美瑛らしい風景

知らなかったじゃ済まされない。美瑛の丘を歩いて知った「美しい景色の裏側」<編集部のおすすめ2022>

“北海道を愛する人”に向けて、北海道の食や文化、人の魅力を発信している『北海道Likers』。今年もご愛顧いただきありがとうございました!

2022年、『北海道Likers』では実に800本以上の記事を配信してきました。そのなかで、今年とくに人気だった記事を『編集部のおすすめ2022』としてランキング形式でお届けします。

第5位に続き、今回は第4位のご紹介です。

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知らなかったじゃ済まされない。美瑛の丘を歩いて知った「美しい景色の裏側」

美しい景色が有名な美瑛。鮮やかな花畑やなだらかな丘陵が広がる、北海道屈指の観光地です。しかし、どんなに美しくても畑は農家さんの私有地。絶対に勝手に入ってはいけませんが、こういったルールが守られていないことがあり、問題になっているそうです。

先日ワーケーションで富良野を訪れた際、美瑛まで足を伸ばして麦刈り体験のプログラムに参加しました。ただ体験するだけではなく、学んだことがたくさんあって、いろんな気づきのきっかけになったことを受け、「もっといろんなことが知りたい」と今回別のプログラムに参加。

プログラムを行う意義や農業と観光の共生についてお話を聞きました。体験プログラムの様子とともにご紹介します。

先日富良野で体験したワーケーションの様子と麦刈り体験についてはこちらの記事でご紹介しています。ぜひこちらもチェックしてください!

【体験レポ】北海道らしい絶景も!富良野でワーケーションしてみた

「丘のまちびえいDMO」が開催する体験プログラム

今回参加したのは「丘のまちびえいDMO」が開催している『美瑛・パッチワークの丘 “畑 DE フットパス”』。農家さんに特別な許可をいただき、普段は足を踏み入れることができない丘の上を歩きます。

「丘のまちびえいDMO」は2016年からスタートした法人で、2018年に観光庁の日本版DMO法人に正式登録されました。“DMO”とは、D=Destination(旅行の行き先・目的地)、M=Management(管理・運営)/Marketing(市場調査・分析)、O=Organization(組織)の略。地域のマネジメントに重点を置き、地域課題の解決に向けていろいろな活動をしています。その1つがアクティビティ・体験プログラムの開催なのです。

早速、車で移動し、用意された長靴に履き替えて、消毒を行ってから畑へと入っていきます。

春まき小麦の刈り取りが終盤を迎えていましたが、運よく残ってくれていました。上にひげのようなものがあるのは、強力粉としてパンなどに使われる品種で、美瑛で栽培されている小麦の多くを占めています。

左がすでに刈り取りが終わっている秋まき小麦の畑、右がとうきびの畑。間近に作物を見ることができ、動物の足跡も発見! このあたりの丘の成り立ちや土の成分・特徴なども歩きながら教えてくださいました。

丘は遠くから見るとなだらかなのですが、意外と急なんです。アップダウンを繰り返す丘をどんどん歩きます。実際に歩くことで、その過酷さや壮大さを身を持って感じることができます。

丘の上からはこのようなすばらしい景色が望めます。いろんな作物が植えられた畑がまさにパッチワークのようになっているのがよくわかりますね! 美瑛では“輪作”が行われていて、毎年畑に同じ作物を生産しないため、毎年同じ景色にはならないんです。何度来ても違う景色が楽しめるのも魅力のひとつ。リピーターの観光客が多いのもうなずけます。

そして下から大きなコンバインがやってきて、先ほど歩いてきたばかりの春まき小麦の畑へ! 「刈り取り直前」と聞いてはいたものの、ここまで直前だったとは思わず、参加者だけでなく、ガイドさんも驚いていました。

刈り取り作業をしている畑のそばを通り、運良くその様子を間近に見ることができました。コンバインの中で麦わらと粒の部分を分け、麦わらのみ後ろから排出されていきます。この距離で見られるのは本当に貴重!

