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ほろほろ溶ける豚骨と野菜がしみる!アイヌの文化を紡ぐお店(帯広)
帯広市にある「北の屋台」。和食やイタリアン、中華などさまざまな飲食店20店ほどが軒を連ねます。
その中にある「ポンチセ」は、道内でも珍しい“アイヌ料理”のお店。おいしいごはんと店主さんのあたたかさで身も心もほぐれてしまうお店をご紹介します。
夢を叶えてオープンした「ポンチセ」
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出典: 北海道Likers
「ポンチセ」は帯広市「北の屋台」の中にある、アジアン・アイヌ料理のお店です。
店主は豊川純子さん。アイヌの血を引いているという純子さんが、子どものころから慣れ親しんだアイヌ家庭料理や周辺地域の食材を使った創作料理、そのほかアジア各国のおつまみなどが楽しめます。
お店をはじめたのは約6年前。純子さんがガンを患ったことをきっかけに、「北の屋台」でお店を開くという長年の夢を叶えるためにオープンを決意したそう。
地元産の食材とアイヌの文化を満喫!
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出典: 北海道Likers
同店は、マイルドで甘酒のようなアイヌ伝統のお酒『カムイトノト』や、少し複雑で優しい味わいのアイヌのハーブティー『エント茶』など、ここならではのドリンクメニューが豊富。
何を注文するか迷ってしまいますが、筆者は豊頃町「小笠原ファーム」の麦芽を使用したクラフトビールで乾杯しました。
お通しは『インカのひとみ』を使った肉じゃが。『インカのめざめ』はよく聞きますが、『インカのひとみ』とは珍しい! 食べてみると、少し粘り気のあるような食感で、甘くコクのある風味がしました。
お通しから希少なおいしいお料理で、期待が高まります。
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出典: 北海道Likers
お料理はまず、手軽に食べられる『鹿サラミ』と『チポロイモ』を注文。
『鹿サラミ』を一口食べて驚いたのは、臭みがまったくといっていいほどないこと。噛めば噛むほど鹿肉のジューシーな旨みが口の中に広がります。
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出典: 北海道Likers
『チポロイモ』はマッシュポテトにいくらが混ぜ合わされた、アイヌの代表的な家庭料理です。「チポロ」はアイヌ語で「いくら」という意味なのだとか。
まるでスイーツのようなじゃがいもの優しい甘さと、いくらのほのかな塩味が相性抜群です。
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出典: 北海道Likers
同店を訪れたらぜひ食べていただきたいのは『ポネオハウ』。豚骨で出汁を取り、人参やネギなどさまざまな具材を入れた汁物です。出汁を取ったあとの豚骨も入っており、骨に付いたお肉もかぶりついておいしくいただくことができます。
その昔アイヌの人々が貧しい暮らしをしていたころ、大切な食糧を無駄なく食べられるように生まれた料理なのだとか。
じっくり煮込まれた豚骨と野菜はとてもやわらかく、ほろほろと溶けてしまうような食感。食材の味が汁に染み出て、とても優しい味わいでした。
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出典: 北海道Likers
もっといろいろな料理を食べてみたくなって注文したのは、『シケレベの実入りスパイシー角煮』。
「シケレベ」はアイヌ語で「キハダの実」のこと。キハダはミカン科の植物で、柑橘類らしいすーっとした爽やかな香りが料理の中で存在感を放ちます。味付けにはハッカクなども使用。一口食べれば複雑でエスニックな香りが口の中に広がります。
ピリリとちょうどよい辛さがクセになり、お酒との相性もいいですよ。
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出典: 北海道Likers
『忠類産幻のゆり根「月光」のバター焼き』もぜひ味わってほしい一品。ほくほくのゆり根は甘さたっぷりで、まるでデザートのようでした。
ほかにも同店には、おつまみにちょうどいい『音更産パクチーのキムチサラダ』や『中札内田舎どりのスパイシー唐揚げ』など、地元・十勝の食材を使用した料理がたくさんあります。店主の純子さんにおすすめを聞きながら、十勝の食材とアイヌの食文化を愉しんでください。
人と繋がれることが嬉しい
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出典: 北海道Likers
自らの夢を叶えて約6年間お店を営んでいる純子さん。お店を起点に人の繋がりが生まれていることがやりがいだと話します。
「私の時代はアイヌの出自を隠していた人が多く私もその一人でした。北海道の中では”アイヌの方ですか?”と聞くこともタブー視されるされる雰囲気があります。しかし私のお店はアイヌ料理のお店なので、アイヌの血を引いていることだとか、アイヌにまつわる話をしやすいと思います」
純子さんの妹さんはバンドでアイヌの曲を歌っており、お店でライブイベントをしたこともあるのだとか。
「アイヌの音楽や踊りをやっていても、民間レベルではなかなか披露する機会がありません。私のお店がアイヌの話をしたり文化に触れたりするきっかけになったらいいです。子どものころ関係が途切れてしまった人たちに再会できるなど、お店をやっているからこそ、さまざまな人と繋がれることが嬉しいです」
筆者が伺ったときには、1週間の帯広出張中に4回も同店を訪れているというお客さんも。地元の人から観光客まで虜にしてしまう「ポンチセ」の一番の魅力は、店主・純子さんのお人柄にあるように感じました。
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■ポンチセ
■所在地:北海道帯広市西1条南10丁目7番地 北の屋台内
■電話番号:080-6077-3763
⇒営業時間など詳細はこちら
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