MOTHER

帰巣本能をくすぐる…道産子なら一度は聴いたことのある「ぎょれん」のCM制作秘話

2021.11.01

「打った! 打球は大きい、大きいぞ! センター、バック、バックして……取れない! フェンス直撃!」

野球中継を見ているとこんな場面に遭遇することもしばしばです。

では、突然ですがここで問題。

札幌ドームの外野フェンスで、センター真正面のすぐ左隣にある広告はどこの企業のものでしょう?

……答えは“ぎょれん”こと「北海道ぎょれん」。今回は「北海道ぎょれん」が放映を続けるあのCMの秘密を探ります。

「北海道ぎょれん」とは?

「北海道ぎょれん」は、全道の漁協が出資して1949年に組織された、北海道漁業界の指導・経済事業を担っている協同組合連合会です。地域ごとにさまざまな特徴を持つ北海道の漁業者をつなぎ、支える存在といえるでしょう。

生産者・漁協・「北海道ぎょれん」が三位一体となって、北海道漁業の安定、安全・安心で良質な水産物の円滑な提供を日々追求しているそうです。さまざまな水産物が私たちのもとに届けられるのには、ただ単に豊かな漁場がそばにあるだけではないのですね!

哀愁ただよいロマンあふれるCM曲「MOTHER」

そんな「北海道ぎょれん」には2010年12月から通年放送を続けているテレビCMがあります。その名も“3つの海篇”。北海道にお住いの方であれば、一度は見たことがあるのではないでしょうか? そして、流れてくるメロディーに心奪われた方も多いのではないでしょうか?

どんなCMだったっけ?という方のためにも、まずは実際のCMをご覧いただきましょう!

このCMでは、海や漁の映像に見事にマッチした曲が使われています。実はこの曲、一部界隈でかなり熱狂的なファンがいるのだとか。実際、筆者の高校時代の音楽好きな友人も、この曲のことをすごく気に入っていました。今でも「北海道ぎょれん」にはこの曲に関しての問い合わせがあるそうです。

今回担当者にお話を伺ったところ、この曲はこのCMのためだけに制作された楽曲で、曲名・歌詞・歌手名などは一般には公開していないそうです。そのため、歌詞から取った『MOTHER』が通称として使われ定着しています。CM放映部分以外のパートを含むフルバージョンの音源も存在せず、今後販売する予定もないそうです。少し惜しい気もしてしまいますね。

今回、歌詞をご提供いただきました。間違いなく永久保存版です。

■『MOTHER』歌詞

I haven’t seen her in years

small letter is missing

but when I imagine the blue

La La La  La La La…

you are at a distance of zero (from me)

 

Do you see me everytime?

Do you love me, my dearest?

 

Mother

Mother

Mother.

 

Everytime Do you love me, my dearest?

 

Mother

Mother

Mother.

 

<意訳>

もうあのひとにはずっと会っていない

あの手紙もどこかへいってしまった

でも あの時の澄んだ青を思い浮かべれば

いつでもあの人と私の距離はゼロ

 

いつでも私を見守ってくれるのですね

私を好きでいてくれるんですね

 

母なる海よ

母なる海よ

母なる海よ……

なんて素敵な歌詞でしょう! いったいどのようにこのCMや『MOTHER』は生まれたのでしょうか。

「3つの海」と「MOTHER」に込められた想い

このCM“3つの海篇”は、北海道の漁業・水産物に対する認知度向上、イメージアップを目的に制作され、主に北海道内を中心に放映されているとのこと。道内在住者に水産業をより知ってもらいながら、生産者の顔が見えるCMを通じて北海道産水産物を安心して食べてほしいという想いが込められています。

ところで、CMタイトルにある“3つの海”とはなんでしょうか? 北海道のまわりを囲む日本海・太平洋・オホーツク海のことを指しているのでしょうか。

実は、このCMに登場する映像は、北海道の三大水産物といっても過言ではない“秋鮭”“ほたて”“昆布”それぞれの漁・水揚げの様子なんだそう。それぞれが全道3か所にわたって撮影され、“3つの海篇”というタイトルのゆえんにもなっています。

撮影は、出漁のシーンから始まり、船上での水揚げの様子、そして再び港に戻ってくる生産者の躍動感ある姿を通じ、漁業の臨場感・ストーリーを感じられる構成です。

そんなストーリーを引き立てるべく、『MOTHER』は厳しくも優しい自然(海)を相手に、海の男たちが必死にたくましく働く姿の映像にふさわしい楽曲として制作されました。コンセプトは“母なる海”、“我々は海から命をいただいている”。そんな思いが曲に込められているそうです。

 

本州にいながらにして『MOTHER』を聴くと、どこか帰巣本能をくすぐられている気分になるのは筆者だけでしょうか。今や北海道そのものを想起させ、愛される楽曲。いつでもあなたを見守ってくれています。

<取材協力>
■団体名:北海道漁業協同組合連合会
■住所:北海道札幌市中央区北3条西7丁目1番地
■HP:https://www.gyoren.or.jp/

【画像】北海道漁業協同組合連合会