人気ご当地グルメには深い歴史があった!? 労働者を支えた「炭鉄港めし」
2019(令和元)年5月に日本遺産に登録された『本邦国策を北海道に観よ!~北の産業革命「炭鉄港」~』(以下、炭鉄港)。
近代の北海道を築く基となった三都(空知・室蘭・小樽)を、石炭・鉄鋼・港湾・鉄道というテーマで結んだこの産業革命のストーリーを基に、『炭鉄港推進協議会』が『炭鉄港めし』ガイドブックを2021(令和3)年2月に発行。労働者たちを支えた食事がまとめられ、特設サイトも公開されています。
「サァ、めしの時間だ」労働者を支えたグルメを紹介
『炭鉄港めし』ガイドブックでは、炭鉄港の労働者を支えたさまざまなグルメが掲載され、下記のように定義づけられています。
『炭鉄港めし』とは、日本遺産である炭鉄港ストーリーを食の視点から紐解き、ただの食事としてではなく、そのひとつひとつが資料的価値のあるものと定義付けました。
各地でいろんな『炭鉄港めし』がありますが、ガイドブックでは代表的な7つをメインに取り上げています。
芦別市:ガタタン、炭鉱ホルモン
美唄市・岩見沢市:美唄焼き鳥
赤平市:がんがん鍋
夕張市:カレーそば
室蘭市:室蘭やきとり
小樽市:もち菓子/ぱんじゅう
そのなかで、筆者がおすすめする3つのメニューを感想とあわせてご紹介します!
1:赤平市「がんがん鍋」
赤平市の『炭鉄港めし』は『がんがん鍋』。炭鉱で働く人たちの家庭料理としてさかんに食べられていたホルモン鍋を、『赤平の食を考える会』が2005(平成17)年に『がんがん鍋』と命名しました。“がんがん”には「ストーブをガンガン焚いて、ガンガン煮込んで、ガンガン食べて、ガンガン語り、ガンガン働く」という想いが込められているそう。
具材は豚ホルモン、豆腐、玉ねぎなどの野菜。市内数店舗で提供されていますが、お店によって具材やスープが違っているのが特徴です。筆者は味噌ベースのスープでいただきましたが、豚ホルモンはまったく臭みがなく、濃いめの味噌とトロトロの玉ねぎの甘みが食欲をそそり、ご飯との相性が抜群でした。
2:室蘭市「室蘭やきとり」
室蘭市の『炭鉄港めし』は『室蘭やきとり』。製鉄所が設立された室蘭市輪西地区に並んだ屋台で昭和初期に始まったとされています。
“やきとり”といっても使われているのは豚の精肉で、肉と肉の間に挟まれているのは長ネギではなく玉ねぎになっているのが特徴。タレは濃い味付けで、洋がらしが一緒に添えられています。
今では食文化としても定着。居酒屋でも提供している店が多く、店ごとにオリジナルのタレとなっているので食べ比べてみるのもおすすめ! ビールのおつまみに、おかずにと幅広い年代の市民に愛されているメニューです。
3:芦別市「ガタタン」
芦別市の『炭鉄港めし』は『ガタタン』。“ガタタン”は中国の家庭料理『含多湯(ガタタン)』からヒントを得て創作したとされています。本来ガタタンはスープのみでしたが、現在でも芦別市内でチャーハンや焼きそばなどのアレンジメニューとして提供されているとのことです。
そのアレンジメニューのなかで、筆者はガタタンラーメンをいただきました。白菜、玉ねぎ、もやし、ねぎ、えび、かまぼこなど具だくさんでとろみのあるスープには溶き卵も! ちぢれ麺にスープがよく絡み、あっさりしていながらもしっかりスープの旨味が感じられました。最後まであつあつで食べられるのも嬉しいですね。
日本遺産『炭鉄港』の構成文化財を見学に行かれた際は、その土地ならではの『炭鉄港めし』もぜひ味わってみてください!
【参考】
炭鉄港めし 特設サイト/ 炭鉄港推進協議会
炭鉄港ポータルサイト/ 炭鉄港推進協議会
【画像提供】炭鉄港デジタル資料館