世代を超えて愛される老舗洋食店。70年以上前から変わらぬ味は全国からも注目の的(旭川市5条通)
旭川の老舗洋食店の中でも70年以上の歴史のあるお店はなかなかありません。
昭和24年創業の「とんかつと焼肉の店 自由軒(以下、自由軒)」は、旭川市内中心部の買物公園の中小路にある定食屋さん。テレビドラマの舞台となり全国的にも有名な老舗店は、世代を超え多くの人に愛される人気のお店です。
中小路の少し奥まった路地を入ると、昭和らしい懐かしい雰囲気の漂うお店が。建物は戦前からあるのだとか。今回は、旭川市民が誇るお店「自由軒」の大将にお話を聞きました。
創業1949年。劇場や商店街に囲まれていた「自由軒」
お話を聞いたのは、オーナーの田中輝彦(たなか てるひこ)さん。76歳。「自由軒」の2代目です。創業者は田中さんのお父さんで、当時、田中さんはまだ学生でした。
「戦前の『自由軒』は今の場所から少しだけ離れた場所にあったんです。当時は、映画館である『自由劇場』や商店の並ぶ『自由商場』がある周辺にお店を構えていたため、店名も『自由軒』になったんだと思いますね」と田中さん。
現在は田中さんがお店を引き継ぎ、長男の範東(のりもと)さんも一緒に厨房へ立っています。範東さんは東京銀座のフランス料理店で経験を積んだあと、フランスやスペインで修業を重ね、実家に戻ってこられました。
現在は、調理を担当するのは範東さん。「戻ってきてくれてよかったな、と思いましたね。安心しました」と話す田中さんです。
看板メニューは「わらじ焼肉」!人気メニューは「肉ライス」
「自由軒」のメニューは看板の通り肉料理が豊富。「肉は脂身で決まると言ってもいいくらい。脂が大事なんです」田中さんはそう言って、立派な豚肉を冷蔵庫から出して見せてくれました。
看板メニューは『わらじ焼肉』。450グラムもの豚肉に濃厚なタレがかかったトンテキはボリューム満点です。
人気のメニューは店内の黒板にランキング形式で書かれていました。
『肉ライス(ポークチャップ)』、『五郎セット』(テレビドラマ『孤独のグルメ』に登場)、『ロースかつ』、『塩やき』、『カニコロッケ』と続きます。
ランチタイムに行きましたが、周辺のサラリーマンや観光客らしき人など次々とお客さんが来店する人気ぶり。お肉を中心としたラインナップですが、老若男女に愛されています。
念願の「カニコロッケ」をいただく。レストランの味
筆者は一度こちらで『五郎セット』をいただいたことがありました。『五郎セット』は、カニコロッケとホッケフライの定食。そのとき食べたカニコロッケの味わいが忘れられないほどのおいしさで、またいただきたいと思っていたのです。
今回の取材で、念願のカニコロッケに再会できました!
田中さんは「ここにあるよ、ソースが合うから」とソースを指して言いながら、カウンターにカニコロッケを置いてくれました。あとから熱々のごはんとお味噌汁、お漬物が運ばれてきます。
ソースをかけて、カニコロッケを堪能しました。とろけるようなおいしさのカニクリームとさくさくの衣、熱いお味噌汁と炊き立てご飯、合間に食べるお漬物……。何もかもが相性抜群です。
田中さんのお父さんの代からずっと変わらない味わいと、範東さんの取り入れた新しい味わいがうまく融合し、常連さんから若い方、観光客など、さまざまな人にとって恋しくなる味となっているのです。
変わりゆく旭川中心部・買物公園の中で、変わらぬ味を
旭川の駅前から約1kmに及ぶ恒久的歩行者天国・買物公園も、1972年から50年余りで様相も変わってきました。デパートやお店が次々となくなり、駅前にはホテルが立ち並び、空き地にはコインパークができました。
「自由軒」のある5条通は旭川市役所の近くにあるため、サラリーマンのランチなどでまだ賑わっています。「自由軒」の目の前には、2022年夏オープン予定のフードテラス建設に向けて盛大な工事が進んでいました。
時代と共に町の様子が変わっていく中でも、「自由軒」は戦前の建物のまま、変わらぬ昭和の雰囲気と味わいをきっといつまでも守り続けていくのでしょう。
「昔は忙しかったよ。何時間働いたかわからないね、寝る間も惜しんで仕込みや片付けをしていたから。今は息子がいてくれて安心だ。そりゃ、うれしいよ」と話す田中さん。お会計も田中さんの仕事。お客さんは「自由軒」での食事だけではなく、田中さんとの会話も楽しみにしているようでした。
今はテレビドラマの影響で全国的な人気スポットとなり、聖地巡りで訪れる人の行列ができる日もありますが、地元民にとっても大切にしたいお店のひとつ。田中さんの笑顔とおいしい食事を楽しみに、誰もがつい通いたくなるのです。
<店舗情報>
■とんかつと焼肉の店 自由軒
■住所:北海道旭川市5条通8丁目左2号
⇒営業時間など詳細はこちら
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