「ばんえい記念」は馬の頂点を祝う感動のセレモニーだった【ライターレポート】
広大な北海道の十勝平野にある帯広市。その中心部の帯広駅から車で7分ほどの市街地に『帯広競馬場』があります。
そんな『帯広競馬場』で開催される『ばんえい競馬』は、世界で唯一の特別な競馬です。
よく知られるサラブレッドの競馬は疾走するスピード感が魅力ですが、『ばんえい競馬』は体重が1トンほどの巨大な“ばん馬”たちがゴールを目指して重いソリを引くレースです。
今回は、2024年3月17日(日)に開催された『第56回ばんえい記念』の様子をお届けします。
ばんえい競馬最高峰のレース「ばんえい記念」とは
『帯広競馬場』では原則、毎週3日間レースが行われ、1レースは最大で10頭が出走し、レース数は1日12レース。そのため毎日100頭ほどのばん馬たちが登場しています。
毎週3日間のレースのためには300頭ほどが必要になる計算です。休養する馬も含め、たくさんの馬たちが『帯広競馬場』の中で暮らして日々調教に励んでいることになります。
『ばんえい競馬』は毎年4月にシーズンが開幕し、翌年3月までの間にレースが開催され、その間にばん馬たちは出走を重ねて勝敗を競い成績を残していきますが、ばんえい競馬に関わるすべての馬・人がめざす、“ばんえい競馬最高峰”に位置するレースがあります。
それが、シーズン最後の重賞レース『農林水産大臣賞典・ばんえい記念』です。1年間で最も強い馬を決めるチャンピオンレースで優勝することが憧れの目標なのです。
「第56回ばんえい記念」当日の会場内の様子
『帯広競馬場』に到着すると、競馬場の周辺には『ばんえい記念』のために作られた旗飾りが並びます。
入り口では立派なばん馬・イレネー号の銅像が迎えてくれました。明治43年にフランスから来た日本のばん馬の始祖の馬で、市民の募金で建立されたのだそうです。ばん馬は地域の人々に長く愛されているのがわかります。
この日は大雪が降りしきる荒天ですが、競馬場の入場ゲートには続々と観戦のお客さんが続きます。地元の方はもちろん、この日のために飛行機に乗って来るファンも大勢いるそうです。
取材の目的の『ばんえい記念』は第7レース。筆者が競馬場に到着したときは、第6レースのスタート直前でした。
競馬場のスタンド内部に入ると、溢れんばかりの観戦客で混みあっていました。レースの情報が表示されるディプレイも並んでいます。
また、『ばんえい記念ポスター』(660円)も販売されていました。
スタンド席では、帯広駐屯地の自衛隊・第5音楽隊が準備をしていました。『ばんえい記念』のレース出走直前にファンファーレを生演奏するのが恒例となっています。
競走馬たちの晴れ舞台「ばんえい記念」
いよいよ第7レースの時間が迫ってきました。パドックには『ばんえい記念』に出走する10頭の馬たちが登場します。
すべてのばん馬から勝ち抜いてきた精鋭の競走馬たちの晴れ舞台。集まるファンに勇姿を披露します。
時間になると全馬がスタートゲートに向かいます。“誘導馬”と呼ばれる2頭の白馬も注目を集めていました。
推し馬のコンディションを確認したら、馬券を購入します。
今回の一番人気の馬は、2連覇の期待がかかっている昨年の覇者・メムロボブサップです。
いよいよレースのスタート5分前。観戦スタンドには続々と人々が集まってきました。
コースには、大一番に向けて丁寧に最後の作業をする走路整備員の姿がみえます。演奏隊が登場し、高らかにファンファーレが響くと、場内は一気に盛り上がります。
ついに全馬が一斉にスタートです。ばんえい競馬は、レースの途中で馬がストップします。
コースの途中の大きな坂を超える前に、わざと休ませてから勝負に挑むのが見どころです。
ファン以上に声援を送る厩務員の姿も。馬たちと並んでゴールに連れ添っていきます。
勝敗を決する2つめの坂を最初に超えたのはメジロゴーリキ。そのままゴールまで進み、優勝となりました。
ここからは『ばんえい記念』の“もうひとつの見所”です。場内の観戦客は10頭全ての馬がゴールをするまで熱い声援を送り続けます。
馬が疲れてしまったり立ち止まったりして時間がかかっても最後の馬まで見守ります。最後の馬がゴールをすると、温かい拍手が送られました。
2024年の『ばんえい記念』が終わりました。馬と人が一緒になってレースを体験するのが、世界で唯一の『ばんえい競馬』です。
表彰式が済んだ後の競馬場は静かになり、白い雪の世界が広がります。帰り道では、雪が積もり少し白馬になったイレネー号が見送ってくれました。
いかがでしたでしょうか? みなさんもぜひ『帯広競馬場』で、ばんえい競馬を見に行ってくださいね。
取材・文/ながたたけし
【画像】北海道Likers
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