アイキャッチ ハンバーグカレー

若い夫妻が30年の想いを受け継ぐ!特製カレーが評判の「ニセコ駅の老舗喫茶店」

函館本線・長万部‐小樽間は、羊蹄山やニセコ連邦の山々を車窓に望むことから「山線」と呼ばれています。この区間は北海道新幹線の札幌延伸に伴い廃止が予定されているため、多くの鉄道ファンが訪れています。

そんな旅の途中で立ち寄ってほしいのが「茶房ヌプリ」。ニセコ駅の中にあり、『ヌプリ特製カレー』が評判のお店です。

明治時代に開業した「ニセコ駅」

ニセコ駅は、1904(明治37)年に「真狩(まっかり)駅」の名称で開業。1906(明治39)年に「狩太(かりぶと)駅」に改称され、1968(昭和43)年に町名変更に伴い「ニセコ駅」になりました。駅舎は1988(昭和63)年に、山小屋風にリニューアルされています。

駅の正面には、日帰り温泉施設「綺羅乃湯(きらのゆ)」があるほか、敷地内には函館本線などで活躍したC62形蒸気機関車や、リゾート列車『ニセコエクスプレス』が展示されており、たくさんの観光客や鉄道ファンが訪れています。

ひと味違う!デミグラス仕立てのカレーが評判「茶房ヌプリ」

ニセコ駅構内にある「茶房ヌプリ」は、1991(平成3)年元日に、松田保さん・裕子さんご夫妻によってオープンしました。倶知安町出身の保さんは、プロスキーヤーを経て、ホテルのレストランなどで働きながら独立を目指し、駅にあったレストランを譲り受けました。

店内のあちこちに掲げられている掛け時計が2時46分を示しているのは、2011(平成23)年3月11日14時46分頃に発生した東日本大震災で被災した知人たちを追悼してのこと。優しい雰囲気がお店に漂っています。

近くに川が流れており、店を承継した理由も「お客さんが来なければ趣味のフライフィッシングができると考えた」という趣味人です。

松田さんご夫妻は、「30年経ったらやめよう。そしてやりたいことをやろう」と決めていたそうで、2022(令和4)年3月末に引退しました。

思い出の店を若い夫妻が引き継ぐ

「茶房ヌプリ」を引き継いだのは、町内で飲食店を経営する平手原野さん・蕗さんご夫妻です。松田さんと原野さんの両親は旧知の間柄。松田さんが原野さんの名付け親になるなど、親しくしていました。

原野さんは、高校生のころに「喫茶ヌプリ」でアルバイトをしていたことがあり、特別な思い出があります。松田さんが廃業すると聞き、思わず「私が継ぎます」と申し出たところ、松田さんから「それが一番いい」と言われたそうです。

「茶房ヌプリ」の営業は、主に蕗さんが担当しています。「年代を問わず美味しく食べられるものを」と考案された『ヌプリ特製カレー』が名物で、「カレーだけは、しっかり作ってくれ」と指導を受けました。

デミグラスソースをベースにした『ヌプリ特製カレー』は、牛ミンチと、ふんだんに使われたタマネギの甘みが決め手で、ほかでは味わうことができない美味しさです。

人気の『ハンバーグカレー』は、カレーとハンバーグの美味しさの二重奏。ナイフを通すと肉汁がカレーに滴り、旨味がマシマシになりました。

松田さんは、ニセコ駅の“駅長犬”を務めるワンちゃんの飼い主でもあり、今でもお店に姿を見せるそうです。「丁寧に教えてくれたので、承継の苦労は感じませんでした」と、原野さんと蕗さんは笑います。

 

人気店ながら後継者に恵まれず、廃業してしまうお店が多い中、平手さんご夫妻が「喫茶ヌプリ」を引き継いでくれたのは幸運でした。

廃線とともにニセコ駅は役目を終えてしまいますが、何らかのかたちで駅舎は残るかもしれません。“ニセコの名店”の味を、この場所で提供し続けてほしいですね。

<店舗情報>
■茶房ヌプリ
■住所:北海道虻田郡ニセコ町字中央通142-1 JRニセコ駅構内
■電話番号:0136-44-2619
⇒営業時間など詳細はこちら