市には『炭鉄港』の構成文化財が3つあります。

①空知川露頭炭層

②北炭赤間炭鉱ズリ山

③住友赤平炭鉱立坑櫓・周辺施設

1つ目の空知川露頭炭層は、1857(安政4)年に松浦武四郎によって発見されました。1873(明治6)年、開拓使の榎本武揚らが幌内・三笠一帯の炭層を調査後に空知川を遡上しながら沿岸を調査。赤平付近で炭層を発見。1874(明治7)年、開拓使に雇われたアメリカ人の地質学者・ライマンらも同様に空知川を遡上して地質調査を行い、石炭の大露頭を確認しました。

今年2021年4月に展望広場が整備され、川岸から露頭炭層を見ることができます。石炭は5000万年前頃の植物(主にメタセコイヤ)が化石となったものです。

ズリ山

出典: 赤平市教育委員会

次の北炭赤間炭鉱のズリ山(標高197.65m)は、赤平市の中心市街地にあります。ズリ山とは、坑内から出る岩石などの捨て石(ズリ)が積み上げられてできた山のこと。直線部分の階段が777段あり、国内のズリ山階段としては、日本一の階段数です。頂上の展望広場からは赤平市街が一望でき、市民の憩いの場となっています。

赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設で「住友赤平炭鉱」を見学!

赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設

出典: 赤平市教育委員会

3つ目は、1938(昭和13)年から1994(平成6)年にまで採炭が行われていた『住友赤平炭鉱』。赤平市が見学が可能な施設『赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設』として2018(平成30)年7月14日にオープンしました。

施設には、住友赤平炭鉱で実際に使用されていた道具や採掘された石炭などが展示され、無料で見学できます。おすすめは、実際にこの炭鉱で働いていた元炭鉱マンが施設をガイドしてくれるという「炭鉱遺産ガイド付見学」。10時からと13時30分からの1日2回行っています!(休館日を除く)

まずは出発前にホールにて注意事項等の説明を受けてから出発。ホールの窓からは迫力満点の立坑櫓を見ることができます。

今回ガイドを務めてくださったのは採炭と救護隊の業務を行っていた三上さん。設備の説明や当時の様子を場所ごとで行ってくれます。

まず、立坑ヤードに入って目に飛び込んでくるのがこちらのケージ(エレベーター)。地下にある坑道への乗降に使われたり、採掘した石炭などを地上に運ぶために使われていました。全部で4基あり、1基あたり炭車(トロッコ)だと4台(1段1台×4段)、人だと72人(1段18人×4段)載せることができる貨車が入るようになっています。写真の両端にあるのがケージを操る操車台です。

2階に上がると、エレベーターを上げ下げするための大きな巻き上げ機がそのままの姿で残っています。ケージの速度は12m /1秒と最新の設備が整えられていて「東洋一の立坑」とも呼ばれていたそう。

一旦ホールに戻ったあと、各自の車で自走枠整備工場へ移動。ここでは掘削で使用した重機やトロッコ、非常時に使っていた救急バルブなどを見ることができます。

こちらはロードホールダンプ。ズリの運搬と積み込みに使われていて、電気で動くようになっています。坑内でメタンガスなどが発生しているので、ガス爆発が起きないように防爆技術が施されているそう。常に身の危険を感じながらの採炭作業。三上さんは救護隊のお仕事もされ、いろんな現場で処置などを行った経験があるからこそ、その言葉に重みを感じました。

ここで見学は終了。立坑櫓と自走枠整備工場の見学で1時間半ほどです。これほど当時の姿を残し、中に入れるだけでなく、実際に働いていた方からお話が聞けるのは大変貴重! 冬期も開館しており、炭鉱について学びたいという方にはおすすめの施設です。

 

日本遺産にも認定されている『炭鉄港』。北海道の発展に大きく貢献した物語は今でも心に響くものがあります。当時のお話を聞いたり、実際に使用されていた道具の見学は貴重な経験となりそうです。

<施設情報>
■施設名:赤平市炭鉱遺産ガイダンス施設
■住所:赤平市字赤平485番地
■電話番号:0125-74-6505
■開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)
■休館日:月・火曜日
■入館料:無料(但し、炭鉱遺産ガイド付見学は赤平市民は200円、市外の方は800円が必要)
■公式Facebook:https://www.facebook.com/akabiraguidance/

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