柿崎さん

築70年以上の歴史ある建物を工房に。ユニークなガラス作品を生み出す工芸家・柿崎均【江別市】

札幌市中心部から車で約30分のところにある「江別市ガラス工芸館」は、老舗レンガ工場「北海煉瓦合資会社」の代表であった故・石田惣喜知氏の邸宅を江別市が改修し、1994年4月に開館した施設です。2004年12月からはガラス工芸家・柿崎均さんがアトリエとして活用し、創作見学や作品展示が行われています。

“れんがのまち”と呼ばれる江別市で活動する柿崎さんにガラス工芸の魅力を伺いました。

開拓使本庁建設を機に始まった江別市のレンガ造り

江別のレンガ製造の歴史は、明治初期に遡ります。函館に置かれていた開拓使本庁が札幌に移されることになり、庁舎建設のためにレンガを製造する必要に迫られました。開拓使の調査で、石狩平野にレンガ造りに適した粘土があることがわかり、月寒や白石、野幌などに工場が設立され、本格的な生産が始まりました。

石田邸はそんな時代を偲ばせる建築物です。地上3階建て107坪(約354m2)。将棋の駒の形をしたマンサード屋根と半円状に張り出した窓が特徴です。石田氏自ら設計し、約10万個ものレンガを使って昭和20年ごろに完成しました。

鉱山学部からガラス工芸家に転身

「江別市ガラス工芸館」をアトリエに創作活動を行う柿崎さんは、秋田県横手市の出身です。工芸家になることを思いついたのは大学在学中のこと。当時の様子を次のように振り返ります。

「陶芸家になるといっても、大学は燃料化学科の石炭専攻で、まったくの畑違い。それにこれといったビジョンがあったわけではありません。工芸家名鑑を見たところ、陶芸家はたくさんいるのに、ガラス工芸家はほんの少しだけ。『これだ!』と思いました」

秋田を離れて東京のガラス工房に入社。ガラスは手で形成することができないため、思い通りの形にするのが難しく、その奥深さに魅了されていきます。

無意識のうちに北海道に呼び寄せられて移住を決断

工房に3年間勤務したのちに、当別町にあったスウェーデン交流センターで、現在も師匠と仰ぐスウェーデン人工芸家と出会います。知人の紹介で助手としてスウェーデンに渡ることになりましたが、渡航費や滞在費として約50万円が必要でした。「費用をどう工面したらいいものやら」と悩んでいた柿崎さんに、思わぬ朗報が!

「『札幌芸術の森クラフト全国公募展』で、“芸術の森クラフト大賞”を受賞して、賞金50万円を手に入れました」

晴れてスウェーデンに出発。ヨーロッパやアメリカに滞在しながら、ガラス工芸を学びました。

帰国後、アトリエを開く場所を探していたところ、またもや知人から「江別のガラス工芸館で工芸家を探している」という情報が寄せられました。「こんなに素晴らしい場所をアトリエにできるのか!」と大喜び。これがきっかけとなり、江別に永住する決意を固めました。

芸術作品から実用品まで展示されるギャラリー

ギャラリーの中は、まるで柿崎さんの頭脳に迷い込んだかのよう。展示販売されている作品は、柿崎さん自身そのものであるといえます。「どれかひとつをすすめるのは難しい」といいながら、選んでくれました。

1:料理好きにすすめたい「一振り調味料入れ」

一度振り下ろすと適量の調味料が出てくる調味料入れ。塩や砂糖、コショウなどを入れておくと便利です。

2:座り心地はいかが?「ガラスの椅子」

試験管型のガラスを何本も立てたガラスの椅子。「ガラスに座る」という発想がユニークです。

3:まるで氷のよう「砕けグラス」

斬新さが目を引く氷のようなグラスは、少しずつ砕きながら作っているそうです。

4:大泉洋さん主演映画にも登場した「ワイングラス」

大泉洋さん主演の映画『ぶどうのなみだ』(2014年公開)の小道具に使われたワイングラスは、「透明なグラスが欲しい」という製作会社の依頼を受けて作られました。

 

迷言

名言と迷言が混じる書の数々 出典: 北海道Likers

「江別市ガラス工芸館」は、夏は暑く、冬は寒い。快適とはほど遠い建物だそうです。しかし柿崎さんは、「ネガティブな要素を吹き飛ばすほど最高な場所」だと笑い飛ばします。素晴らしい作品に出会いに、ぜひ足を運んでください。

<施設情報>
■施設名:江別市ガラス工芸館
■住所:北海道江別市野幌代々木町53番地
■電話番号:011-384-7620
■開館期間:5~10月の土曜、日曜、国民の祝日 10~17時
※上記開館日以外に見学をご希望の方はご相談ください