美瑛の農業・美しい風景を守るためのルール

「丘のまちびえいDMO」が主催するこれらのプログラムには、畑の風景を楽しむ際に守ってほしいルールを伝える役割も果たしています。観光客の方に楽しんでもらいながらそのルールを理解し、実践してもらうおうと行われているものです。

畑に入る前、用意された長靴に履き替えて、消毒効果のある石灰の粉を靴底にしっかりつけて畑へと入っていくのは、畑に有害な菌や害虫を持ち込まないためです。

菌や害虫を持っている靴で畑に入ると、作物や土壌に大きな影響が出てしまうんです。

いろいろな菌があるのですが、今回説明していただいたのは『ジャガイモシストセンチュウ』という生き物。一度寄生すると、畑が元の状態に戻るまで30年かかるといわれています。畑で作物が育てられなくなると、畑はそのまま放置されることとなるだけでなく、美瑛ならではの畑の風景が成り立たなくなってしまいます。

畑は農家さんの私有地のため、今回のように許可をいただいたプログラムでしか敷地に入ることができません。無断で畑の中に立ち入ることはいわゆる不法侵入ということになります。

畑は柵などがないために「入ってもいいだろう」と勝手に判断してしまうことがあるようですが、小麦畑やヒマワリ畑に入ったり、ロールの上に乗ったり、牧草を栽培する畑を公園や芝生の広場と勘違いして立ち入ったり……というようなことが実際にあるそう。その結果、作物の生育悪化や収穫量減少などの被害につながってしまいます。

そして、ゴミのポイ捨て。景観を壊すということもありますが、広大な敷地で栽培された作物は、ほとんどがコンバインなどで収穫して出荷されます。その際に土にゴミが入っているとそのままゴミも混ざってしまう可能性があり、大変危険です。

観光地・美瑛で起こっているマナー問題解決のために

「丘のまちびえいDMO」の泉さん。このようなプログラムを始めた理由を伺うと、これらのルールをどのようにしたらわかってもらえるのかを考えたとき、実際に畑に入ってもらい、体感しながら理解してもらおうと考えたそう。

「畑にはこのような注意看板を立てています。しかし、この看板があっても、残念ながら畑に入る人はいっぱいいるのが現状です。そこで、あえて畑に入って生産現場を間近に感じてもらい、その重要性や必要性を理解してもらいたいと体験プログラムを始めました」

「丘のまちびえいDMO」で開催している他の収穫体験なども、あえて生産農家さんの畑で行っています。「観光農園のようなプログラム用に準備された畑ではなく、実際に生産して作物を出荷している本物の畑を使わせてもらっています。いつも食べている野菜が生育している様子や収穫までの作業の大変さなどをその場で目にして学ぶことで、よりマナーについて理解していただけると思います」

体験プログラムの開催の他に、マナー啓発動画を作成し、YouTubeで公開しています。この動画にもある通り、「少しだけなら大丈夫かな」という気の緩みが、「じゃあ私も!」と大きく拡がってしまうことに。写真撮影はアスファルトから行い、トラクターなどの通行の妨げにならないよう路上駐車は行わないなど、改めて自分の行動を見直してみましょう。

こちらは体験プログラムの紹介チラシ。「Be my BIEI」というスローガンのもと、体験の価値とルール、美しい景色やプログラムの様子などを記載しています。また、『美瑛観光ルールマナー110番』でマナー違反の情報を提供してもらっての情報収集、パトロールなども行っているそう。

「農業と観光をうまくつなげ、どちらも守っていくことが私たちの役目です。観光客のみなさんには、農業があるから美しい景観が保たれていることを忘れず、これからもルールを守りながら景観を楽しんでいただきたいです」と泉さん。

 

産業として営まれてきた農業が、結果として美しい景観を生み出し、観光資源となっている美瑛。農家のみなさんのおかげでこの景色を見ることができています。この景色を末長く見続けられるよう、一人ひとりがルールを守り、実践していきましょう。

『北海道Likers』では、北海道観光する際に守ってほしいルールについてご紹介しています。ぜひこちらもご覧になってください。

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<法人情報>
■法人名:丘のまちびえいDMO
■住所:北海道上川郡美瑛町本町1丁目2-14
■電話番号:0166-74-5757
■ホームページ:https://mybiei.jp/
■Instagram:@bemybiei

【画像】丘のまちびえいDMO

※元記事:知らなかったじゃ済まされない。美瑛の丘を歩いて知った「美しい景色の裏側」
※内容は元記事掲載時(2022年8月)の情報です。

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