十勝農園外観

料理を通して、ストーリーを繋ぐ。自然と大地を感じる「十勝農園」

2020.08.25

十勝地方、広大な大自然の中に、人の想いを丁寧に繋ぐ一軒のお店があります。生産者と料理人が互いに尊い存在として認め合う。そんな飲食店である『十勝農園』取締役副社長兼総料理長の馬渕善範さんにお話を伺いました。

「物語を止めない」想いを継承するために

十勝農園

農業に関わる生産者と言われる方々には、皆さんそれぞれに想いがあります。作物を育てる土壌へのこだわり、自然環境への配慮、美味しさの追求……などなど。それらをあげていくとキリがないほど。しかし、多くの場合、私たち消費者は生産者さんの想いはもちろんのこと、生産者さんの名前や顔すらも知らずに食べ物を口にします。「生産者さんのこだわりや、出荷に至るまでのストーリー(プロセス)を感じ取り、料理を口にするお客様に伝わるように最大限の努力をする」馬渕さんはそう語ります。

互いにリスペクトし合える関係づくりを目指して

ストーリーがお客様に伝わるとは、一体どういうことなのでしょうか。『十勝農園』のスタッフが教育を受け、料理を提供する際に一言説明を添えることでしょうか。その答えは、『十勝農園』に訪れるお客様をはじめ、十勝に暮らすより多くの方に生産者さんを知って欲しいという思いで行っている、生産者さんの“顔が見える取り組み”にありました。

十勝農園

例えば、“人と人との思いやりと同じで、思いやりを持って土と向き合い、愚直においしい野菜づくり”という想いを抱きながら農業を行う『吉田農場』のごぼうを使用したメニュー。

「吉田さんが育てるごぼうは太くて甘味が強いのに、口にした瞬間に繊維がほどける感覚に感動を覚える。そしてさらに、その中でも品質の良いものを選別して十勝農園に卸してくれている」このことを知った馬渕さんは、自分も吉田さんに何か貢献できないかと考え、十勝のとあるイベントで『吉田農場』のごぼうを使った料理教室を開催。『吉田農場』のごぼうだからこそ作ることができる、素材の美味しさを引き出す『十勝農園』の実際のメニューを受講生の方に惜しみなく教えたのです。

十勝農園外観

出典: 十勝農園

料理教室の他にも、美味しい素材を卸してくださる生産者の方々には、言葉だけではなく行動で感謝を示す馬渕さん。北海道のお米が育んだ奇跡の卵と呼ばれている『米艶』を育てる竹内養鶏場さんに対しては、竹内さんの卵を使用したスフレやオムレツなどの卵料理を振る舞うフェアを開催。広大な土地で育てられる甘くて大きなメークインを卸してくださる一ノ瀬農場さんに対しては、実際に数週間もの間、畑をお手伝い。生産者さんの一次産業にかける思いを肌で感じて、食材がお客様の口に入るまでのストーリーを共に歩む。そして、『十勝農園』がストーリーを繋ぐ最後の場所だという責任を持って料理を提供する。そんな姿勢を貫いています。

「私たち(料理人 )だけが生産者さんと繋がりを持ち、信頼関係を築くのではなく、お客様にも生産者さんの顔や人柄を知ってもらうことで安心して料理を口にしていただきたい。“味”だけを感じるよりも、“人の顔やストーリー”が思い浮かぶ料理は、きっと、もっと、美味しいはず。『十勝農園』はそういう料理を提供する場所でありたい」と語ります。

 

「十勝に訪れた際は、十勝のものを食べていただきたい」「十勝のものを食べる際は、その生産者さんのことも知っていただきたい」これが、馬渕さんが料理を通して伝えたい“想い”です。テーブルの上に十勝の自然と大地、そしてストーリーを感じられる『十勝農園』へ、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

■店名:十勝農園
■営業時間:17:30〜23:00
■定休日:日曜日(祝日の場合は営業。翌日休日)
■住所:北海道帯広市西1条南9丁目6番
■電話番号:0155-26-4141
■HP:http://tokachinouen.com/index.php