アイキャッチ うまげ屋

「十勝がダントツで好きだった」十勝×香川で新たな美味しさを生み出す!うどん屋オーナー(幕別町)

帯広市の東に位置する幕別町。なかでも帯広に近い札内地区の国道沿いは賑やかな商業地域になっており、多くの車が行きかいます。

そのエリアから一歩離れた札内川沿いに突然現れるのが、「さぬきうどん十勝うまげ屋」。可愛らしいグリーンの平屋の店舗と、看板の「さぬきうどん」の字が目立ちます。「さぬきうどん十勝うまげ屋」の店主、森田さんにお話を伺ってきました。

55歳で決断「十勝で開業する!」

「さぬきうどん十勝うまげ屋」店主・森田哲彦さんは香川県出身。長いサラリーマン生活のなかでたくさんの転勤を重ね、帯広や旭川など道内を含む全国各地を回ってきました。「定年後に住むなら十勝!」と50代に入ったころから心に決め、土地を探し、家を建て、少しずつ準備を始めていました。

十勝の好きなところを伺うと、「何よりもこの大自然」と答えてくれました。森田さんはバイク好きで、雄大な大地、まっすぐな道は走っていて気持ちがいいそうです。「冬はやっぱり寒いけど、その分四季を楽しめるところがいいよね」といいます。全国あちこち転勤してきたなかで十勝がダントツで良かったそうで、土地柄もさることながら、十勝の人々の管外の人を受け入れてくれる空気が心地よかったそうです。

サラリーマン時代にうどんを打ったことはなく、55歳で退職後、短期の職業訓練に通いました。香川県の職業訓練には『さぬきうどん科』という全国でも珍しいカリキュラムがあり、基礎からうどん店開業に向けて取り組みたい人にぴったりの内容でした。

洋風で「うまげな」店舗

香川県の方言で「うまげな」とは、“調子がよい”など状態がすこぶるいいことを指します。「うま」と聞くだけで筆者は“美味しい”という意味と勘違いしていたので、ちょっと驚きでした。「実はそれにも少しかけているんだよ」と笑う森田さん。さすがです。

店舗はかつて和風なお蕎麦屋さんだったので、洋風にしたいと思い、グリーン系の内外装にしたそうです。飾られている懐かしい気持ちになるおもちゃにも注目です。

香川で学んだからこそのこだわり

香川県の農家さんは、人が集まりもてなす際にうどんを打ってふるまうことがあるそうですが、森田さんが過ごしていた高松市内では、自分たちで打つよりも食べにいくのが主流。お昼ごはんは迷わずうどん。日によっては3食うどんの日があるのも珍しくないそうです。

それもそのはず、香川県は人口1万人当たりの「そば・うどん店」事業所数が5.60店と全国1位。製麺所でうどんが食べられるところもあるため、それを含めると、もっとたくさんのうどん店があるのでないかと考えられています。コロナ禍以前はかけうどんが120円ほどだったとのことで、天ぷらと合わせてもワンコイン以下。昔からのうどん文化があるのはもちろん、手軽にすぐ食べられて安いというのも変わらぬ人気の理由のようです。

“うどん”と聞けばコシの強さが最初に思い浮かびますが、森田さんいわく、香川県民はそこまでコシにこだわっていないとのこと。あまりコシが強いと食べるのに時間がかかり、サッと食べたい人には不向き。森田さんは“コシ神話”が広がりすぎていると感じることもあるそうです。「さぬきうどん十勝うまげ屋」のうどんは適度なコシと舌触り。「さぬきうどんのベーシックな味を十勝の人に味わってもらいたい」という想いでうどんを打っているのだとか。

「さぬきうどん十勝うまげ屋」のうどんの打ち方は『すかし打ち製法』。麺棒に麺を巻き付けて、打ち台に軽く叩きつける手法です。このやり方は職業訓練で学んだものの、自分の店で研究を重ねるなかでできるようになったそう。十勝管内でも手打ちうどんが食べられるお店は少ないので、召し上がる際はそんなことも思い出してみてください。

生まれ育った香川の小麦と大好きな北海道の小麦をブレンド

うどんに使用する小麦は、香川県の『さぬきの夢』と北海道の『きたほなみ』をオリジナルで配合しています。

『さぬきの夢』は香川県の農業試験場が開発した小麦。県内でも安くて品質のよい海外産を使うお店が多いなか、県産の小麦が失われてしまわないようにと作られました。できた当時は、挑戦者たちを取り上げる、とあるテレビ番組でも紹介されたそうです。

『きたほなみ』はそれだけで打つと固くごつごつした舌触りになり、『さぬきの夢』はやわらかく艶やかで“女性的”な印象があるそう。それらをちょうどよくブレンドすることで、森田さんの求めるベーシックなさぬきうどんが出来上がりました。

お出汁は瀬戸内海のイリコ(煮干し)を使用しています。当初出していたお出汁は澄んだ優しい味わいだったのですが、少し物足りなさがあると近しい人たちから指摘を受け、少しだけ改良し、お醤油を足したそう。お醤油は名古屋の白醤油と、関西圏で使われる薄口醬油を使用しています。

一番人気は「とり天うどん」

人気メニューは『とり天うどん』。“とり天”はもともと大分県の名物ですが、それが香川県にも伝わり人気を博しています。ザンギよりもふんわりとした食感の“とり天”は「さぬきうどん十勝うまげ屋」でも売り切れる日があるほどの人気で、連日多くのファンが注文しています。お持ち帰りもできるので、自宅で味わうのもいいですね。

豊富なメニューのなかで、店主としての一番のおすすめは『生醤油うどん』。麺をザッと茹でて冷水で締めただけの、うどんの刺身のようなもの。理由を伺うと、これが、一番麺の味がよくわかる香川県のベーシックな食べ方なんだとか。冬でもこれを頼む方がいると、「おっ、麺通が来たな!」と思われるそうです。

 

最後にこれからの展望を伺うと、「できるだけお店を長く続けること。そして十勝の人に、もっとさぬきうどんの美味しさを伝えていくこと」と、シンプルに力強く答えてくれた森田さん。筆者もいち「さぬきうどん十勝うまげ屋」ファンとして、舌鼓を打ちながら、一人でも多くの方に魅力をお伝えしていきたいと思いました。

<店舗情報>
■さぬきうどん十勝うまげ屋
■住所:北海道中川郡幕別町札内西町30-10
■電話番号:0155-29-1063
⇒営業時間など詳細はこちら

【参考】香川県
ふるさと香川の方言 ふるさと民話 / 香川県
うどん県統計情報コーナー(「そば・うどん店」の事業所数) / 香川県

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