ゴールデンカムイのキャラがお出迎え?北海道にどっぷり浸かる「十勝の歴史スポット」2つ
テレビアニメ『ゴールデンカムイ』はご存じでしょうか? 明治末期の北海道や樺太が舞台になっているテレビアニメで、2022年10月3日(月)から第4期の放送がスタートしました。
北海道では、観光復活を目的として始まったプロジェクト「HOKKAIDO LOVE!」の企画の一環として、2018年から毎年『北海道はゴールデンカムイを応援しています。』キャンペーンを開催。今年も『ARスタンプラリー2022』として、2022年8月1日(月)~2023年3月31日(金)の期間、全道47か所の観光地をチェックインスポットとしたスタンプラリーが実施されています。
今回は十勝管内のチェックインスポットである「帯広百年記念館」と「幕別町蝦夷文化考古館」を取材してきました。
十勝のアイヌ文化を知る「帯広百年記念館」(帯広市)
「帯広百年記念館」は、帯広・十勝の自然や開拓の歴史などを展示する博物館と、陶芸や七宝などを学ぶ創造活動センターからなる複合施設です。帯広駅からは車で5分ほど。
常設展示室や特別展示室のほか、アイヌ文化や歴史について学べる「アイヌ民族文化情報センター リウカ」が併設しています。
「アイヌ文化情報センター リウカ」は、展示室とは別にあり、無料で利用できますよ。
アイヌの文献や自然に関する資料が多数あります。アイヌ文化の動画は60本あり、見たいものをリクエストできるそう。
『ARスタンプラリー2022』のパネルが設置されているのもこちらの施設です。
今回は「帯広百年記念館」学芸員で係長の池田さん(写真左)と欠ヶ端(かけはた)さん(写真右)にご説明いただきました。欠ヶ端さんは漫画『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修を務められた中川裕先生の教え子で、アイヌ文化に関する研究をされています。
欠ヶ端さんによると、道東・道北は明治以後のアイヌの生活や風俗・ことばについての記録が、道央・道南に比べ少ないそう。「十勝には屯田兵が導入されませんでした。日々の生活に追われる平民の開拓者が大部分だと、地域の文化を俯瞰した資料が残りにくいのでしょう」と池田さん。とはいえ、十勝地方や釧路地方は、ことばや風俗についての記録が比較的多く残っているほうだそう。道北のアイヌについてはほとんどわかっていないといいます。
『ゴールデンカムイ』にも登場する砂金は、歴舟(れきふね)川で江戸時代の前半にたくさん採れていたそうです。明治30年代には100人近くの砂金掘師たちがいて、かなりの利益を上げていたんだそう。昭和に入るとその数は減り、最終的には一部の愛好家だけになりました。
現在、歴舟川がある大樹町では砂金堀り体験イベントが開催されていますが(2022年度は受付終了)、長雨の影響で川の流れが大きく変わってしまい、体験できる場所がなくなってきているそうです。
池田さんは『ゴールデンカムイ』がお好きだそう。取材中もスタンプラリーで訪れた来館者が池田さんから説明を受けていました。
常設展示室内には、アイヌ文化の展示コーナーがあり、数多くのアイヌ民具の展示が見られます。
2022年10月30日(日)までは「帯広百年記念館」ロビーでアイヌ文化パネル展も開催中。同館での展示終了後は、浦幌、上士幌、士幌、幕別、本別、足寄、池田、陸別と十勝の各地を巡回します。
<施設情報>
■施設名:帯広百年記念館、アイヌ文化情報センター リウカ
■住所:北海道帯広市緑ヶ丘2番地
■電話番号:0155-24-5352
■開館時間:常設展示室・リウカ 9~17時(入場は16時30分まで)、創造活動センター 9~22時(夜間の利用がないときは17時30分まで)
■休館日:月曜、祝祭日の翌日(土日の場合は開館)、年末年始
■HP:帯広百年記念館、アイヌ文化情報センター リウカ
閉館前に訪れたい!実際に使われていた貴重な品が並ぶ「幕別町蝦夷文化考古館」(幕別町)
故・吉田菊太郎氏は白人(ちろっと)コタンのアイヌの指導者でしたが、先祖の残した文化財が散逸するのを恐れて、文化財を収集してきました。これらの文化財を陳列・保存するために、吉田氏が管内・道内をはじめ、遠く東京方面に至るまで、各市町村、関係団体、個人に寄付などの協力を仰ぎ、総工費200万円で建設されたのが「蝦夷文化考古館」です。
場所は、帯広駅から車で約20分、幕別市街から約10分です。
館内に陳列されているのは、刀、矢、弓、着物などの生活用品や写真など貴重なものばかりです。1965(昭和40)年に吉田氏が亡くなり、ご遺族が故人の意志を尊重し、翌年に建物ならびに収蔵品すべてを町に寄付しました。
今回、収蔵品について説明してくれたのは幕別町教育委員会学芸員の阪口さん。「帯広百年記念館」学芸員の欠ヶ端さんの後輩で、『ゴールデンカムイ』アイヌ語監修の中川裕先生の教え子、同じくアイヌ文化の研究をされています。
レプリカを展示している博物館も多いなか、こちらに展示されているのは、ほとんどが実際に使われていたもの。展示物の一部をご覧ください。
こちらは、実際に使われていた丸木舟を修復したもの。
アイヌの履物だけでなく、和人が使っていた履物も展示されています。
写真左下のタマサイ(首飾り)は女性が儀式で身につける首飾り。右下はイナウル(儀式用冠)で男性が儀式の際に頭にかぶるものです。
本物のクマのはく製。
こちらは、儀式のときなどに敷物としたり、祭壇を飾るのに使ったりした、ガマという植物で織られたござ。
古い土器や石器なども展示されています。
収蔵品の一部は、現在、白老町のウポポイ(民族共生象徴空間)で行われている第5回特別展示『イコㇿ ウエカリレ -アイヌ資料をコレクションする-』に貸し出しているそうです。
「蝦夷文化考古館」は、残念ながら2023年3月で閉館します。閉館後は、左手の建物を保存し、展示館棟を新設します。収蔵品はこの後に建てられる展示館棟に移される予定だそう。
『ARスタンプラリー2022』のチェックポイントになって来館者は増えたそうですが、外で写真だけ撮って帰る人も多いといいます(スタンプラリーのパネルは置き場所の都合のため設置されていません)。「ぜひ中の展示も見てほしい」と管理人の森田さん。一度閉館前に訪ねてみてください。
<施設情報>
■施設名:幕別町蝦夷文化考古館
■住所:北海道中川郡幕別町字千住114番地の1
■電話番号:0155-56-4899
■開館時間:10~16時
■休館日:火曜、(祝日の場合はその翌日)、年末年始
■HP:蝦夷文化考古館
『ARスタンプラリー2022』は8月からスタートしていますが、すでにすべてのチェックインスポットを制覇した猛者もいるんだとか。すべてをまわるのはなかなか大変ですが、行きやすいところからはじめてみてはいかがでしょうか。ARキャラクターと記念写真を撮ると、一緒に旅行している気分を味わえますよ。
チェックインスポットのなかには冬季休館する施設もあるので、各施設の開館情報をご確認ください。
【参考】北海道はゴールデンカムイを応援しています。 / Catch Hokkaido 実行委員会 北海道
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