
この夏始めるばんえい競馬。初心者がプロの予想家に見どころを聞いてみた!【ばん馬の見方、プロが教えます。#2】
専門家がばんえい競馬の”今”を紹介する連載『ばん馬の見方、教えます。』第2回目は、2025年8月10日(日)に開催される『ばんえいグランプリ』をはじめ、“夏のばんえい競馬”の楽しみ方をお届けします。
お話を伺ったのは、競馬専門紙『競馬ブック』のトラックマン(競馬新聞の記者)として長年ばんえい競馬に携わってきた定政紀宏さん。ばんえい競馬初心者ライターにもわかるよう、今夏の見どころをやさしく教えていただきました。
定政 紀宏(さだまさ のりひろ)
1971年生まれ、北海道出身。競馬専門紙『競馬ブック』ばんえい競馬・本紙担当。
入社以来約30年間、ばんえい競馬一筋。ばんえい競馬の特徴である障害を重視した、的中率の高い予想が人気。
ほかの競馬とはひとあじ違う。ばんえい競馬の見どころとは?

『競馬ブック』の記者として、30年以上ばんえい競馬を見守ってきた定政さん。ほかの競馬にはない、ばんえい競馬の魅力を教えてください。
まずは、ばん馬の迫力ですね。ばんえい競馬では、体重が約1トンもある大きな馬がソリを引きながら、“障害”と呼ばれる2つの山を越えてゴールを目指します。スピード感のある競馬と違ってパワー勝負になるので、その力強さに魅了される方が多いです。
レース展開がゆっくりで、時間をかけてレースを楽しめるのもばんえい競馬ならでは。全力疾走してしまうと途中でスタミナが切れてしまうため、騎手は2つの障害の間で馬を止めて息を整えさせます。その間にじっくり馬の様子を観察できますし、コースの真横を一緒に歩きながら観戦できる点もユニークです。
声が届くぐらいの距離で見られるので、馬や騎手にじかに声援を送れるのもうれしいですよね。どこで馬に息を入れさせるか、騎手の戦略も見どころです。
「夏」のばんえい競馬は、ほかの季節と比べてどんな違いがありますか? 見るべきポイントがあれば教えてください。

夏は馬がバテやすいので、体調の良し悪しがレースに大きく影響します。馬のコンディションが表れるのが馬体重です。ばん馬の場合、10kg程度の差ならさほど影響はありませんが、25kg以上減っていると調子が悪いかもしれません。出馬表に体重の増減が書かれているのでチェックしてみてください。
パドックで直接馬の様子を見るのもおすすめです。息づかいの荒い馬は疲れている可能性が高いですね。また、牡馬のほうが夏バテしやすいのに対し、牝馬は繁殖期を終えて状態が上がってきます。そのため、「夏は牝馬を狙え」とよく言われます。

馬場の状態としては、夏は乾燥して砂っぽくなるため、ソリが滑りにくく足も取られやすいです。そのため、スピードよりもパワー勝負になる傾向にありますね。
夏の大一番「ばんえいグランプリ」ってどんなレース?注目馬をご紹介
直近のビッグレースとしては7月13日に「旭川記念」がありました。その結果も踏まえ、今シーズンの傾向はいかがでしょうか?

今シーズンは、ここまで絶対王者不在のいわゆる戦国時代状態。メムロボブサップという最強馬が騎手のけがで出走しておらず、その最大のライバル馬も昨シーズンで引退したため、誰が勝ってもおかしくない状況でした。そのなかで台頭する馬もこれまでとは変わってきていますね。
2025年8月10日には「ばんえいグランプリ」が開催されますね。そこでの注目馬を教えてください。

はずせないのは、2025年7月末に復帰した王者メムロボブサップですね。付け入る隙がないほどの圧倒的な強さで、『ばんえいグランプリ』も4連覇しています。ばんえい競馬ではシーズン中の獲得賞金によってソリに重量が追加されますが、これまで出場していなかった分、そのハンデもありません。向かうところ敵なしではないでしょうか。
そのほか、コマサンエース、インビクタ、クリスタルコルドも要注目です。

コマサンエースは遅咲きの馬で、芽が出るまで時間がかかりましたが、昨シーズンから急激に成績を伸ばしています。もともと障害を越えるのが上手な馬でしたが、さらにスタートが良くなり、確実に強くなっています。

インビクタはスピードタイプですね。ただし、重い荷物が苦手なので、ソリの重量が850kg以上になると厳しくなりそうです。

クリスタルコルドはもともと同世代の馬のなかで3~4番手でしたが、昨年の春に大きなレースで連勝し、2025年の『旭川記念』でも優勝しています。スピードは平均的ですが、疲れにくいタイプです。こちらも重い荷物が苦手でしたが、昨年からの経験値に期待したいですね。
「ばんえいグランプリ」の後には8月24日に「はまなす賞」が開催されます。こちらの予想はいかがでしょうか?

『はまなす賞』は冬の『ポプラ賞』と並んで、2世代合同で行う特殊なレースです。3歳馬と4歳馬の獲得賞金上位5頭ずつが出走します。
3歳馬はデビューから1年しか経っていないうえ、昨年まで軽い荷物でレースをしているため、重い荷物の経験値が高い4歳馬のほうが有利になりますね。その代わり、3歳馬はスピード勝負に慣れています。天候によって水分量が増えて馬場が固くなり、スピードが出しやすくなると、3歳馬にもチャンスがありそうです。
理由は「名前が好き」でいい。”推し馬”を見つけて応援しよう
ここまで、たくさんの見どころや注目馬を教えていただきました。初心者がばんえい競馬を楽しむうえで最も大事なことはなんでしょうか?

これからばんえい競馬を始める方には、まずはとにかく馬を好きになっていただきたいですね。入り口は、馬や騎手の名前が好き、親近感が湧く、かわいい、かっこいい。それでいいと思います。100円でいいので馬券を買ってみると、レースがより身近に感じられ、応援にも自然と熱が入ります。
そこからレースの様子がわかってきたら、競馬新聞に載っているタイムや、騎手が馬を止めるタイミングなどを見ていくといいと思います。
最後に、この記事を読んでばんえい競馬に興味を持った読者へ、メッセージをお願いします。

ばんえい競馬では、お客さんの声援がとても大事になります。馬や騎手の間近で応援することができる貴重な競技で、人馬一体なのは騎手と馬だけではなく、お客さんも同じです。なかなか障害を越えられない馬に最後の最後までエールを送り続け、みんなで見届ける様子には、胸を打つものがあります。
みなさんもぜひ帯広競馬場に来て、その声でレースを盛り上げてください。みんなで一緒にゴールを目指しましょう!

たまき あまね
初心者にもわかりやすく、おもしろいポイントや注目馬を教えてくださいました!「馬がかわいい」「名前が好き」から入ればいいと聞いて、さっそくお気に入りの馬を見つけたくなりました。ぜひ帯広競馬場に応援に行きたいと思います!
文/たまき あまね 画像/ばんえい十勝
連載『ばん馬の見方、教えます。』では、『ばんえい競馬』に精通する専門家が、“今”のばんえい競馬について紹介していきます。次回もお楽しみに。
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